生き抜くためのドストエフスキー入門

「五大長編」集中講義
未読
日本語
生き抜くためのドストエフスキー入門
生き抜くためのドストエフスキー入門
「五大長編」集中講義
著者
未読
日本語
生き抜くためのドストエフスキー入門
著者
出版社
定価
605円(税込)
出版日
2021年11月01日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

ドストエフスキーの『罪と罰』を聞いたことがない人はいないだろう。しかし、有名だからと読んではみたものの、正直に言ってなんだかよくわからなかったという人が多いのではないだろうか。そもそもロシア文学は1人の人を指す名称がたくさん出てくるなど、知識を持たない日本人にはとっつきづらい。本書は初心者がつまずきやすいところに丁寧に解説を加え、ドストエフスキー作品へのハードルをぐっと下げてくれている。著者自身の経験や日本の作家、出来事とも関連付けながら解説が進められるのもわかりやすい。

ドストエフスキー作品で重要なポイントとなるのが、キリスト教である。ロシアでは、私たちが一般的にイメージするキリスト教とは少し異なるロシア正教が信仰されており、これは日本人がドストエフスキー作品を読むにあたって理解しにくい点のひとつだ。キリスト教神学を学んだ著者が、聖書などを引用しながらしっかりと解説してくれる本書は、貴重な存在だ。

ドストエフスキーは2021年に生誕200周年を迎えた。『罪と罰』は1866年に発表された作品で、日本は江戸時代が終わろうという頃である。資本主義が誕生し、急速に発展した混乱の時代を生きたドストエフスキーの作品には、混乱する社会を生き抜くためのヒントが隠れている。ロシアという国がどういうロジックで動いているのかを知り、国際情勢を考える上でも、本書は役に立つだろう。佐藤優という最良の水先案内人とともに、代表作『罪と罰』のほか、『白痴』『悪霊』『未成年』『カラマーゾフの兄弟』の5大長編の読解ポイントを見ていこう。

ライター画像
千葉佳奈美

著者

佐藤優(さとう まさる)
1960(昭和35)年生れ。1985年、同志社大学大学院神学研究科修了の後、外務省入省。在英日本国大使館、ロシア連邦日本国大使館などを経て、1995(平成7)年から外務本省国際情報局分析第一課に勤務。2002年5月、背任と偽計業務妨害容疑で逮捕。2005年2月執行猶予付き有罪判決を受け2013年執行猶予期間を満了。2005年『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて』で毎日出版文化賞特別賞を受賞した。主な著書に『自壊する帝国』(新潮ドキュメント賞、大宅壮一ノンフィクション賞)、『日米開戦の真実―大川周明著「米英東亜侵略史」を読み解く』『獄中記』『国家の謀略』『インテリジェンス人間論』『交渉術』『いま生きる「資本論」』『いま生きる階級論』『高畠素之の亡霊』『新世紀「コロナ後」を生き抜く』などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    危機の時代に読まれてきたドストエフスキー作品には、現代を生き抜くヒントが隠れている。
  • 要点
    2
    『罪と罰』や『カラマーゾフの兄弟』には、ドストエフスキーの根底にある、ロシアという大地への「土壌信仰」が表れている。
  • 要点
    3
    「人はパンのみにて生くるにあらず」は「神を信じていればパンが与えられる」という意味だが、ドストエフスキーはこれを「パンを手中にすれば人々を支配できる」と反転して解釈した。

要約

【必読ポイント!】 危機の時代の作家、ドストエフスキー

なぜ、今、ドストエフスキーなのか?

2021年はドストエフスキー生誕200年にあたる。ドストエフスキーが生まれたのは1821年、日本は江戸時代だ。200年も前に生まれた作家だが、その作品は今なお世界中の人々に読まれ続けているし、おそらく100年後にも読まれているだろう。時代を越えたその魅力はどこにあるのか。そして、現代日本に生きる私たちはどのようにドストエフスキーを読めばいいのか。

資本主義が誕生し急速に発展した時代に生まれたドストエフスキー作品では、格差や社会の歪み、そこであがきながらも闘う人間の姿が描かれている。そのためか、ドストエフスキーは危機の時代によく読まれてきた作家だ。新型コロナウイルスの流行によって世界的に格差が拡大し続けている今も、読まれるべきタイミングであろう。

新型コロナウイルス対策をめぐって「命か、経済か」という議論がある。命のほうが大事なのは当然だが、そもそも資本主義社会とは「労働力を商品化する」、つまり命とカネを交換するシステムで成り立っている。システムを変えなければ格差は止まらないが、具体的にどうすれば有効なのかは難問だ。こういう難しい時代に、「生き抜くためのヒント」がひそんでいるドストエフスキーを読むのには大きな意義があるだろう。

『罪と罰』、『白痴』に見るロシアの基盤

ドストエフスキーの土壌信仰
macky_ch/gettyimages

『罪と罰』は、〈非凡人〉の大義のためなら〈凡人〉の命を奪っても構わないと信じた大学生・ラスコーリニコフが高利貸しの老婆とその義妹を殺し、信心深い娼婦ソーニャとの対話をきっかけに罪の告白に至る物語だ。告白を受けたソーニャは『罪と罰』全編における決定的なセリフを口にする。「ひざまずいて、あなたがけがした大地に接吻しなさい」だ。

ここで明らかになるのは、ソーニャの信仰の対象がキリスト教ではなく、ロシアの大地であるということだ。

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