ビジネスを動かす情報の錬金術

未読
ビジネスを動かす情報の錬金術
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ビジネスを動かす情報の錬金術
出版社
クロスメディア・パブリッシング
定価
1,518円(税込)
出版日
2014年08月12日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

昨今、仕事でデータを扱う人は少なくないだろう。Excel等で簡単にグラフやチャートが作成できるため、そうしたデータセットを駆使しているという人も多いだろう。しかし、自分がデータから十分な示唆を得られていない、もっと仕事の役に立つ分析をできないものだろうかと不満を感じている人も、実は多いのではないだろうか。本書はそうした人にお勧めの一冊である。

なぜデータから正しい示唆が得られないか。本書によれば、それは主観や仮説に縛られてデータを捉えてしまっているからに他ならない。そして、そうした先入観に縛られることなく数字そのものが語る現実を見なければならないのだという。恣意的にデータを取捨選択するのではなく、現在入手可能なすべてのデータを用いてそれがどのような姿を描き出すのかを明らかにしていく。それが「データサイエンティスト」と呼ばれる人々の手法である。データサイエンティストはそのような手法を徹底することにより、たとえその業界について何の知識がなくても、具体的な改善策を導き出すことができるのだ。

本書はストーリー仕立ての入門書であり、データサイエンティストの用いる手法が網羅的に明らかにされているわけではないが、彼らの基本的な思考方法やデータの用い方をうかがい知ることができる。特にマーケティング関連の仕事をされている人には、明日のビジネスの場面にも有用な示唆が得られるであろう。

ライター画像
猪野美里

著者

森川 富昭(もりかわ・とみあき)
慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科、環境情報学部、医学部准教授
マサチューセッツ工科大学とハーバード大学にてMOT(技術経営)の専門コースを受講。神戸大学経営学修士(MBA)。
徳島大学病院医療情報部准教授を経て、2009年同病院教授。2012年現職。慶應義塾大学を中心とした『データサイエンスビジネス創造・ラボ』を主宰し、データサイエンティストの育成をライフワークとしている。
専門分野は、医療情報学、医療経営学、組織と経営、MOT。内閣官房IT戦略本部医療情報化に関するタスクフォース構成員を務めた。

本書の要点

  • 要点
    1
    データサイエンティストは、主観的で非科学的な視点を排除するために、データへの「総当たり」を重視する。これは「記述統計」と呼ばれる手法で、膨大なデータがどんな特徴を持っているかを表やグラフで表したりすることにより、現象の実像を洗い出していく方法である。
  • 要点
    2
    データサイエンティストとは、「今まで無かった視点」を膨大なデータから作り出すイノベータの役割を果たす存在である。
  • 要点
    3
    社内変革を起こそうとするときには、スモールケースで成功することをまず目指す。また、ワースト1を事例として設定しようとせずに、ワースト2か3から変革を始めることが成功事例を作る鍵である。

要約

店舗発の経営改革

wattanachon/iStock/Thinkstock
投資家や社外取締役に経営を指図される前に、自ら動き出せ

本書の主人公、大島周司は国内に100店舗を抱える国産の靴メーカーの店舗マネジャーである。ここのところ不調であった売上高に不満を持った投資家が社外取締役を投入し、経営に大きくメスが入れられるという噂を耳にした大島は、どうにかして会社の経営改革を成し遂げたいと思うようになる。休日返上で自店舗や会社全体の売上データの分析を試みる大島だったが、意味ある数字を見出すことができず、「何を悩めばいいのか分からない」ことに悩んでいた。

その大島が休日のカフェで出会ったのが、一見無意味で膨大なデータを原料に意味のある情報を生成する、まるで錬金術のような分析をする大学生3人組であった。大島は彼らの行っていたような複雑な分析に会社の活路が見いだせるのではないかと感じ、彼らと会うために休日のカフェで彼らを待ち伏せるようになる。

とにかく総当たり!

膨大なデータに総当たりして分析するのがデータサイエンティストである

大島がカフェで出会った大学生3人組は「データサイエンティスト」と呼ばれる人物である。素人の分析が、主観的で漠然とした勘で作った仮説に都合の良いデータを取っていくというアプローチになりがちであるのに対し、彼らデータサイエンティストの分析は入手しうる全てのデータに当たり、主観的で非科学的な視点を排除していく。たとえば、「会社の売上が落ちている」のであれば、どんな客が来ているのか、その性別差は、年齢は、職業は、来店頻度は・・・と何の仮説も持たずにひたすら表やグラフに落としこんでいく。

これは「記述統計」と呼ばれる手法で非常に時間と労力のかかる作業であるが、この作業により、元々はばらばらだったはずのデータの関係性が見えてくるようになる。全てのデータに総当りしない素人の分析やそこから導き出される施策は、勝手な仮説と経験則とだけに成り立っているものであり、本当の答えと大きく異なるものになりがちだ。

【必読ポイント!】データのビジュアル化が鍵

Robert Churchill/iStock/Thinkstock
のっぺりした数字データを徹底的にビジュアル化し、分析のきっかけを探すべきである

分析の結果を見ると「なんだ、当たり前のことじゃないか」と思うようなものでも、実際の数字のデータから分析のきっかけを掴むことがまず難しい。そのきっかけを見つけるために、ひたすらグラフを作ってビジュアル化して分析をする。それが「単純集計」であり「記述統計」である。たとえ経営改革に役立つ様々なデータがあったとしても、ビジュアル化されていないとなかなか実感が湧かず、発見もない。実際、企業が経営資料として持っているデータでも、ビジュアル化されていないがゆえに理解されず、活用されていない場合も多い。

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