日々の小さな選択の積み重ねは、人を一歩ずつ病気に近づけたり、遠ざけたりする。健康はかけがえのないものだ。一度がんや脳梗塞になってしまえば、どんなにお金があっても今の医学では元に戻せない。だが、日々の生活習慣を変えることで病気のリスクを下げることはできる。
テレビや新聞で流れる情報の中にはエビデンス(科学的根拠)がないものがある。エビデンスがあったとしても、研究手法が不確かな論文に基づく場合もある。自らの健康を行動で変えるのであれば、正しい医学知識に基づいた選択をしなければならない。
本書では、エビデンスの確かさにこだわり、高度な手法で行われ、査読のプロセスを経た論文だけを取り上げた。本書で紹介する内容を、日々の生活に取り入れてみてほしい。
本書では、「睡眠不足=睡眠時間が足りていない状態」と定義する。睡眠の質が悪い場合はここには含まない。
睡眠不足で生じる問題を、睡眠の質で補うことはできない。睡眠は質よりも時間がはるかに重要だ。約50万人の年齢40〜69歳の人を対象とした英国の研究によると、睡眠時間が6時間未満の人は、それ以上の人と比べて、心筋梗塞になるリスクが20%も高い。他の研究では、睡眠時間の短さは不整脈、免疫の低下だけでなく、死亡率の増加および肥満リスクの増加にもつながるとわかっている。
睡眠不足は仕事の生産性も低下させる。被験者を無作為に異なる睡眠パターンに分けて頭の働きを評価した研究によれば、睡眠時間が短いほどミスが多いということがわかった。4時間睡眠や6時間睡眠を続けたグループは、4〜5日すると眠気の強さはそれ以上強くならなかった。しかし、自覚している眠気の強さに関係なく睡眠時間が短いグループはミスが増えていたという。睡眠不足は気づかぬうちに私たちの生産性を落としているのだ。
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