本書の要点

  • 取締役とは、経営のプロとして会社の成長を先導し、与えられた権限以上の責任とリスクを取る立場にある。

  • 取締役には様々な顔がある。トップの参謀役であり、実行部隊を先導する統率者、部下に対する教育者、ビジネスや組織体制の改革者である。また、会社経営に対し重責を担い、訴訟リスクを背負うこともある。

  • トップとの信頼関係を構築し、常にトップを立てた組織統制により経営を前進させることが重要である。

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取締役とは何か?

「取締役就任=ゴール」と考えてはいけない

取締役は勤め人として目指すべき頂点ではあるがゴールではない。取締役就任という責任や使命の重さを十分に知っておく必要がある。取締役と管理職との大きな違いの一つに「会社との契約形態」がある。取締役就任後は、会社とは委任契約を結ぶことになり雇用関係は消滅する。また、経営責任を問われる立場になるため、解任や損害賠償請求の訴訟問題に発展することもある。そういった立場を理解した上で、経営陣の一角として大きなやりがいを感じることができるのも取締役の醍醐味である。

取締役がしっかりしている会社は長期的に安定して成長している!

weerapatkiatdumrong/iStock/Thinkstock

利益を出している会社の多くは、明確なビジョン及び哲学を持った社長に対し優秀な取締役が実務面で支えていると言える。企業としてワンマン経営から組織的経営への移行に成功するかどうかは、取締役の腕次第と言っても過言ではない。

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組織論からみた取締役の役割

実行部隊を率いる「統率者」

取締役は経営陣の牽制役・監視役であるイメージが強いが、実際の会社運営においては、決定事項の統率者、つまり戦略や計画を実行に移していく役割が大きい。組織と戦略は相互作用を通じて形成されるものであり、取締役には、組織に見合った戦略を構築し優秀な実行部隊を統率して、計画を実現していく力が求められる。そのためには、リーダーシップと人望も欠かせない要素である。

自発性とボトムアップを促進する「コーチ」

取締役には、優秀な後継者を育てていく「教育者」という一面と、組織のメンバーそれぞれが自主性・自発性を持って仕事に取り組めるよう意識改革を行う「コーチ」という一面がある。トップダウン方式の会社は、一見効率が良く成果も出やすいが社員の主体性に欠ける。そのため、不測の事態に直面した場合や事業規模が一定以上になった場合、組織が硬直化し、トップの判断ミスで会社が迷走する事態も想定される。また、経営陣から現場の実態に即さない目標設定を押し付けられると社員のやる気が削がれてしまう恐れがある。成果を出しやすい組織とは、社員一人一人が仕事を「やらされている」のではなく「こんな仕事をしたい」と思えるモチベーションを持続させながら仕事に取り組んでいることにある。具体的な目標設定と達成、承認というプロセスを通じて意識改革を行っていくことが、取締役として経営を強固なものに変えていく大事な役目の一つだ。

ビジネススキームや組織体制の「改革者」

Violka08/iStock/Thinkstock

時流や市場の変化を感じ先手を打つのが経営者の仕事ならば、それに伴い社内変革を進めて行くことが取締役の重要な仕事である。変革は現状維持の打破であるため社内にはどうしても抵抗が伴う。そこで、早く変革を推し進めたい経営者を抑えつつ、社内の皆が変革を理解する土壌を作りその上で具体策を進めて行くコントロール力が問われる。

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要約公開日 2014.09.10
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