本書の要点

  • 本の読み方には「情報として読む」方法と「古典として読む」方法がある。

  • 本を読み著者を深く信じて没入することで、自分の中に意味のある「疑い」が生まれる。その解決に自分を賭けることが大切だ。

  • 先人がつくりあげ、磨かれてきた概念装置を取り込みながら、自らの概念装置を組み立てるように読むことが重要である。

  • 自然法のような社会科学の大枠となった基礎なくして、自分の学問など身につかない。

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【必読ポイント!】 本には2通りの読み方がある

「情報として」と「古典として」

本の読み方には、根本的に性格の違う2通りがある。「情報として読む」ことと「古典として読む」ことの2つである。

前者は、住宅やアルバイト、ステレオ機器、投資といった暮らしについてのものから、政治・経済に関するものまで、「案内」の形で必要な情報だけを得るために行う読書だ。

他方、「古典として読む」方法は、情報を見る眼の構造自体を変えてしまう。「有益」とは何かということも含めて何がそもそも有益な情報なのか、ひいては生き方さえも変える。たとえ新奇の情報は得られなくても、「古くから知っていたはずのことがにわかに新鮮な風景として身を囲み、せまってくる」読み方である。情報誌をそのように大切に読み深めることもできる。

情報として読む新聞の文体は「一読明快」

DirkRietschel/gettyimages

「読者に必要な新しい外部情報を迅速正確に届けること」を役割とする新聞は、読者の眼の構造を変えるようなことを狙うのではなく、「一読明快」を理想としている。もう一度読んだら意味が変わっていた、というのでは困ったことになるからだ。

また、「どう読もうと読み方によって左右されない」ことも大事である。書斎で読もうと電車で立ち読みしようと、大事な点は同じになる。積極的に文章と格闘しないと真意がつかめない、となってもいけない。この「速読で明快」な点は、交通標識や信号に似ている。著者が「情報として読む」という時、こうした読み方を示しているのだ。

そうではないのが古典であり、古典としての読み方なのである。

個性的な読み方

古典は新聞とは違って、再読した時に印象が変わる。一年後には、「あのときはこう読んだけれど浅はかだった、本当はこう書いてあったんだなあ」というように読めてくる。そうした内容を持っているからこそ、古典と呼べるのだ。

そして古典は、どう読むかで違ってくるものである。目を皿のようにして読み込むことで、古典たるゆえんが見えてくる。そうして踏み込んで読むほど、奥深くにはなお最も本質的なものが残る。「一読にかけた深い読みの繰り返し」に応えうるのが古典なのだ。

だから、ていねいに読めば読むほど各人に違った中身を提示してくる。「読まれた」中身は個性的になっていく。これは「古典としての読みに特徴的なこと」である。

情報を見るための「眼」

もちろん、「情報なくして自由なし」であり、情報ほど大事なものはない。古典を読む仕事にしても、真剣に取り組もうとする時に必要になるのは、少しでも関連のありそうな問題についての正確で詳細な情報だ。それでも著者が古典としての読みの意義を強調するのは、「本を情報として読む風潮があまりにも強く一般的になってきており、古典として読む風習と技術が失われつつある」と考えるからだ。

情報時代では、情報がたくさんあっても、自分の視点が定まってこない限り、氾濫する情報に押し流されるだけで、“自分の”情報にはならない。情報が多いこと自体が悪いのではなく、情報を的確に選びとり、読むべきものについて読む必要のある分だけ読み取る術が求められている。情報に流されるのではなく、情報を使いこなす状態に変わらなければならない。それによって、「自由な人間として判断し行動しうる社会」へと転換していける。

また、情報を受取る眼を養うための読書には、文学上の古典で特徴的に現れるものだけでなく、概念装置(ものを見るための装置)を頭の中に組立てるために読む仕事も含まれている。特に社会科学の分野では、この装置を獲得するための読書の比率が大きくなっている。科学を思想から切り離すなら、古典的著作より標準的教科書を読む方が効率的ということになる。しかし社会科学の領域では科学と思想は切り離せない。「古典として」の読みを習熟することは、「概念装置の獲得のためにも不可欠」なのだ。

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創造に向けた読み方

全面的没入から始まる

Wavebreakmedia/gettyimages

「学問は疑いから始まる」といわれるが、新しい物事を創り出す現場では、「疑い」の底に信じる心を持つことが大切である。古典も深く信じなければ、踏み込んで格闘することはできない。

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要約公開日 2022.03.26
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