プロセスエコノミー

あなたの物語が価値になる
未読
プロセスエコノミー
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プロセスエコノミー
出版社
出版日
2021年07月28日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

この要約を読む前に、自分が「絶対にこれがいい!」と思って購入した商品、あるいは契約したサービスのことを思い出してほしい。どんなに小さなものでも構わない。思い浮かべたら、どうしてその商品、あるいはサービスを選んだか、考えてみていただきたい。

おそらく性能や機能といった、「いかに役に立つか」という観点がまずは思い浮かんだことだろう。しかし次に考えてほしいのは、「本当にそれだけが決め手だったか」ということだ。そこにある物語や世界観、価値観に共感して購入した商品やサービスが、きっとあるのではないか。

情報化によってあらゆるプロダクトが激しい競争に晒されるとき、アウトプットそのものでは差がつかなくなっていく。なんでもあってなんでも買える世界で、「その商品」でなくてはならない価値は、物語――プロセスにしかない。本書の「プロセスエコノミー」は、そういった新しい時代の価値観を象徴する概念だ。

現在の過酷な状況の中でビジネスを行うための実用的な書籍でありながら、同時にライフスタイルや価値観の変容そのものを描き出す一冊である。アウトプットからプロセスへ、結果から物語へ。ここで語られる変化は、これから起きるものではなく、すでに起きているものだ。ビジネスの最前線で何が起きているのか、本書を通じて掴んでいただければと思う。

ライター画像
池田明季哉

著者

尾原和啓 (おばら かずひろ)
1970年生まれ。京都大学大学院工学研究科応用システム専攻人工知能論講座修了。マッキンゼー・アンド・カンパニーにてキャリアをスタートし、NTTドコモのiモード事業立ち上げ支援、リクルート(2回)、ケイ・ラボラトリー(現:KLab、取締役)、コーポレイトディレクション、サイバード、電子金券開発、オプト、Google、楽天(執行役員)の事業企画、投資、新規事業に従事。
経済産業省対外通商政策委員、産業総合研究所人工知能センターアドバイザー等を歴任。
現職は14職目 シンガポール、バリ島をベースに人・事業を紡ぐカタリストでもある。ボランティアで「TEDカンファレンス」の日本オーディション、「Burning Japan」に参加するなど、西海岸文化事情にも詳しい。
著書『アフターデジタル』(共著、日経BP)は経済産業大臣・世耕氏より推挙。
『モチベーション革命』(幻冬舎NewsPicks book)は2018年Amazon Kindleで最もダウンロードされた本に、中国・韓国・台湾で翻訳。『ITビジネスの原理』(NHK出版)は2014年、2015年連続売り上げTOP10入りのロングセラー(2014年7位、2015年位)。韓国、中国に翻訳。
『ザ・プラットフォーム』(NHK出版新書)はKindleビジネス書1位、有名書店総合1位のベストセラー。

本書の要点

  • 要点
    1
    アウトプットだけが重要だったこれまでとは違い、「なぜ、どうやってそこに至ったか」というプロセスが重視されるようになりつつある。
  • 要点
    2
    プロセスに価値が置かれるようになると、プロセスの公開が重要になる。積極的に情報を公開していくことで、「その商品/サービスでなければ」という代替不能な価値が生まれてくる。
  • 要点
    3
    プロセスにおいて大切なのは、「What」でも「How」でもなく、どのような哲学とこだわりをもってそこに至ったのかという「Why」である。一貫した「Why」が、熱心なファンを生み出す。

要約

【必読ポイント!】 プロセスエコノミーとは

アウトプットエコノミーの限界
oatawa/gettyimages

「プロセスエコノミー」という言葉は、耳慣れないし、とっつきにくいものに聞こえるかもしれない。しかしこれは特別な概念ではない。多くの人が知らず知らずのうちに、この考え方を生活のどこかに取り入れているはずだ。

この言葉にはじめて言及したのは、クリエイターの制作現場をライブ配信する「00:00 Studio」(フォーゼロスタジオ)を立ち上げた、けんすう氏だ。けんすう氏のnoteでは、プロセスエコノミーはアウトプットエコノミーに対比されるものとされている。

アウトプットエコノミーとは、「プロセスで課金せずに、アウトプットで課金する」というモデルのことだ。これは普通の人が考える、一般的な商売の仕方である。音楽、映画、料理など、アウトプットのかたちはさまざまだが、いずれにせよ「出来上がったものを売る」という点では同じだ。お客さんから直接課金するケースもあれば、テレビのように広告モデルにするケースもあるが、アウトプットで稼いでいるという点に変わりはないのである。

こうしたアウトプットエコノミーにおいては、製品の品質や流通価格、マーケティングなどが重要になってくる。いいものを作り、安く提供し、適切に知ってもらい、適切に届ける。だが競争が進んだ結果、現在では品質にほとんど差がなくなってしまっている。

品質で差別化するのが難しければ、マーケティングや流通、ブランディングにお金をかけられるほうが強くなる。そのため勝ち組のプロダクトはより勝っていき、そうでないプロダクトはたとえ良いものでも陽の光を浴びなくなる、という格差が広がっている。

プロセスそのものが価値を持つように

こうした状況のなかで、相対的に重要になってきたのがプロセスだ。アウトプットエコノミーが一定の規模まで到達すれば、差別化するポイントはプロセスにしかない。たとえば洋服のプロに聞くと、「ユニクロの3990円のジーンズと、リーバイスの1万円を超えるジーンズ、品質に差はない」という言葉が出てくる。だからこそ洋服を作るプロセス、そしてそのプロセスにおける物語が注目されるようになっている。

プロセスに価値が置かれるようになっていった先にあるのが、「プロセスエコノミー」である。プロセスに価値が置かれるようになると、プロセスは差別化要因であることを超え、プロセスそのものが価値を持つようになる。その結果、単にプロセスを垂れ流ししているだけでも、課金されるような状況になりつつある。現にプロセスにまつわるコミュニケーションが強力なコンテンツとして機能することで、大きな収益を上げているサービスも多数出てきている。オンラインサロンやライブ配信サービスはその代表例だ。

プロセスエコノミーのメリット

プロセスエコノミーには、大きく分けて3つのメリットがある。

1つ目は「アウトプットを出す前からお金が入る可能性がある」という点だ。たとえば制作に1年かかる作品をクリエーターが出す場合、制作しているあいだの1年間は無報酬ということになりかねない。もしプロセスの部分に課金できるような仕組みがあれば、1年かかるような大きなチャレンジでも、生活を多少安定させることができる。それに応援してくれる人が多ければ、たくさんのお金を集めて、もっと大きなチャレンジに挑戦することもできるようになるだろう。

2つ目は「寂しさの

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要約公開日 2021.08.18
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