責任あるAI

「AI倫理」戦略ハンドブック
未読
責任あるAI
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責任あるAI
出版社
東洋経済新報社

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出版日
2021年09月02日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

AIというと、音声入力アシスタントや翻訳ソフト、自動運転などが思い浮かぶ。日常生活にもすっかり溶け込み、誰しもAIと無縁ではいられなくなった。本書は、そんな身近な技術であるAIと、社会への影響について深く考えさせてくれる一冊だ。

要約者が特に興味を引かれたのは、「データそのものにすでにかかっているバイアス」を取り除こうとするプロセスだ。AIは与えられたデータから学習し、新しい結果を出力する。生のデータには、性別や人種などによって現状ある社会格差の構造が含まれてしまう。すると、AIから出力された結果は、社会格差の再生産につながりかねないものになってしまうのだという。AIの判断は完全でなく、倫理的でないこともある。生のデータに含まれるバイアスを取り除こうとするプロセスは大変興味深い。

AIが意思決定を補助してくれるというと、人間の判断は不要になるように聞こえるかもしれない。しかし、本書に書かれていることはその真逆だ。AIにデータを与え、学習させ、出力の妥当性を判断するのは人間だ。AIが倫理的であるためには、人間の側に高い倫理観が求められるということである。

本書によれば、AIを用いることは日本の成長にとって喫緊の課題である。「AIと関わる仕事」に就く人は増える一方だろう。現在直接AIに関わる仕事をしている人だけでなく、AI社会に生きる多くのビジネスパーソンにとって、知るべきことがつまっている一冊だ。

ライター画像
河合美緒

著者

保科学世(ほしな がくせ)
アクセンチュア
ビジネス コンサルティング本部
AIグループ日本統括 AIセンター長
慶應義塾大学大学院理工学研究科博士課程修了。博士(理学)。アクセンチュアにてAI・アナリティクス部門の日本統括、およびデジタル変革の知見や技術を結集した拠点「アクセンチュア・イノベーション・ハブ東京」の共同統括を務める。AI HUBプラットフォームや業務領域ごとに体系化したAIサービス群「AI POWEREDサービス」、需要予測・在庫補充最適化サービスなどの開発を手がけるとともに、アナリティクスやAI技術を活用した業務改革を数多く実現。『アクセンチュアのプロが教えるAI時代の実践データアナリティクス』(共編著、日本経済新聞出版)、『日経ムックAIフロンティア』(監修、日本経済新聞出版社)、『HUMAN+MACHINE 人間+マシン』(監修、東洋経済新報社)、『データサイエンス超入門――ビジネスで役立つ「統計学」の本当の活かし方』(共著、日経B社)、『アクセンチュアのプロフェッショナルが教えるデータ・アナリティクス実践講座』(監修、翔泳社)など著書・監修書多数。厚生労働省保健医療分野AI開発加速コンソーシアム構成員などを歴任。一般社団法人サーキュラーエコノミー推進機構理事。

鈴木博和(すずき ひろかず)
アクセンチュア
ビジネスコンサルティング本部
AIグループ +シニアマネージャー
東京工業大学大学院情報理工学研究科計算工学修士課程、東京理科大学大学院イノベーション研究科技術経営修士課程修了。事業会社にて十数年におよびAIの研究開発・マネジメントおよびエネルギー・デバイス・メディカルなど多領域での研究企画に従事。その後、IT系コンサルティング会社にて主に情報通信・流通・メディカル業界のクライアントに対し、自然言語処理を中心としたソリューションのPoC~導入・運用支援を多数経験。現在はアクセンチュアにて、AI POWEREDサービスの一つ、AI POWEREDバックオフィスの開発・提案・デリバリーのリードを行いながら、さまざまなAI技術を活用した業務改革の実現に日々奔走している。

本書の要点

  • 要点
    1
    企業活動ではさまざまな意思決定が行われるが、人間は思考のくせにより、バイアスのかかった判断をしてしまいやすい。そこで「AI支援による意思決定」が助けになる。
  • 要点
    2
    「人間の前提」によるAI開発がきちんと行われ、それを示すことで社会に対して「公平性」や「透明性」を担保していくのが「責任あるAI」と呼ばれる方法論である。
  • 要点
    3
    AIが社会に与える影響に関して問題意識が高まるにつれ、AIの倫理的な利活用を求める声も多くなっている。AIに携わる企業はこれに応える必要がある。

要約

【必読ポイント!】求められる「責任あるAI」

「責任あるAI」とは

AIが発達するとともに、「AIは信用できるのか」という議論も起こり始めた。かつては「人間への脅威」という漠然とした危機感にもとづいていたこの議論は、現在ではより具体的かつ建設的なものになっている。そのなかで重要な概念となっているのが、「責任あるAI(Responsible AI)」だ。

「責任あるAI」とは、顧客や社会に対して「公平性」や「透明性」を担保するための方法論だ。機械ではなく人間が意思の中心となる「人間中心」のデザインという考え方が根底にある。人間の意思決定には規範が必要とされる。「責任あるAI」の実現のために守るべき規範が、「AI倫理」と呼ばれるものだ。

意思決定における「AIの活用」
Dmitry Kovalchuk/gettyimages

日本の労働生産性が低いことはよく知られている。また、労働人口の減少も著しい。シニア人材の活用などの取り組みもされているが、国際競争力を考えると、付加価値の向上と労働時間削減の両方を目指し、労働生産性を上げるべきだ。

アクセンチュアの2016年の調査によると、2035年における各国推定GVA成長率(おおむねGDP成長率に相当する)において、日本は「AI活用が進まないと想定したベースラインのシナリオでは成長率が0.8パーセント程度」であるのに対して、「AIが最大限に活用されると想定する場合には2.7パーセント」の成長であると予測されている。AIの活用は日本企業にとって取り組むべき重要な課題なのだ。

特にAIが貢献できるのは、意思決定だ。企業活動ではM&Aや投資戦略などの大きな金額が動くものから、タスクの優先順位や採用基準などの現場レベルのものまで、さまざまな意思決定が行われている。意思決定の大半は人間が行っているが、人間には様々なバイアスがあり、偏った判断をしてしまいやすい。こうした人間の欠点を補うことができるのが、過去や現在のデータから意味のある知見を見出し、意思決定に利用する「データ駆動型の意思決定」だ。この先にあるのが、「AI支援による意思決定」である。これは、AIに過去のデータを学習させ、現在のデータを入力することで、現状把握と未来予想をさせて、それを参考に意思決定を行うというものである。

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要約公開日 2021.12.25
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