著者は3人の子供の子育てをしている。多くの家庭がそうであるように、朝は戦場だ。7時前に起床し、時計をにらみながら子供に朝食をとらせ、着替えさせる。必ず誰かがだだをこね、時間ぎりぎりで学校へ送りとどけることになる。
仕事を始められるのは9時15分。すぐには集中できず、コーヒーを飲みながらダラダラとネットを見る日々だ。
30歳から45歳のアメリカ人の平均起床時間は5時59分だが、著者と同じように8時や9時まで仕事を始めない人が多い。SNSをチェックしたりネットニュースを見たりして無自覚に時間を浪費し、電話やミーティングに急かされて仕事を始める。
こうしてダラダラ過ごす時間や、だだをこねる子供の相手をしている時間を合計すると、1日3時間から4時間になるだろう。多くの人は時間が足りないと口にするが、朝の無駄な時間や慌ただしい時間が原因のひとつだ。こうした時間は何かを生み出すものではないため、存在しない時間のように感じているのだろう。
だが、朝の時間の過ごし方は変えられる。実際、成功者は、世間の人が朝食を取る前の時間を使い、理想の人生に向かって着実にスコアを積み上げている。早朝からジムで汗を流す人、ゆっくりとその日のスケジュールを確認する人……朝の過ごし方は人それぞれだが、成功者はやるべきことの優先順位を決め、順位が高い仕事や夢の実現につながることを優先している。そのために使える時間は、朝しかないからだ。
著者はもともと夜型で、頭を使う仕事は夜に回す習慣があった。実は本書の原稿も、夜のカフェで書いた。
だがそれは仕方ないことだった。子育てと仕事を両立する以上、集中して原稿に向き合える時間は夜しかなかったからだ。
とはいえ、一日を早く始めることのメリットも理解していた。時間によって作業の向き不向きがある。それに気づいたのは、自分の時間の使い方を記録し、ひとつのパターンが見えたからだ。
午前中はパフォーマンスが高く90分以上も集中できるが、時間の経過に伴い、集中力は散漫になっていく。これは多くの人に当てはまるパターンで、時間が遅いほど集中力の持続時間は短くなる。さらに、朝はじゃまが入りにくいし、自分を律する必要のある業務は早い時間のほうが向く。
フロリダ大学で行われた実験によると、意志力は使いすぎると疲労することがわかった。通勤ラッシュや話のわからない上司、反抗的な子供……すべて自分を律する力が必要な相手だ。私たちの意志力はあっという間に在庫切れになってしまう。
だから、間違った判断は遅い時間に起こる。ダイエット中なのに食べすぎるのは夜が多いし、衝動的な犯罪の大半は夜に起こる。
しっかり睡眠をとった朝は、意志力が満タンだ。つまり、朝は意志力がたっぷり使えるので、大切なことは朝に取り組むほうがよい。
ただし調査によると、成功者は、一般的に意志力が必要とされることにも意志力を使っていないことがわかった。歯磨きのようにすっかり習慣化できているから、意志力を使う必要がないのだ。
朝の習慣に適しているのは、先延ばしにされやすく、時間を決めなくてもかまわないものだ。加えて、意志力がないとできないものにするとよい。要するに、面倒くさくてやりたくないけど、それでもきちんと続けていけば、長期的に大きなリターンを得られるような活動だ。
誰よりも成功している人は「キャリアの発展につながる行動」「豊かな人間関係につながる行動」「自分を育てる行動」を朝の習慣にしている。それぞれについて解説しよう。
まず「キャリアの発展につながる行動」。タイムログをつけると、突発的なミーティングなどで、仕事がしょっちゅう中断されていることに気づくだろう。
一方、朝の時間はじゃまされない。だからこそ、この時間は集中力が必要な仕事に使うべきだ。1日の仕事の優先順位を決め、朝は最優先の仕事に取り組む。そうすれば、後で何度もじゃまをされても、余裕を持って対応できるだろう。
次に「豊かな人間関係につながる行動」。税理士のキャサリンは、帰宅がいつも遅くなり、娘との時間が十分に取れないことに不満を感じていた。
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