今、就活をする学生の間では、ベンチャー企業が人気だ。そんな学生に対し、著者は、創業100年以上の老舗企業にも目を向けることをすすめている。
日本企業の平均年齢は37.5年だ。企業が長く存在すること自体が大変であり、歴史ある企業は、多くの試練に打ち勝ってきていることになる。
東京商工リサーチによると、2022年末時点で創業100年を超える日本企業は、4万769社。世界で創業100年を超える企業が最も多い国は日本だ。
さらに、世界最古の企業も日本にある。飛鳥時代に創業された株式会社金剛組という建設会社だ。1400年以上も寺や神社を作り続けている。
そんな企業年齢が高い日本の老舗企業からは、ビジネスパーソンが学ぶべきことが多数あるはずだ。
「実力主義」「失敗への寛容さ」「財テクの禁止」「本業重視」など老舗企業には多くの共通点が見られる。それぞれの考え方や手法に異なる部分はあっても、どの企業も優れたビジネスモデルを持つといえそうだ。
創業111年の大型手芸専門店チェーンが小野株式会社だ。1911年(明治44年)に創業し、ずっと香川県に本社を構えている。
高松市片原町でのし・贈答用品の小野だるま堂を創業したのが、初代の小野耕作だ。妻・ツネの手先が器用だったことから、結納品を包むのしの水引を作るようになった。
しかし、1945年の空襲により、店舗は全焼してしまった。さらに初代は、2代目の耕平に相談することなく、その土地を売却してしまう。
その2年後、2代目は高松市瓦町に手芸用品問屋を開業した。当時は、洋服や身の回りのものを手作りすることが多く、需要が伸びると判断したのだ。さらに手芸用品は場所を取らず、腐らない。勢いのあった繊維関連業種でありながら、競合も少なかった。
3代目小野耕一・容子夫妻は、高松の繊維問屋街・塩屋町への本社移転に取り組んでいた。しかし土地を購入し、着工する段になって、銀行から融資中止の連絡が入る。
結果的に融資は復活し、予定通りに本社ビルは落成した。しかし、銀行側の都合で融資を受けられない恐れがあると知った3代目は、自己資金の重要性を痛感したのだ。その経験から、融資を繰り上げ返済し、財務体質の強化を徹底した。現在の小野は、無借金経営である。
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