贈与論

未 読
贈与論
ジャンル
著者
マルセル・モース 吉田禎吾(訳) 江川純一(訳)
出版社
定価
1,320円(税込)
出版日
2009年02月10日
評点
総合
4.0
明瞭性
3.5
革新性
5.0
応用性
3.5
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マルセル・モース 吉田禎吾(訳) 江川純一(訳)
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定価
1,320円(税込)
出版日
2009年02月10日
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総合
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明瞭性
3.5
革新性
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応用性
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おすすめポイント

誰かとプレゼントを贈り合うことは、多くの人が日常的に経験する。プレゼントをもらったり、美味しいものをごちそうしてもらったりすると、お返しをしたいという気持ちが生じる。自分が誰かに贈り物をしたのに、お返しどころか感謝の言葉もなければ、見返りを求めていたわけではなくてもがっかりしてしまうだろう。

本書は、フランスの社会学者マルセル・モースが、世界中の様々な民俗誌の記述を元に、贈与と返礼からなる交換の体系を分析し、資本主義社会で生きる先進国の人々でも、贈与と返礼において道徳的義務を感じる背景を考察したものである。

アメリカ先住民やポリネシア、先史時代のローマ、ゲルマン社会に見られる、部族同士の儀式的な交換の仕組みを分析した記述は、文化人類学における重要な古典の一つ、現代思想における「構造主義」の原点になった。20世紀前半から進展した、西洋先進国における資本主義に対する社会主義的な改革の推進力となっていた要素を、経済、法、道徳的観点から説明したものともなっている。

人は誰しも一人では生きられず、互いに助け合う。異なる価値を持った人同士であっても、敵対し、傷つけ合うよりは、戦わずに共生したほうが良いはずだ。古代や伝統的社会は未開で野蛮なものではなく、むしろ共生と連帯のために優れた道徳と知恵を持っていた、とモースは論じる。人々が孤立し、社会の分断が深まる現代において、本書から与えられる示唆は非常に重い。

ライター画像
大賀祐樹

著者

マルセル・モース(Marcel Mauss)
1872‐1950。フランス・ロレーヌ出身。社会学者、民族学者。ボルドー大学で叔父のデュルケムに哲学を学び、その後高等学術研究院、コレージュ・ド・フランスで教鞭を執る。関心領域は極めて広範で、社会、宗教はもとより経済、呪術、身体論にまで及んだ。「社会学年報」の編集にも携わり、実証的かつ科学的な研究を特徴とするフランス学派の礎を築いた。

本書の要点

  • 要点
    1
    世界中の文明において、贈り物とそれに対する返礼は義務となってきた。貨幣経済が普及していない形態の社会では、物だけでなく人、労働も含めた交換がなされ、部族同士の競争的な全体的給付体系(ポトラッチ)が存在している。
  • 要点
    2
    贈与の体系には、贈り物をする、贈り物を受け取る、返礼するという三つの義務が含まれている。物には霊的な力があり、元の所有者へ戻ろうとする力があるため、相応のお返しをしなければならないと考えられた。
  • 要点
    3
    現代の資本主義に対する社会主義的な修正は、過去の道徳、制度への回帰であり、社会全体で共生、連帯するためには、贈与の体系を取り戻す必要がある。

要約

贈り物に潜む力と返礼の義務

贈与と交換
101cats/gettyimages

世界の多くの文明において、贈り物は義務的な贈与と返礼として行われる。未開と呼ばれる社会でも同様に、それは自由意志に基づくように見えながら、実際には拘束的で打算的に行われる。

本書の目的は、未開社会において、「受け取った贈り物に対して、その返礼を義務づける法的経済的規則は何であるか」、贈り物に潜むどのような力が返礼を促すのかという点を明らかにすることだ。

交換、契約としての取引という現象は、人類のすべての社会に存在する。原始社会を研究することで、貨幣が流通する以前の取引における道徳と経済について明らかにできるだけでなく、それが現代社会の中で今なお隠れた形で機能していることを発見できるだろう。

古い時代では、財、富、生産物の取引は、個人間における単純な交換ではなく、クラン(氏族)、部族、家族といった集団間における契約として行われた。交換されるのは、「礼儀、饗宴、儀礼、軍事活動、婦人、子ども、舞踊、祭礼、市」であり、財産や不動産といった経済的に役立つものはそのうちの一つに過ぎなかった。交換は義務的に行われ、実施されない場合には戦いが生じることもあった。著者はこれを「全体的給付体系」と呼び、アメリカ北西部で見られるその典型を、先住民の言葉を用いて「ポトラッチ」と名付けた。

ポトラッチとは、「食物を与える」「消費する」ことを意味する。この地域の人々は、冬の間、絶え間なく祝祭を開き、饗宴、定期市、取引という、部族の集会場をもつ。その活動は、敵対する部族の首長との戦闘や、競争相手の首長を圧倒するために行われる蓄えた富の浪費など、競争と敵対の原理によって支配されている。

贈り物に込められた力

受け取った贈り物のお返しを義務付ける道徳的、宗教的なメカニズムは、ポリネシアにおいても明白に見られる。

たとえばマオリ族の「タオンガ」は、人、クラン、土地に強く結びつき、呪術的な力を媒介するもので、それを受け取った人を殺すように祈られている。返礼の義務が守られない場合に、これは恐るべき力を発揮すると考えられているのだ。

他者から品物(タオンガ)をもらい、それを別の人に譲ってその人から返礼品をもらったとする。自分は最初の贈答者に返礼していないので、タオンガは自分のところにあることとなり、このままでは自分が死んでしまう。贈り物には生命が宿っており、受領した人に対して影響を与えることが示唆されている。

タオンガはそれ自体で個体として存在し、ハウと呼ばれる精霊の力が生命を吹き込んでいる。ハウは生まれたところだけでなく、ただ引き渡されただけのすべての所有者のもとに帰りたがるので、同等かそれ以上に価値のあるものをお返ししない限り、つきまとい続ける。そうして贈与は最初の贈与者へ義務的にお返しされ、循環する。

マオリにおいては、物と霊は結びついており、贈与とは自分の魂の一部を与えることである。受け取った人がそれを持ち続けるのは危険なことなのだ。

全体的給付には、お返しをする義務だけでなく、贈り物を与える義務と贈り物を受け取る義務という、三つの義務が含まれている。クランの間で、贈与や招待、受領を拒むことは、戦いを宣言するのに等しい。

この制度においては、食物、女性、子ども、財産、宗教的役割など、あらゆるものが譲渡され、返還される対象となる。

世界中に見られる贈与

島々を循環する贈り物
wbritten/gettyimages

メラネシア地域のトロブリアンド諸島では、人類学者のマリノフスキーが記述しているように、「クラ」と呼ばれる部族内、部族間の巨大な交易としてのポトラッチが存在している。クラという語は、おそらく環を意味している。様々な品物や祝祭、奉仕活動、儀礼、性などが、島々の部族の間で、環にそって規則的な運動を行っているように見える。日常の経済的交換である「ギムワリ」では執拗な値切りが行われるが、クラでは慎ましく貴族的な態度で贈り物をし合う。

クラは、厳粛な儀式の形式で行われる。

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