ケンブリッジ大学・人気哲学者の「不死」の講義
「永遠の命」への本能的欲求が、人類をどう進化させたのか?

未 読
ケンブリッジ大学・人気哲学者の「不死」の講義
ジャンル
著者
スティーヴン・ケイヴ 柴田裕之(訳)
出版社
定価
2,420円(税込)
出版日
2021年12月13日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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「永遠の命」への本能的欲求が、人類をどう進化させたのか?
著者
スティーヴン・ケイヴ 柴田裕之(訳)
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定価
2,420円(税込)
出版日
2021年12月13日
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総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
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おすすめポイント

人は必ず死ぬ。しかし誰もが「自分の死」は受け容れられない――著者はこれを「死のパラドックス」と呼び、人類はこのパラドックスを乗り越えるために、さまざまな努力をしてきたという。

ケンブリッジ大学の研究者で哲学者、人気のTEDスピーカーでもある著者が書いた本書は、逃れられない「死」という重くて深いテーマを、真摯でウィットに富んだ語り口で、じっくり読ませる本になっている。

導入部では、さっそく「死」に対抗する戦略として、4つのシナリオが紹介される。1つ目は「生き残り」シナリオだ。不老不死の薬を探す旅から、ナノテクノロジーまでさまざまなテーマを取り上げる。2つ目は「蘇り」シナリオで、フランケンシュタインからキリストの復活、人体冷凍保存まで話が及ぶ。3つ目は「霊魂」シナリオ。現代においてさえ、世界中で霊魂の存在を信じられている。霊魂の存在を科学は証明することができるのか。4つ目は「遺産(レガシー)」シナリオである。文化的遺産と生物学的遺産の2つに分けて、自分という存在をどう残すのかが語られる。古代から現代までのさまざまな苦闘の営みは、そのまま人類が歩んできた文明史ともいえるだろう。そして最後に著者は5つ目のシナリオを用意して、読者を待ち受ける。それは、どんな戦略なのか。

伝説や科学の話題も満載で、それぞれ非常に興味深い。臨場感とスリル溢れるサスペンス映画のように展開していく。ラストでは、誰もが納得し、前向きに生きる力をもらえるはずだ。ぜひお勧めしたい。

ライター画像
たばたま

著者

スティーヴン・ケイヴ(Stephen Cave)
哲学博士。ケンブリッジ大学「知の未来」研究所(Leverhulme Center for the Future of Intelligence)のエクゼクティブディレクター兼シニアリサーチフェロー。ロイヤル・ソサエティ・オブ・アーツのフェロー。ケンブリッジ大学で哲学の博士号を取得した後、英国外務省にて政策顧問および外交官を務めた。近年は、人工知能の未来などを含む哲学と科学の分野において、The Financial Times、 The New York Times、The Guardian、Wired、The Atlanticなどに寄稿するほか、BBC、CBC、NPR、PBSなどにも出演する。TEDスピーカーとしても知られている。本書Immortalityは、2012年の『ニューサイエンスト』のベストブックの一冊に選ばれた。

本書の要点

  • 要点
    1
    人間は永遠の生を求める。この探求には基本的に、「生き残り」「蘇り」「霊魂」「遺産(レガシー)」という4つの形態しかない。それらを「不死のシナリオ」と呼ぶ。
  • 要点
    2
    自分もいつの日か死ぬとわかっているが、自分が死ぬこと自体を考えることはできない。これは「死のパラドックス」という。
  • 要点
    3
    不死のシナリオは私たちを死の恐怖から守るだけでなく、文明を作ってきた。
  • 要点
    4
    「知恵のシナリオ」は、死の必然性を受け入れ、今この瞬間を精一杯生きることである。

要約

「不死」に向かって伸びる4つの道

永遠の生を求めて

他の生き物と違って、人間は永遠の生を求める。この不死への意志こそが、「人類の業績の基盤であり、宗教の源泉、哲学の着想の起源、都市の創造者、芸術の背後にある衝動」でもある。その成果こそが文明だ。

「どのようにして不死を達成するか」についての物語は多様に見えるが、その根底には4つの基本形態しかない。「生き残り」「蘇り」「霊魂」「遺産(レガシー)」だ。これらを4つの「不死のシナリオ」と呼ぼう。

これらの道を切り拓く努力が、文明や文化、すなわち「現在のような人間の存在の仕方を定めている制度や儀礼や信念」をどのようにもたらしたか。またどのシナリオが永遠の生につながっているか。これらを順に取り上げ、検討していく。

進歩の原動力と「死のパラドックス」
Tero Vesalainen/gettyimages

人類は生き残りをとても得意とするようになり、哺乳類の中でも例外的な長寿を享受している。この不死への意志は動物的な衝動のレベルをはるかに超え、人類を動物から隔てさせるものであり続けてきた。

人類を人類ならしめているのは、もちろん大きな脳である。脳による強力な知性のおかげで、自分もいつの日か死ぬということを客観的には理解できる。一方で、観察者、思考する主体としての自分が存在しない状態そのものを考えることはできない。自分は死ぬはずがないと信じている。これを著者は「死のパラドックス」と呼ぶ。

このパラドックスを解決するために創出されるのが不死のシナリオである。

「生き残り」と「蘇り」

死に抵抗する秦の始皇帝

万里の長城の建設と不老不死の霊薬の獲得は、紀元前の広大な中国を初めて統一した秦の始皇帝の中では一直線につながっている。秦の王は世界最強の人間になったからこそ「死のパラドックス」を過剰に意識し、「生き残りのシナリオ」、永遠の生命を信じていた。

万里の長城は北の国境沿いに1万キロメートル続く城壁だ。死につながるすべてから自分の版図を守るために建設されたこの血と汗の防壁は、何十万人という人の命を犠牲にして造られた。

不老不死の霊薬を手に入れることができると確信していた皇帝は、一人の賢者・徐福の導きで、不老不死の人々が暮らすという黄海の島へ遠征隊を派遣する。一群を率いた賢者は二度と中国に戻ってこなかった。ある伝承では、その賢者は日本にたどりついて文明をもたらし、その偉業の極みとして不老不死の霊薬を見つけたという。死を打ち破ることは、文明生活が約束するものとされたのだ。

多くの文化は、この文明の創設神話のパターンを繰り返している。文明は、死すべき者として創造された私たちを救い出す。しかし、死の恐怖を免れたいと願う大半の人は、永遠に生きることに耐えられない。

科学は死神に打ち勝てるか

科学により「進歩」した文明をもつ現代社会は、「生き残り」について特殊化した解決方法を提供する。死を寄せつけぬ高度な防衛手段を開発する「工学アプローチ」の追究だ。現在、世界保健機関が認めている疾患は1万2000を超え、その細かな分類によって細やかな治療が可能となる。実際に寿命は格段に長くなっており、「工学アプローチ」はうまくいっているようだ。

しかし科学にはティトノス問題というアンチテーゼもある。

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