読書と社会科学

未 読
読書と社会科学
ジャンル
著者
内田義彦
出版社
定価
880円(税込)
出版日
1985年01月21日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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読書と社会科学
著者
内田義彦
未 読
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出版社
定価
880円(税込)
出版日
1985年01月21日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
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おすすめポイント

本の読み方とはどうあるべきか、繰り返していねいに教えてくれる本である。

本には「情報として読む」方法と、「古典として」読む方法の2つがあるという。同じ本を読む知的作業でも、その本質は全く違うことを著者はわかりやすく解説する。言われてみれば合点がいく面もあるが、実際には、その違いになかなか気がつけないものである。単に情報を取るだけの読み方と、吟味して自分の腹に落とす読み方は違って当然だ。

著者のいう「古典として読む」方法とは、自分なりに正面から受け止めたうえで理解を深め、さらに自覚的に問題意識を持つことである。これはまさに、現代社会の情報にまつわる諸問題を解決に導く考え方につながるヒントといえる。情報過多の時代に、情報をどう見極めるかという姿勢に結びつくからである。

自然科学と社会科学を学ぶ時の頭の働かせ方の違いについての説明もわかりやすい。著者のいう「概念装置」を使って奥にある本質を見極めるためには、しっかりと目的をもって古典に没入して読むことが重要であると指摘する。

自分の眼で見て、自身の頭で真剣に考え抜くための本の読み方に向けた指南ともいえる。本書が刊行されたのは1985年。情報化社会が進展し、変化の急激な現代においては、40年近くの時を経ても、その内容は決して色あせていない。

ライター画像
毬谷実宏

著者

内田義彦(うちだ よしひこ)
1913-1989年
1939年東京大学経済学部卒業、経済学博士
専攻―経済学史、社会思想史
著書―『資本論の世界』『社会認識の歩み』(以上岩波新書)
『経済学の生誕』(未来社)
『経済学史講義』(未来社)
『内田義彦対談集』(筑摩書房)
『日本資本主義の思想像』(岩波書店)
『学問への散策』(岩波書店)
『作品としての社会科学』(岩波書店)
『内田義彦著作集』全十巻(岩波書店)

本書の要点

  • 要点
    1
    本の読み方には「情報として読む」方法と「古典として読む」方法がある。
  • 要点
    2
    本を読み著者を深く信じて没入することで、自分の中に意味のある「疑い」が生まれる。その解決に自分を賭けることが大切だ。
  • 要点
    3
    先人がつくりあげ、磨かれてきた概念装置を取り込みながら、自らの概念装置を組み立てるように読むことが重要である。
  • 要点
    4
    自然法のような社会科学の大枠となった基礎なくして、自分の学問など身につかない。

要約

【必読ポイント!】 本には2通りの読み方がある

「情報として」と「古典として」

本の読み方には、根本的に性格の違う2通りがある。「情報として読む」ことと「古典として読む」ことの2つである。

前者は、住宅やアルバイト、ステレオ機器、投資といった暮らしについてのものから、政治・経済に関するものまで、「案内」の形で必要な情報だけを得るために行う読書だ。

他方、「古典として読む」方法は、情報を見る眼の構造自体を変えてしまう。「有益」とは何かということも含めて何がそもそも有益な情報なのか、ひいては生き方さえも変える。たとえ新奇の情報は得られなくても、「古くから知っていたはずのことがにわかに新鮮な風景として身を囲み、せまってくる」読み方である。情報誌をそのように大切に読み深めることもできる。

情報として読む新聞の文体は「一読明快」
DirkRietschel/gettyimages

「読者に必要な新しい外部情報を迅速正確に届けること」を役割とする新聞は、読者の眼の構造を変えるようなことを狙うのではなく、「一読明快」を理想としている。もう一度読んだら意味が変わっていた、というのでは困ったことになるからだ。

また、「どう読もうと読み方によって左右されない」ことも大事である。書斎で読もうと電車で立ち読みしようと、大事な点は同じになる。積極的に文章と格闘しないと真意がつかめない、となってもいけない。この「速読で明快」な点は、交通標識や信号に似ている。著者が「情報として読む」という時、こうした読み方を示しているのだ。

そうではないのが古典であり、古典としての読み方なのである。

個性的な読み方

古典は新聞とは違って、再読した時に印象が変わる。一年後には、「あのときはこう読んだけれど浅はかだった、本当はこう書いてあったんだなあ」というように読めてくる。そうした内容を持っているからこそ、古典と呼べるのだ。

そして古典は、どう読むかで違ってくるものである。目を皿のようにして読み込むことで、古典たるゆえんが見えてくる。そうして踏み込んで読むほど、奥深くにはなお最も本質的なものが残る。「一読にかけた深い読みの繰り返し」に応えうるのが古典なのだ。

だから、ていねいに読めば読むほど各人に違った中身を提示してくる。「読まれた」中身は個性的になっていく。これは「古典としての読みに特徴的なこと」である。

情報を見るための「眼」

もちろん、「情報なくして自由なし」であり、情報ほど大事なものはない。古典を読む仕事にしても、真剣に取り組もうとする時に必要になるのは、少しでも関連のありそうな問題についての正確で詳細な情報だ。それでも著者が古典としての読みの意義を強調するのは、「本を情報として読む風潮があまりにも強く一般的になってきており、古典として読む風習と技術が失われつつある」と考えるからだ。

情報時代では、情報がたくさんあっても、自分の視点が定まってこない限り、氾濫する情報に押し流されるだけで、“自分の”情報にはならない。情報が多いこと自体が悪いのではなく、情報を的確に選びとり、読むべきものについて読む必要のある分だけ読み取る術が求められている。情報に流されるのではなく、情報を使いこなす状態に変わらなければならない。それによって、「自由な人間として判断し行動しうる社会」へと転換していける。

また、情報を受取る眼を養うための読書には、文学上の古典で特徴的に現れるものだけでなく、概念装置(ものを見るための装置)を頭の中に組立てるために読む仕事も含まれている。特に社会科学の分野では、この装置を獲得するための読書の比率が大きくなっている。科学を思想から切り離すなら、古典的著作より標準的教科書を読む方が効率的ということになる。しかし社会科学の領域では科学と思想は切り離せない。「古典として」の読みを習熟することは、「概念装置の獲得のためにも不可欠」なのだ。

創造に向けた読み方

全面的没入から始まる
Wavebreakmedia/gettyimages

「学問は疑いから始まる」といわれるが、新しい物事を創り出す現場では、「疑い」の底に信じる心を持つことが大切である。古典も深く信じなければ、踏み込んで格闘することはできない。

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