教養としてのラーメン

ジャンル、お店の系譜、進化、ビジネス――50の麺論
未読
教養としてのラーメン
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教養としてのラーメン
出版社
出版日
2022年01月30日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

「こってり濃厚な豚骨ラーメンが食べたい」「魚介系のダシが利いた上品な味わいのラーメンが好きだ」などラーメンに対する好みやこだわりをお持ちの方は少なくないだろう。醤油、塩、味噌、豚骨などラーメンの種類は豊富にある。

ラーメンの発祥地は中国だが、日本のラーメンは独自の進化を遂げ、中国でも「日式拉面」として人気だ。中国に限らず、日本のラーメンは世界で広く受け入れられ、店舗数が増え続けている。

本書は「考察」「食べ方」「つくり方」「メニュー」「店」「ビジネス」「知識」「客」の視点で、日本が誇るラーメンの教養を紹介した一冊である。ラーメン店を専門にデザインやイラスト、マンガを制作している「ラーメンのプロ」の著者が、どのお店、どの地方においても役立つ、普遍的なラーメンの知識を解説している。ラーメンと向き合う際の、時代に左右されない基本的な心構えや手がかりが余すところなく綴られ、ラーメンをより一層楽しめるようになる。

ラーメン好きの方はもちろん、食べることが好きな方、あるいはラーメンブームをいぶかしく思っている方にも、ぜひおすすめしたい。ラーメンの麺をどこから持ち上げるか、スープをどのように飲むかなど、ラーメンの食べ方は必見である。ラーメンの新たな楽しみ方を知ることができるはずだ。奥深いラーメンの世界を、まずは食べずに味わっていただきたい。

ライター画像
木下隆志

著者

青木健(あおき けん)
1969年、埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。
ラーメン業界を専門に、デザイナー、イラストレーター、漫画家、エッセイストなどとして活躍中。
有名ラーメン店のロゴデザインを、これまでに50店舗以上手がける。今や国内外に数十店舗を展開する「ラーメン 凪」グループの創業を皮切りに、ミシュランガイドで世界初の一つ星を獲得したラーメン店「Japanese Soba Noodles 蔦」など、繁盛店となった店も数多く、業界内の信頼度は高い。創業100年を超える老舗製麺会社「大成食品」が運営する、ラーメン店の独立開業支援「鳥居式らーめん塾」にて、2009年よりデザイン担当講師をつとめる。2021年、テレビ番組「レベチな人、見つけた」(テレビ東京系)に出演し、司会のビートたけしから「もっとも気になったレベチさん」に選ばれ、絶賛される。講談社「TRYラーメン大賞」審査員(2017年、2018年)。西武鉄道発行の『西武ニュース・cocotto』で、エッセイ「青木健のラーメン各駅停車」を連載(2016~2018年)。西武鉄道「ラーメンラリー2017」を監修。「ラーメンWalkerTV2」(CSフジテレビ)にゲスト出演。『ラーメン店繁盛BOOK 第15集』(旭屋出版)に「ラーメン店のロゴデザイン」を寄稿。

本書の要点

  • 要点
    1
    ラーメンは体育会系、カレーは文化部系と言える。ラーメンはライバルと切磋琢磨して進歩していき、カレーは個性を大事にして、内装や接客、ユニフォームでも独自路線を突き進んでいく。
  • 要点
    2
    古くから地元に根付いている老舗ほど「醤油スープに入った小麦(炭水化物)を、肉(タンパク質)をおかずに食べる」といった食の原点のようなラーメンを提供している。
  • 要点
    3
    スープを飲むときに、レンゲを使って飲むのと、丼から直接飲むのとでは、味の感じ方が変わってくる。レンゲで飲むと、スープは舌の奥へ運ばれやすくなり、味わいが異なってくる。

要約

考察

ラーメンは体育会系、力レーは文化部系

「長距離遠征した」、「何時間行列した」、「年間何杯食べた」。

ラーメン好きはこういった自慢をする人が多いが、カレー好きにはこういった自慢をする人は少ない。ラーメンは「○○エリア人気ランキング」といったメディアでの紹介が多い一方、カレーは「芸能人○○が通う店」といった切り口が目立つ。

著者は以前、仲の良いカレーの好きなラーメン店の店主に「どうしてカレー屋さんの内装はシャレているのですか」と質問されたことがある。イスやカーテンまでセンスに満ちあふれ、飲食店として羨ましいということだった。そのとき、著者は「ラーメンは体育会系、カレーは文化部系」という考えがひらめいた。順位やタイムを競い切磋琢磨で優勝を目指す体育会系と、自分だけの時間や個性を大事にする文化部系。ラーメンはライバルと切磋琢磨して進歩していく。一方、カレーは個性を大事にして内装や接客、ユニフォームで個々の店が独自路線を突き進む。

著者がラーメン店主に抱く印象は、仲間意識が強くて負けず嫌い、人気でモテる同級生といったイメージである。

老舗の共通点
gyro/gettyimages

青森の津軽、大阪の高井田、福岡の博多長浜の各地にある老舗でラーメンを食べて著者は気付いた。それは、あっさりとしたスープ、独自の食感の麺、しょっぱめのチャーシューが3軒に共通していたのである。都会の味に慣れた人には物足りないと感じるかもしれないが、「醤油スープに入った小麦(炭水化物)を、肉(タンパク質)をおかずに食べる」といった食の原点のようなラーメンだ。

この3軒の創業を調べたところ、創業は終戦10年後の1955年ごろに集中していた。食べ物に困る、栄養不足に悩む時代に、「少しでも栄養があって美味しいものを」と考え、つくられたラーメンである。他地域でもこれは同様で、老舗のラーメンほど、このような特徴がみられる。これらのラーメンはグルメ的な趣味ではなく、地元における日常の食事そのものなのである。

冒頭の3軒のラーメンはどれもクドさがなく、すっきりと軽い。年齢や年代を問わず、頻繁に食べられる。

他方、濃厚タイプのラーメンが定着している地域もある。この場合、ラーメンとは異なる食文化が、先に根付いているのではないかとの仮説が立てられる。

ラーメン用語集・人物事典

ラーメンには業界のレアな用語集が山のようにある。

出来上がったラーメンが席に到着することを「着丼」と呼び、ラーメンを続けざまに食べることは「連食」、3、4軒ハシゴする際には「3連食」「4連食」などと言う。店内で2杯完食することを「ダブ完」(ダブル完食)と呼び、「汁完」はスープまで飲み干すことを指す。

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要約公開日 2022.06.18
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