ストックセールス

顧客が雪だるま式に増えていく 「4つのメッセージモデル」
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おすすめポイント

売り上げは、「既存顧客の維持」と「新規顧客の獲得」で成り立っている。どちらも欠かせない要素であり、両輪を回して初めて売り上げを最大化できる。日本のような成熟した市場においては、新規顧客の獲得以上に「既存顧客との関係維持」は何よりも大切だ。

だが、実際にそれを意識的に体現できている会社はそう多くないのかもしれない。例えば、広告やダイレクトメール、オウンドメディアなど、見込み客にアプローチする手立てを複数持つ企業は増えている。一方、すでに取引のある顧客に対してどのようにアプローチをすべきか、そのプロセスを体系的に確立している企業は決して多くない。担当営業の力量に任せているというケースも多いのではないだろうか。

釣った魚に餌をやらなければ息絶えてしまうように、何もしなければ将来的に既存顧客の売り上げは先細りしてしまう。そこで登場するのが「ストックセールス」である。本書では、新規顧客の獲得に始まり、そこからどのように顧客を維持し、発展させていけばいいのかについて、科学的な裏付けのもと、詳細に書かれている。

特筆すべきは、契約更新、アップセル、値上げ、謝罪などよくある営業シーン別のアプローチが実践的に記されている点だ。具体的な営業トークにまで落とし込まれているため、明日の商談、プレゼンから取り入れることができる。

前途洋々のスタートアップ企業から、古くからある大企業まで、本書はすべてのマーケター、セールスパーソンにとって有用な一冊である。

ライター画像
小林悠樹

著者

エリック・ピーターソン(Erik Peterson)
コーポレート・ビジョンズ株式会社、CEO
人間どうしのコミュニケーションを向上させることをライフワークに、コミュニケーション戦略が売り上げや販売プロセスに与える影響を科学的に研究している。数年前から「教授」と呼ばれるようになった。きっかけは、従来のセールスやマーケティングの調査をはるかに超えて、行動研究や他の分野から得た洞察を、コンプレックスセールスの成果主義の世界にあてはめたことだった。
コーポレート・ビジョンズのCEOとして、100人以上のプロのコンサルタントにコンサルティング方法を指導している。今や彼の教え子たちは、50か国以上でコーポレート・ビジョンズの研究成果を実践している。さらに『Conversations That Win the Complex Sale(コンプレックスセールスで成功する会話術)』や『The Three Value Conversations(顧客との会話で抑えておくべき3つのトピック)』(共に未邦訳)の共著者でもある。卓越した仕事しかやる価値はないと考える彼は、人々や組織を到達できそうにない高みへと押し上げようと、精力的に働いている。

ティム・リーステラー(Tim Riesterer)
コーポレート・ビジョンズ株式会社、CSO
企業が見込み顧客や既存顧客とより実りの多い会話ができるよう、キャリアを通して尽力してきた。意思決定の科学に関する実際の調査に基づいて、これまでにこの分野の本を3冊共同で執筆している――『Customer Message Management(カスタマー・メッセージ・マネジメント)』、『Conversations That Win the Complex Sale(コンプレックスセールスで成功する会話術)』、『The Three Value Conversations(顧客との会話で抑えておくべき3つのトピック)』(すべて未邦訳)。研究者、作家、講演家として活躍するだけでなく、コンサルタントとして、顧客との会話で思い通りの結果を得るには何をどう話せばいいかも指導している。

本書の要点

  • 要点
    1
    現状維持バイアスは「現状にとどまろう」とする人の心理的な傾向のことである。見込み顧客に対しては現状維持バイアスを打ち砕き、既存顧客に対しては現状維持バイアスを強化するのが有効だ。
  • 要点
    2
    現状維持バイアスは「安定を優先する傾向」「変化に伴うコストへの懸念」「選択の難しさ」「後悔や非難への恐れ」、この4つの原因によって引き起こされる。
  • 要点
    3
    既存顧客に対して契約更新、値上げ、アップセル、謝罪などのアプローチをする場合は、現状維持バイアスの特性を利用するとよい。

要約

【必読ポイント!】 新規顧客と見込み顧客へのアプローチの違い

現状維持バイアスを利用する

営業やマーケティングにおいて、見込み顧客と既存顧客に対しては別のアプローチをしなくてはならない。同じような接し方をしていると、自社の強みを損ねることになる。

それに深くかかわってくるのが「現状維持バイアス」だ。これは行動経済学などですでに確立された概念であり、「現状にとどまろう」とする人の心理的な癖を説明する。

たとえば、見込み顧客が何かの営業を受けた際、客側は「なぜ現状を変える必要があるのか」といった疑問を抱く。一方、既存顧客は「どうしてあなたと取引を続けるべきなのか」「なぜ取引額を増やすのか」といった現状維持バイアスが働く。

新規客と既存客とでは当然、違うことを考えている。そのため、マーケターやセールスは、見込み客に対しては現状維持バイアスを打ち砕き、既存顧客に対しては現状維持バイアスを強化する必要があるのだ。

現状維持バイアスの4つの要因
Duncan_Andison/gettyimages

現状維持バイアスは「安定を優先する傾向」「変化に伴うコストへの懸念」「選択の難しさ」「後悔や非難への恐れ」の4つの原因によって引き起こされる。これを逆手に取ることで、顧客の属性に合わせた適切なメッセージを伝えられる。

たとえば、新規顧客に対しては、相手が気付いていない問題や課題、機会損失など見落とされているニーズを伝える。そうすることで、心地いいと感じていた現状に対して疑問が生じるはずだ。

顧客が切り替えコストを懸念する場合は、現状維持にもコストがかかることを伝えるとよい。人は利益を得るよりも損失を被るほうを嫌う傾向にあるため、現状のやり方では限界があることを伝えるのだ。

また、見込み客がすでに利用しているサービスやソリューションとは対照的な選択肢を、提示することも重要である。あまり違いがないのであれば、相手は「わざわざ切り替えるほどでもない」と感じるだろう。現状のやり方では満たすことのできない見落とされたニーズを、あなたが提案するソリューションで解決できると明示してあげるのだ。

既存顧客には現状維持バイアス強化

他方、既存顧客に対しては、現状維持バイアスの4つの要因を強化するとよい。

既存顧客へのアプローチでは、まずあなたのソリューションを購入・取り扱いし始めた経緯やそれに伴うプロセスを顧客自身に思い出させる(安定を優先する傾向を強化)。これにより相手は、不満のないままの状態を維持したいという思いを強めてくれるだろう。

そして、これまでにかかったコストは業務改善効果などにより回収できている、またはサンクコストになっていて予算に組み込まれているなどと伝えよう(変化に伴うコストを強調)。

さらに、市場にある他のソリューションは、自社のものに比べて変わりがないこと、これまで顧客に対して積極的に提案してきたことを話すのだ(選択の難しさの強化)。

そして最後にもう一度、ソリューションの導入に際してこれまでどれくらいの労力をかけたかを相手に思い出してもらおう(後悔や非難への恐れの強化)。

これらの一連のメッセージにより、顧客は「これまでの意思決定や選択に間違いはない」と、自身を肯定するはずだ。

最適なメッセージモデルとは

既存顧客に対する投資

既存顧客にとって、あなたはレギュラーだ。信頼、経験値、実績などもすでにあるため、他社よりも断然有利な立場にあるといえるだろう。

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要約公開日 2021.08.22
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