本書の要点

  • 本書は「地図から消えた国々の記事集」だ。滅亡国家には、無視できない、恥ずべき過去が多すぎる。

  • 国家の崩壊は、見栄や金銭にまつわる、ささいな「他者との違い」をきっかけに起こることが少なくない。

1 / 3

【必読ポイント!】 傀儡と駆け引きの道具

クリミア共和国

PeterHermesFurian/gettyimages

国家として成立していた期間は2014年3月17~18日、約200万人が住み、ロシア語、ウクライナ語、クリミア・タタール語が話されていた。何世紀もの間、征服と再征服がクリミアを舞台に繰り返されてきた。最初の入植者はキムメリオス人であり、スキタイ人に侵略された際に集団自殺を選んだとされる。スキタイ人の後は、ギリシャ人、タリア人、ゴート人、さらに歴史が下ってルーシ人、ハザール人、アルメニア人、モンゴル人、ジェノヴァ人がこの地を支配してきたという。その後、「大ゲルマン帝国」を掲げるナチスに支配され、残忍な傀儡政権のもと、多くの犠牲者が出た。さらにはスターリンに引き継がれ、人口の大半を占めるクリミア・タタール人を強制収容所に移送しようと企てた。その後、半島はソ連からウクライナへ譲られた。ソ連が崩壊するとウクライナはクリミアとともに西側に近づく動きを見せる。クリミアにある不凍港セヴァストポリはロシアにとって利用価値があった。プーチンは大事な港が自分の監視下を離れる事態を看過できなかった。2014年3月16日、クリミアは住民投票でウクライナからの独立を宣言した。ロシアに編入される直前で、何らの説得力も持たない独立だった。諸外国は投票結果を疑問視した。

もっと見る
この続きを見るには...
残り2503/3056文字

4,000冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2022.03.27
Copyright © 2025 Flier Inc. All rights reserved.

一緒に読まれている要約

読書と社会科学
読書と社会科学
内田義彦
生き抜くためのドストエフスキー入門
生き抜くためのドストエフスキー入門
佐藤優
プーチンの世界
プーチンの世界
千葉敏生(訳)濱野大道(訳)フィオナ・ヒルクリフォード・G・ガディ畔蒜泰助(監修)
現代ロシアの軍事戦略
現代ロシアの軍事戦略
小泉悠
ブルシット・ジョブの謎
ブルシット・ジョブの謎
酒井隆史
教養としての「ローマ史」の読み方
教養としての「ローマ史」の読み方
本村凌二
「世界基準」で動け
「世界基準」で動け
山本康正
メタバースとは何か
メタバースとは何か
岡嶋裕史

同じカテゴリーの要約

経営者のための正しい多角化論
経営者のための正しい多角化論
松岡真宏
超新版ティッピング・ポイント
超新版ティッピング・ポイント
マルコム・グラッドウェル土方奈美(訳)
西洋近代の罪
西洋近代の罪
大澤真幸
となりの陰謀論
となりの陰謀論
烏谷昌幸
ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー
ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー
ブレイディみかこ
サピエンス全史(上)
サピエンス全史(上)
ユヴァル・ノア・ハラリ柴田裕之(訳)
グーグル社員はなぜ日曜日に山で過ごすのか
グーグル社員はなぜ日曜日に山で過ごすのか
河原千賀
LIFE SHIFT(ライフ・シフト)
LIFE SHIFT(ライフ・シフト)
リンダ・グラットンアンドリュー・スコット池村千秋(訳)
無料
世界の今がわかる「地理」の本
世界の今がわかる「地理」の本
井田仁康(編著)
デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか
デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか
針貝有佳