「日本人の多くはロジカルな思考を苦手としている」と言われて、うなずいてしまう方もいるだろう。しかしよく考えると、引っかかるところがないだろうか。
まず「多く」とはどのくらいで、どう調べたのかわからない。そもそも「ロジカル思考が苦手」とはどのような状態なのか、その判断の基準も不明だ。もしこうした疑問に答えられなければ、冒頭の主張の根拠は「私がそう思うから」でしかない。これがロジカルな主張でないことは明白である。
非ロジカル=残念な考え方は、この例のように「ツッコミどころの余地が多い」ものといえる。「本当にそう?」「証拠はある?」「あなたの感想では?」「ただの偶然では?」「例外では?」など、ツッコミが容易に頭に思い浮かぶようなら、それは「残念な考え方」である。
ロジカルな思考とは、「つながっている」「深く考えている」「広く考えている」の3つの要素を満たした考え方だ。
「つながっている」という条件を満たすには、演繹的もしくは帰納的に考えたとき、そこに不自然さや間違いがなければいい。演繹とは「AならばB、BならばC、よってAならばC」と話がつながること、帰納とは「ライオンA、B、Cは肉を食べる。よってすべてのライオンは肉を食べるだろう」のように、個別の事例から一般的・普遍的な法則を導くことを指す。すなわちツッコミどころがなく、自然につながっていれば、その考え方はロジカルといえる。
「深く考えている」が何を意味するかを理解したければ、その逆を想像するといい。すなわち浅く、ロジカルでない思考の例を思い浮かべるのだ。たとえば売上アップの策を出さなければいけないとき、「キャンペーンをやってはどうか」のような抽象的な案で終わるのであれば、それは浅い考えだ。抽象的な内容は、誰も批判しようがない。逆に具体的な策の場合、それに対する質問や疑問に答える必要が生じてくる。ロジカルであるためには、自信を持って具体的に言い切らなければならない。
また「広く考えている」も、その逆の「狭い思考」を考えたほうがわかりやすい。出荷した製品に不良品が相次いだとしよう。多くの場合、その原因となる製造工程を見直そうとするだろうが、選択肢はそれだけではない。「検品を強化する」とか、「他社に製造を委託する」という方法もありうる。「本当にそれだけ?」「他にもっとあるんじゃない?」というツッコミがありうる、いわゆる「抜け漏れ」がある思考は、ロジカルではない。
ここからは「つながっている」「深く考えている」「広く考えている」の反対、すなわち「残念な考え」を取り上げながら、ロジカルな思考についてさらに掘り下げていく。
原因と結果の関係を正しく理解することは、ロジカル思考の第一歩だ。
やってしまいがちなのが、原因と結果を取り違えるというミスである。「気温が高いとビールが売れる」のように、「A→B」(AならばB)が成り立つとき、AとBには「因果関係」があるという。ビジネスの世界でよくあるのは、この矢印を逆にとらえてしまうことだ。
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