パーパス 「意義化」する経済とその先

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パーパス 「意義化」する経済とその先
出版社
NewsPicksパブリッシング

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出版日
2021年08月26日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

近年、環境問題やジェンダー、人種差別問題などに対して具体的な意見や態度を表明する企業が増えている。従来、企業の目的は利潤を増やし、株主の利益を高めることとされ、そのためにさまざまなものを犠牲にすることもあった。社会課題に対して取り組むことは、利益に直結しないために無視されるか、利益とは別に、奉仕活動のような形でなされることが多かった。

しかし現在、企業が社会課題に向き合うことは、企業の利益や長期的な存続に直結するものとしてとらえられている。本書によると、その流れを牽引しているのが、ミレニアル世代やZ世代と呼ばれる若者たちだ。本書では、これからの時代、企業の戦略の中心となるべき「パーパス」について、スタートアップ企業からGAFAやソニー、パタゴニアのような大企業まで数多くの事例を挙げながら紹介されている。

この流れを見ると、「日本の企業や社会は変化についていけるだろうか」と心配になるかもしれない。だが現在の日本の大企業も、かつて創業された頃には、創業者の理念や社会的な意義への想い、倫理的な観点をもっていたはずだ。本書で提案されている、経済と倫理が結びついた「意義化する経済」とは、新しい資本主義の形でもあると同時に、企業が社会に存在する意義を根本から問い直すものといえるだろう。

ライター画像
大賀祐樹

著者

岩嵜博論(いわさき ひろのり)
武蔵野美術大学クリエイティブイノベーション学科教授/ビジネスデザイナー。リベラルアーツと建築・都市デザインを学んだ後、博報堂においてマーケティング、ブランディング、イノベーション、事業開発、投資などに従事。2021年より現職。ストラテジックデザイン、ビジネスデザインを専門として研究・教育活動に従事しながら、ビジネスデザイナーとしての実務を行っている。著書に『機会発見―生活者起点で市場をつくる』(英治出版)など。博士(経営科学)。

佐々木康裕(ささき やすひろ)
Takramディレクター/ビジネスデザイナー。デザイン思考や認知心理学、システム思考を組み合わせた領域横断的なアプローチでエクスペリエンス起点のクリエイティブ戦略、事業コンセプト立案を展開。ベンチャーキャピタルMiraiseの投資家メンター、グロービス経営大学院の客員講師(デザイン経営)も務める。2019年3月、スローメディア「Lobsterr」をローンチ。著者に『D2C 「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略 』(NewsPicksパブリッシング)など。

本書の要点

  • 要点
    1
    「ただモノを買う人」から「社会をよくするために消費をする市民」への消費者の変化と、それに合わせた企業の変化を、本書では「意義化する経済」と呼ぶ。
  • 要点
    2
    企業だけでなく、サプライヤー、顧客、株主、地球環境も含めてステイクホルダーの利益を考え、多くの人が共感できる社会的存在意義を掲げたものが、パーパスである。
  • 要点
    3
    これからの時代、パーパスを中心としたビジネスモデルを構築した企業こそが若者たちを中心とした消費者に選ばれ、投資資金と優秀な人材を集めて、多くの利益を上げ、成長し続けるようになるだろう。

要約

新しい世代が連れてくる「意義化する経済」

ミレニアル世代やZ世代の消費スタイル

近年、ミレニアル世代(1980~1990年代後半に生まれた世代)やZ世代(1997~2012年に生まれた世代)による新たな消費スタイルが、世界中で主役になりつつある。ジェンダーや人種、気候変動などの社会課題に対する関心が非常に高く、SNSの普及によって多様な意見に触れた若者たちは、リーマンショック、パンデミックなどの出来事を経験し、時代の価値観を作っているのだ。

若者たちはジェンダーや人種に関する旧来の常識を疑い、社会課題の解決を政府やメディアではなく、ブランドや企業に期待している。社会課題に対する高い意識を持った消費者は、「ただモノを買う人」から「社会を良くするために消費をする市民」へ変化した。

かつて経済学者のミルトン・フリードマンは「ビジネスの社会的責任はただ一つ。利潤を増やすことである」と言い、企業は株主価値を最大化することを目指してきた。しかし消費者の期待が、社会をよりよい方向へと進化させることへと変わりつつある今、企業はビジネスの目的や活動のあり方を根本的に見直すことを迫られている。本書ではこのような変化を「意義化する経済」と呼ぶ。

「株主利益至上主義」から「社会善」へ
howtogoto/gettyimages

2019年、AppleやAmazon、ウォルマートなどの経営者による団体は「もはや利益をビジネスの最終目標にしない」という趣旨の声明を発表した。世界最大の資産運用会社も、投資戦略の中心にサステナビリティを置き、サステナビリティに配慮しない企業から投資資金を引き上げることを打ち出した。これらは、先のフリードマン的な考え方からのコペルニクス的転回といえる。

革新的であるだけでなく、倫理的問題に配慮し、社会課題に資するサービスこそが評価され、支持される時代がやってきつつあるのだ。

「破壊的イノベーション」から「優しいビジネス」へ

こうした流れに呼応して、進歩的かつ報酬も高いことで人気の就職先だったGAFAなどのテクノロジー企業が、優秀な学生の採用に苦戦している。実際、Facebookのソフトウェアエンジニアの内定受諾率は2016年から2019年に40%も減っているほどだ。

感度の高いインフルエンサーは、Instagramで「映える」写真を発信するよりも、社会課題や政治問題に対して「どういうスタンスをとるか」が自己ブランディングにより大きな影響を与えるようになったと自覚し始めている。企業やブランドも、見栄えだけを発信するのではなく、その企業の商品を買うことで「自分も社会課題の解決に貢献している」という感覚を得られるかどうか、点検する必要があるだろう。

「X世代」から「ミレニアル世代・Z世代」へ

世界的に見れば、ミレニアル世代、Z世代のマーケットは巨大化している。一方、高齢化が進む日本では、本当に若者に向けたビジネスに注力する必要があるのかと疑問を抱く向きもあるだろう。

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要約公開日 2021.11.05
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