自己信頼[新訳]

未読
自己信頼[新訳]
出版社
出版日
2009年02月05日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
要約全文を読むには会員登録ログインが必要です
ログイン
本の購入はこちら
書籍情報を見る
本の購入はこちら
おすすめポイント

自分を信じる。これほどに単純明快な一文なのに、あまりにも難しいものだと感じないだろうか。忘れ物もするし、うっかり電車を乗り過ごすこともある。つねに「完璧」であることなんて無理だし、周りには自分より才能があって、素敵な言葉を紡ぎ出す人もいる。インスタグラムを眺めれば、キラキラとした他人の人生ばかりが目に入って、落ち込んでしまう。

そんな世界に生きていて、そんな自分を生きていて、自分を信じるより何かを信じるほうが「もっともらしい」と思うのも、それこそ至極もっともらしい。

しかし、それこそ、180年ほど読み継がれてきたこの本が警鐘を鳴らす態度である。自身がもつ「よさ」からますます遠ざかり、幸せからも輝かしい未来からもさらに離れてしまう、負のスパイラルに陥る。「世間の基準」に合わせる、委ねることは楽だし、人とぶつかり合うこともない。マジョリティであることは心地よい。でも、それが「自分の本質」に逆らうものだとしたら? 気づいたときには引き返せない地点まで流されてしまっている。だからこそ、自分の内側を見つめ、それを信じる、自分に恥じない人生を生きることを、著者のエマソンは強く訴えているのだ。

『自己信頼』が書かれた時代は、アメリカ北部で反奴隷制運動が高まっていた頃であり、強まる教会勢力への反発も著者にはあった。社会は誤ることもある。流されているだけでは自分の倫理、道徳も崩壊してしまう。その危機は、不安定ないまの社会においていっそう、強まっているかもしれない。いまこそ、自分を信じるときだ。

著者

ラルフ・ウォルドー・エマソン(Ralph Waldo Emerson)
アメリカの思想家、詩人。ボストン生まれ。18歳でハーバード大学卒業後、21歳まで教鞭を執る。その後、牧師となるが、教会制度をめぐって教会と衝突し辞職。1834年からニューハンプシャー州のコンコードに住み執筆や講演活動を展開、「コンコードの哲人」と呼ばれた。常に自分の内面に目を向け、自由と真理に生きることを求め、黒人奴隷制度に対しては反対の立場を貫いた。プラトン、カント、東洋の哲学などを吸収した独自の思想は、『ウォールデン(森の生活)』を著したH・D・ソローやニーチェ、日本では宮沢賢治や北村透谷、福沢諭吉など古今東西の思想家や詩人、文学者に影響を与えた。彼の残した多くの名言は、今も世界の成功哲学および自己啓発書で度々引用されている。
「自己信頼」が収められた論文集『エッセイ 第一集(Essays, First Series)』は1841年に刊行。その他の著作に『自然(Nature)』『エッセイ 第二集(Essays, Second Series)』『代表的人間像(Representative Men)』『英国の国民性(English Traits)』『いかに生くべきか(Conduct of Life)』などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    自分を信じよう。偉人たちがそうしてきたように、同時代の人たちとふれあい、ものごとの縁を受け入れよう。
  • 要点
    2
    一個の人間でありたければ、社会に迎合せず、善の本質を見きわめよう。自分の精神の高潔さほど、神聖なものはない。
  • 要点
    3
    その人自身を語るのは、その人の意志よりも人格である。一瞬の息づかいにも自分の美徳や不徳は現れる。
  • 要点
    4
    自己信頼は新しい力の素になる。自己信頼を高めれば、あらゆる仕事、人間関係、教育、生活様式、交際、財産などに革命が起きるはずだ。

要約

自分を信じる

自分のなかにある光

天才とは、「自分の考えを信じること、自分にとっての真実は、すべての人にとっての真実だと信じること」である。

確信していることを声に出して語れば、それは普遍的な意味を持つようになる。モーゼもプラトンも、書物や伝統を脇において、世間の考えではなく自分の意見を語ったことが最大の功績だ。

