その問題、経済学で解決できます。

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その問題、経済学で解決できます。
ジャンル
著者
ウリ・ニーズィー ジョン・A・リスト 望月衛(訳)
出版社
東洋経済新報社
定価
1,944円
出版日
2014年09月11日
評点(5点満点)
総合
4.2
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
4.0
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レビュー

「子どもの成績を上げたいときの効果的なご褒美のタイミングと種類とは?」

「労働市場における男女格差をなくすには?」

筆者たちは、こうした問いに、行動経済学を駆使して正面から向かい合う。本書は、人が動くためのインセンティヴは、どのようにしたら効果的に働くのかということをあぶり出し、世の中に根強く残る問題への処方箋を導き出す画期的な一冊である。

彼らは、実験室で実験をするのでなく、現実の世界で実験をしてしまおうという「実地実験」の手法を取っている。実地実験の場は、アメリカの学校から、インド北東部カーシ山地の村まで、全世界に及ぶ。人間の行動の背景にあるものを正しく解明するには、現実の、日常の振る舞いを観察する必要があるからだ。ユーモアあふれる筆致に引き込まれ、読者はまるで目の前で実験が行われているかのような感覚に陥ることだろう。

筆者たちは、インセンティヴの仕組みを明らかにすることで、先に挙げた問いへの答えのほかにも、富裕層の学生と貧乏な学生の間にある教育格差を効率よく縮められる方法、慈善活動をもっと有効に機能させる方法などを見出すことに成功している。

政府、企業、NPOなど、どこに所属していても、課題解決のイノベーションが問われる現代において、こうした「人を動かすメカニズム」を学ぶことは、全ビジネスパーソンの必須科目だと言ってよいだろう。本書はそのための、絶好の水先案内人になってくれるはずだ。

松尾 美里

著者

ウリ・ニーズィー
イスラエルで生まれ育つ。テルアビブの通りでの経験を通じて応用ゲーム理論を身につける。カリフォルニア大学サンディエゴ校のレイディ・スクール・オブ・マネジメントで、エプスタイン/アトキンソン寄付講座経済学及び戦略担当教授を務める。

ジョン・A・リスト
ウィスコンシンの労働者階級の家庭で育つ。父はトラック運転手。趣味の収集品の市場で経済学を学ぶ。シカゴ大学でホーマー・J・リヴィングストン寄付講座経済学担当教授を務める。10年以上にわたってアメリカ経済研究所(NBER)の研究員、環境・資源経済学担当として大統領経済諮問委員会のシニア・エコノミストなどを歴任。

本書の要点

  • 要点
    1
    インセンティヴを導入する前に、インセンティヴがどう働くか、もともと人がもっているやる気をインセンティヴが削いでしまわないかを理解する必要がある。
  • 要点
    2
    母系が強い文化の下では、女性は男性以上に競争によるインセンティヴに反応し、競争を好む。男女格差を生み出す男女の「競争力の違い」は文化的に生み出されたものにすぎない。
  • 要点
    3
    現代においては、経済的差別が人種や性の差別に結びついていることがある。本当に差別を絶滅させるには、差別の背後にあるインセンティヴを知ることが不可欠だ。

要約

効果的なインセンティヴとは

人にやってほしいことをやらせるには?
Alexey Klementiev/iStock/Thinkstock

インセンティヴが「どう働くか」を理解しておかないと、望んだ効果が出ないばかりか裏目に出てしまうことがある。

イスラエルの保育園で筆者たちが行った罰金制度の実験は、それを端的に示している。保育園のお迎えに10分以上遅れたら

一律約3ドルの罰金を払うという仕組みを導入すると、罰金の狙いとは逆に、お迎えに遅れる親が大幅に増えたのだ。

たった3ドルが遅刻の価格だと決められたことで、先生たちの残業は、駐車場代やお菓子代と同列のものになってしまった。中途半端な額の罰金を科すのは良心に訴えるよりもずっと効果が薄いのだ。

募金集めにおいても、お金というインセンティヴが逆効果になるという現象が見られた。筆者たちは、慈善団体のための募金を集める生徒たちを3つのグループに分けて、こんな実験を行った。最初のグループには「募金集めの意義を説いて、ボーナスは与えない」、2つ目のグループには「集めたお金の1%が貰える」、3つ目のグループには「集めたお金の10%が貰える」という設定にした。その結果、募金を一番集めたのは最初のグループで、その次は3つ目のグループだった。

保育園の罰金制度と同様のしくみで、お金が、高い志を押しのけてしまったのだ。誰かにやる気を出させるには、その相手がもともともっている「いい結果を出そう」というやる気を、インセンティヴが押しのけてしまわないかどうかを考えなくてはいけない。

インセンティヴを効果的に使うには、わずかではなく、十分大きなインセンティヴを提供して「やれば報われる」と相手に感じさせなくてはいけない。お金は、全く支払わないか、たっぷり支払うか、そのどちらかでなければ、人は動かせない。

【必読ポイント!】 男女格差は生まれのせいか、育ちのせいか

競争への反応の違いが男女格差の源
MaleWitch/iStock/Thinkstock

残念なことだが、アメリカで高い社会的地位を占めているのは男性が多い。女性は経営層の20%しか占めておらず、男性と同じ仕事をしても男性より給料が安いのが現状だ。こうした労働市場における性別格差のどれだけが、文化的に作られたものなのだろうか。

筆者たちは、女性がガラスの天井を突き破れないのは、「女性の多くが、相対評価で給料が決まる競争の厳しい仕事を避けがちだから」だという仮説を立てた。競争によるインセンティヴを好むか好まないかで、男女間格差が説明できると考えたのだ。

実際、とある求人広告の実験では、「給料が同僚との相対評価で決まる」という競争を求められる仕事に応募する女性の割合は、男性より70%も低かった。

では、子ども時代から男女差はあるのだろうか。

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その問題、経済学で解決できます。
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政治・経済
著者
ウリ・ニーズィー ジョン・A・リスト 望月衛(訳)
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東洋経済新報社
定価
1,944円
出版日
2014年09月11日
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