本書の要点

  • 生命は生まれつき怒っている。生きている限り怒りはなくならない。

  • 人も環境も、すべては変化し続け生滅していく。この「変わり続けていく」ことが怒りを生む原因だ。

  • 仏教では、怒りは一つの基本的な怒り(ドーサ)と、ドーサが形を変えた九つの怒りに分類される。

  • 怒りはドーサの段階で気づき、早めに鎮めなければならない。少しでも心に暗さを感じたら、怒りが入り込んでいるということだ。

  • 怒りはなくそうと思ってはいけない。カッとなったら、心も体も「いったん停止」することだ。

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人はなぜ怒るのか

生命は生まれつき怒っている

人間は誰もが希望を持っている。しかし、明るくニコニコしていたいという希望があっても、なにかがあれば怒ってしまう。「決して怒らない」と心に決めても、怒ってしまうのはなぜだろう? その理由は、生命は生まれつき怒っているからだ。生きている限り、人間は怒っているものなのだ。

生命にはかならず怒りがある。怒りが発生する原因は「無常」である。無常の定義は「ものごとは瞬間、瞬間で変化し、生滅していく」ということだ。私も他人も世界もすべては無常であり、変わり続けている。この「変わり続けている」ことが、怒りを生む原因である。

では、なぜ無常が怒りの原因になるのだろうか? 人は良い知らせを聞いたときや、欲しかったものが手に入ったときに気分が良くなる。これは、なにかの条件によって気分が良くなっているということだ。しかし、良い気分をもたらした条件はすぐに変わってしまう。「今日は笑顔で過ごしたい」と思っても、実際に何が起こるかはわからない。私たちは常に環境に接して生きていかねばならず、それは自分では管理できない。環境が思い通りでない場合は、その環境に抵抗する気持ちが生じて拒絶反応が起こる。この拒絶反応が「怒り」なのである。

人生は絶え間ない「苦」の連続

LaylaBird/gettyimages

命とは「感覚があること」である。物質と生命を区別するのは「感じるか、否か」であり、「感覚の有無」である。たとえば、ケガをしたら体は自然に治ろうとする。この「自ら修復しようとする」機能は生命だけにあり、「感覚がある」からこその働きである。

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要約公開日 2022.06.22
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