目もくらむような賢人たちの輝きではなく、自分の内側でほのかに輝いている光を観察するべきである。自分の考えを、自分が考えたという理由で無視してはいけない。天才の仕事のうちにも、あなたが却下した考えがある。

自分の内側に自然と湧きあがってくる印象に従おう。そうすれば、自分が考えてきたのとまったく同じことを、他の言葉巧みな誰かから先に聞くようなことにはならない。

自分にしかわからない力
BrianAJackson/gettyimages

ねたみは無知からくる。良くても悪くても自分自身は受け入れなくてはならないし、自分に与えられた土地を耕さなければ、自身を育てる一粒のトウモロコシも自分のものにはならない。

私たちに宿っている力は、それを本人が実際に使ってみるまでどのようなものかわからない。

ある種の顔や性格、事実から強い印象を受ける一方で、まったく何も感じないものもある。それは、自分の中にその印象がおさまるべき場所があるかどうかに関わる。

自分を信じよう。偉人たちがそうしてきたように、同時代の人たちとふれあい、ものごとの縁を受け入れよう。

大人になって失うもの

子どもや赤ん坊、動物は、自分の感情を疑い、損得だけを考え、目的とかけはなれた力や手段を選ぶことはしない。かれらには完全な精神と、何者にもとらわれていない目が備わっているのだ。少年期、思春期、壮年期であっても、自分の足で立とうとするならその主張は無視されることはない。

少年の機嫌をとるべきは大人である。大人は自意識で自分を牢獄に閉じこめている。言動がひとたび讃えられれば、多くの共感や敵意を向けられ、何をするにも周りを気にするようになる。

いかなる誓いも立てず、偏見も汚れも恐れない無垢なる目で何事も見られる人は、いつの時代でも恐るべき存在である。自分なりの考えを、傾聴に値する意見として人びとに聞かせることができる。

その声も、世間の中にいると聞こえなくなってしまう。社会でもっとも求められる美徳は順応であり、自己信頼は嫌悪される。ものごとの本質や創造性より、名目や習慣が愛される。

一個の人間でありたければ、社会に迎合せず、善の本質を見きわめよう。自分の精神の高潔さほど、神聖なものはない。

自分を生きるということ

人生は生きるためにある

善良さには気骨が必要だ。世間の考えに従うのであれば、徳は例外に近いものとなる。善行は自分の勇気や慈悲心を見せるためのものであり、そうした行いをしない日常に対する贖罪と釈明なのだ。

しかし、「人生は生きるためにあるのであって、見せ物にするためではない」。つつましくとも誠実で平穏な人生のほうがよい。私がしなければいけないのは、他人の本分に属することよりも私自身に関わることだ。これは、重要なものと些末なものを分ける指標にもなる。

もっと見る
この続きを見るには...
残り2927/4209文字
会員登録(7日間無料)

3,400冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2022.07.24
Copyright © 2024 Flier Inc. All rights reserved.
一緒に読まれている要約
ベリングキャット
ベリングキャット
エリオット・ヒギンズ安原和見(訳)
未読
できないのはあなたのせいじゃない
できないのはあなたのせいじゃない
勝間和代
未読
OPEN
OPEN
山形浩生(訳)森本正史(訳)ヨハン・ノルベリ
未読
贈与論
贈与論
マルセル・モース江川純一(訳)吉田禎吾(訳)
未読
なぜ、いま思考力が必要なのか?
なぜ、いま思考力が必要なのか?
池上彰
未読
世界を変えた31人の人生の講義
世界を変えた31人の人生の講義
ディヴィッドM. ルーベンシュタイン高橋功一(訳)浜田敬子(日本版解説)
未読
ノイズに振り回されない情報活用力
ノイズに振り回されない情報活用力
鈴木進介
未読
LIFE SHIFT(ライフ・シフト)2
LIFE SHIFT(ライフ・シフト)2
リンダ・グラットン池村千秋(訳)アンドリュー・スコット
未読
法人導入をお考えのお客様