日本神話の源流

未 読
日本神話の源流
ジャンル
著者
吉田敦彦
出版社
定価
1,056円(税込)
出版日
2007年05月10日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
3.0
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日本神話の源流
日本神話の源流
著者
吉田敦彦
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定価
1,056円(税込)
出版日
2007年05月10日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.5
革新性
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応用性
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おすすめポイント

こんな神話がある。不慮の事態により死んでしまった妻を生き返らせるため、夫は死者の国へと赴き、亡き妻に会う。しかし、夫が禁令を犯して冥界での妻の姿を見てしまったことにより、妻を生き返らせることに失敗してしまう。これは、日本神話のイザナギが黄泉の国を訪れる有名な場面、ではない。実はこの夫はオルペウス、妻はエウリュディケという名で、この話はギリシア神話のオルペウス伝説の中の一幕である。

地理的に遠く離れた日本とギリシアで、なぜこれほど正確な一致が見られるのか。本書は世界のさまざまな地域の神話と日本神話を比較することで、日本神話の起源を探る。世界の神話や伝承を見てみると、意外にも類似のモチーフやストーリーが多く見られる。例えば、日本神話では、イザナギとイザナミが夫婦となって日本列島を構成する島々を生み出したとされているが、同様の島生み神話はハワイなどポリネシアに広く分布しているという。

地域に伝わる神話がいつ、どのように成立したのか、考えたことがあるだろうか。なんとなく「神話」と聞くと、最初からそこに「ある」ものだと思ってしまうが、人間によって語り継がれてきたものである以上、どこかにその起源があるはずだ。本書は神話の対照研究という切り口からその謎に迫る。

日本神話の源流を探ることは、私たちの文化のルーツを探ることでもある。日本固有のものだと思い込んでいたものも、実ははるか遠い国からもたらされたものかもしれない。その根源を探る旅は、刺激的な読書体験となるだろう。

ライター画像
千葉佳奈美

著者

吉田敦彦(よしだ あつひこ)
1934年生まれ。東京大学大学院西洋古典学専攻修士課程修了。フランス国立科学研究所研究員、成蹊大学・学習院大学教授などを歴任し、現在学習院大学名誉教授。専門は、比較神話学、西洋古典学。
著書に、『ギリシア神話入門』『鬼と悪魔の神話学』『ギリシア文化の深層』(サントリー学芸賞)『オイディプスの謎』『日本の神話』など多数ある。

本書の要点

  • 要点
    1
    さまざまな地域の神話と日本神話を比較し、その類似や相違を検討することで、日本に伝わる神話の起源を知ることができる。
  • 要点
    2
    日本神話の起源は一元的ではない。さまざまな時代に、さまざまな地域から伝播したものから成立していると考えられる。
  • 要点
    3
    日本神話と類似する伝承はミクロネシアなど、南太平洋の島々に多く見られる。しかし、日本神話を貫く根源的なイデオロギーは、さらに遠く離れたギリシアなどの印欧系文化圏から伝播していると考えられる。

要約

世界の神話と日本の神話

なぜ世界の神話を比較するのか?

本書では、日本神話を世界の諸民族の神話と対照させながら、その源流を探る。対照研究によって日本神話の系統を考えることで、個々の話や、それらをまとめあげるために用いられている枠組み、また、表現されている思想などが、いつ、どのような経路で、どのような文化によって運ばれて日本へ伝播したのかを明らかにする。

フランスの言語学者・神話学者であるデュメジルの神話比較研究によって、日本神話の起源に関する新たな見解が示された。それは、日本神話が、ユーラシア西部の印欧語族の文化圏から決定的な影響を受けているということだ。日本神話と印欧語族の古神話との間には、偶然の所産とはいいがたい、細部まできわめてよく一致した構造が見られる。この印欧文化圏からの神話の伝播は、具体的には、ユーラシアのステップ地帯に生きたイラン系騎馬遊牧民の神話が、アルタイ系遊牧民によって媒介され、朝鮮半島を経由して日本にもたらされたと考えられる。この伝播の経路にあったであろう、スキュタイや古代朝鮮諸国などの神話の中には、これを裏付ける材料も発見されている。

さまざまな起源を持つ要素が混交した日本神話
T_Mizuguchi/gettyimages

しかし、日本神話の起源のすべてが印欧文化圏からの影響によって説明されるわけではない。日本の言語・民族・文化などの系統が一元的ではないように、日本神話もさまざまな起源を持つ要素の混交によって複合的に構成されていると考えられる。したがって、印欧神話との比較という新しい視点は、これまで行われてきた他地域との比較を無意味にするものではない。

これまでの研究から、印欧文化圏と並んで日本神話に影響を及ぼしたのは、中国の揚子江以南からインドシナ、アッサムにかけての東南アジアの地域であることが明らかにされている。これらの地域からは、水田による稲作と焼畑による雑穀栽培の2種の農業形態が伝播したと考えられている。こうした農耕文化に随伴した神話が古典神話の中に取り入れられていることは、当然予想される。

本書では、印欧語系諸民族の神話と日本神話の関係について、東南アジアやオセアニアとの比較との成果を照らし合わせながら、日本神話の系統について全体的な眺望を与える。

南方地域との比較

南洋神話との類似

日本神話が世界の諸民族の神話と比較されるようになって、まず注目されたのは、ポリネシアやミクロネシア、インドネシアなど、南太平洋の島々に伝わる神話との類似である。なかでも、海幸彦・山幸彦の神話を中心に構成される「日向神話」の部分と、イザナギ・イザナミを主人公とする神話には著しい類似が見られる。

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