コーヒーで読み解くSDGs

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ジャンル
出版社
出版日
2021年03月15日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

身近な飲み物であるコーヒー。仕事の合間のリフレッシュや、カフェで飲む一杯を楽しみにしている人も少なくないだろう。

しかし、そのコーヒーが「持続不可能」だとしたら、どうだろうか。今のように気軽に飲めなくなったり、味が著しく落ちたりしたら……。

実際、気候変動などの影響により「2050年までにコーヒーの生産地が移動したり、縮小したりする」と予測されている。栽培環境の変化や生産農家の貧困といった複数の問題が絡み、「美味しいコーヒー」は危機に瀕している。

本書は、「持続可能な開発目標(SDGs)」の17の目標すべてを、コーヒーという一つの飲み物・農作物を通して読み解いていくという、野心作だ。

コーヒーとは、非常に矛盾に満ちた存在でもある。生産国の多くは赤道付近の開発途上国である一方、消費の大半は欧米や日本などでなされる。生産者と消費者が交わることはなく、互いの事情を知らない。私たちが至福の一杯を楽しんでいる裏で、生産者は貧困や環境破壊や不平等など、様々な問題にあえいでいる。

コーヒー、経済、開発援助の3人の専門家が手掛けた本書は、コーヒー生産国の実情に加え、SDGsそのものについても丁寧に解説されている。SDGsとは地球全体の目標であると同時に、私たち一人ひとりの目標でもある。「一杯のコーヒー」というレンズから世界を覗き、SDGsを身近に感じていただきたい。きっと、今の自分にできることが見えてくるはずだ。

ライター画像
矢羽野晶子

著者

José.川島良彰(ホセ かわしま よしあき)
株式会社ミカフェート 代表取締役社長
日本サステイナブルコーヒー協会 理事長
タイ王国メイファールアン財団 コーヒーアドバイザー
国際協力機構(JICA)コーヒー分野にかかる課題別自然委員会委員長
静岡県の焙煎卸業の家に生まれる。静岡聖光学院高等学校卒業後、エルサドバドル共和国 国立コーヒー研究所に留学。大手コーヒー会社に就職。ジャマイカ、ハワイ、スマトラで農園開発に携わり、マダガスカルでは絶滅種マスカロコフィアの発見と種の保全、レユニオン島では絶滅種ブルボン ポワントゥの発見と島のコーヒー産業を復活させた。2007年に同社を退社後、日本サステイナブルコーヒー協会を設立し、2008年に株式会社ミカフェート設立。2017年、長年にわたるコーヒーを通じた日本とエルサルバドルとの友好親善の促進が認められ外務大臣表彰を受け、2019年には『ニューズウィーク』の「世界が尊敬する日本人100」に選ばれる。同年キューバで19世紀のティピカを発見した。主な著書は『コーヒーハンター 幻のブルボン・ポワントゥの復活』(平凡社)、『私はコーヒーで世界を変えることにした。』『コンビニコーヒーは、なぜ高級ホテルより美味しいのか』(ともにポプラ社)、『Coffee Hunting Note 100カップログ』(世界文化社)。『僕はコーヒーがのめない(ビッグコミックス)』(小学館)の監修も務めた。

池本幸生(いけもと ゆきお)
東京大学東洋文化研究所教授
日本サステイナブルコーヒー協会 理事
京都大学経済学部卒業後、アジア経済研究所入所。1987年から1989年にかけて海外派遣員としてタイのチュラロンコン大学社会科学研究所に赴任。1990年、京都大学東南アジア研究センター助教授。1993年から1994年にかけて東南アジア研究センター・バンコク連絡事務所駐在。1993年、京都大学博士(経済学)取得。1998年、東京大学東洋文化研究所助教授に就任し、2002年より現職。2010年から2016年にかけてASNET(日本·アジアに関する教育研究ネットワーク)副ネットワーク長も務める。主な著書は『連帯経済とソーシャル・ビジネス 貧困削減、富の再分配のためのケイパビリティ·アプローチ』(池本幸生 松井範惇 編/明石書店)。翻訳書は『正義のアイデア』(アマルティア・セン/明石書店)、『格差社会の衝撃:不健康な格差社会を健康にする法』(リチャード・ウィルキンソン/書籍工房早山)、『女性と人間開発 潜在能力アプローチ』(マーサ・ヌスバウム)・『不平等の再検討:潜在能力と自由』(アマルティア・セン/ともに岩波書店)。

山下加夏(やました かな)
ミカフェート・サステイナブル・マネージメント・アドバイザー
慶應義塾大学卒業、ケンブリッジ大学修士(サステイナビリティ・リーダーシップ)。外資系企業勤務後、2001年より国際NGOコンサベーション・インターナショナルに勤務。気候変動プログラム・ディレクターとして、国連気候変動枠組条約の森林保全に関わるアジェンダのインプットや日本政府の資金援助に基づく開発途上国の森林保全調査案件を率いたほか、現地プログラムとの連携によるプロジェクト実施に取り組む。日本と開発途上国のパートナーシップによる持続可能な社会の実現をライフワークとする。2015年より、株式会社ミカフェートのサステイナブル・マネージメント・アドバイザー。主に個々のコーヒー生産農家の現状を調査し、持続可能な成長に向けて必要な支援や体制を構築し、結びつけている。

本書の要点

  • 要点
    1
    コーヒーを持続可能なものにするには、遠く離れたコーヒー生産地で起こっていることを正しく知り、自分たちの選択や行動に活かすことが必要だ。
  • 要点
    2
    コーヒー生産者が1杯のコーヒーから得られる利益は「たった1%」である。この割合は、高品質の豆であるほど高くなる。生産者の貧困を解消するには、消費者は安さよりも味や品質に敏感になり、そのような商品やそれを提供してくれる店を選択すべきだ。
  • 要点
    3
    気候変動の影響で、2050年までにコーヒー生産地域の移動や縮小が予測されている。

要約

コーヒーで考える持続可能性

コーヒーが「持続可能」でないとしたら?

いつもの「美味しいコーヒー」が「持続可能」でないとしたら、私たちは何ができるだろうか。将来の世代も飲み続けられる「サステイナブルコーヒー」のためにも、SDGsについて理解を深めていただきたい。

そもそも「美味しいコーヒー」とはどのようなコーヒーだろう。品質は申し分なくとも、それが開発途上国の生産者の貧困の上に成り立っているとしたら、心から「美味しい」と言えるだろうか。もしくは、コーヒー生産によって甚大な環境破壊が起こっていたり、生産国の自然災害が誘発されていたりしたら、あなたはどう感じるか。「自分にできることはない」と思うかもしれない。しかし、SDGsのゴール12「つくる責任 つかう責任」に示されているように、消費者にも果たすべき責任がある。

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要約公開日 2022.04.24
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