ウクライナ戦争は世界をどう変えたか
「独裁者の論理」と試される「日本の論理」

未 読
ウクライナ戦争は世界をどう変えたか
ジャンル
著者
豊島晋作
出版社
定価
1,650円(税込)
出版日
2022年08月02日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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ウクライナ戦争は世界をどう変えたか
「独裁者の論理」と試される「日本の論理」
著者
豊島晋作
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出版社
定価
1,650円(税込)
出版日
2022年08月02日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
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おすすめポイント

2022年2月、ロシアがウクライナに侵攻し、世界に衝撃が走った。特にヨーロッパはロシアに強い脅威を感じ、中立を守ってきたフィンランドとスウェーデンさえも世界最大の軍事同盟であるNATOへの加盟を申請した。

もし日本でも同じようなことが起きたらどうなるのか。何しろこの国はロシア、中国、北朝鮮という3つの「軍事国家」に囲まれているのだ。世界を見渡しても、これほど安全保障上の懸念が高い地域はない。

大ヒットした映画『シン・ゴジラ』でも描かれていたように、日本の危機管理は多くの問題点を抱えている。突然のゴジラ襲来に右往左往して場当たり的な対応を繰り返す政府。会議を重ねないと何も決められない行政機関。責任逃れに終始する政治家と役人たち。

しかし現実はゴジラより過酷かもしれない。もし中国が台湾を侵攻したら、日本の米軍基地から爆撃機が飛び立ち、中国本土を核攻撃するおそれもある。唯一の被爆国として世界に平和を発信してきた日本が核攻撃を支援することは、容認できるのか。そもそも戦争の当事者になること自体、高度で重要な政治的決断となる。どのような政治家にとっても初めてのことだ。

ロシアによるウクライナ侵攻によって、私たちは改めて周辺にある危機を突きつけられた。この脅威には備えることができる。必要なのは学び、情報を手に入れ、考えることだ。本書は、その第一歩になる。

ライター画像
ヨコヤマノボル

著者

豊島晋作(とよしま しんさく)
1981年福岡県生まれ。テレビ東京報道局所属の報道記者、ニュースキャスター。2005年3月東京大学大学院法学政治学研究科修了。4月テレビ東京入社。政治担当記者として首相官邸や与野党を取材した後、11年春から経済ニュース番組WBSのディレクター、同年10月からWBSのマーケットキャスター。16年から19年までロンドン支局長兼モスクワ支局長として欧州、アフリカ、中東などを取材。現在、Newsモーニングサテライトのキャスター。ウクライナ戦争などを多様な切り口で解説した「豊島晋作のテレ東ワールドポリティクス」の動画はYouTubeだけで総再生回数4000万を超え、大きな反響を呼んでいる。

本書の要点

  • 要点
    1
    ロシアのウクライナ侵攻は、世界に2つの衝撃をもたらした。ひとつは本当に軍事侵攻に踏み切ったということであり、もうひとつはロシア軍のあまりの弱さだった。
  • 要点
    2
    ロシアの行動の根底には、非常に大きな「恐怖心」と「トラウマ」がある。いわばロシアは「おびえる国家」「被害者意識に囚われた国家」である。
  • 要点
    3
    ウクライナ戦争は対岸の火事ではない。中国による台湾侵攻も「起きるかどうか」ではなく「いつ起きるか」の問題と見られている。

要約

ウクライナ戦争と核戦争シナリオ

「強者の戦術」をとれないロシア

ロシア軍によるウクライナ侵攻は、世界の軍事関係者に2つの衝撃を与えた。ひとつはロシアが本当に軍事侵攻に踏み切ったという事実そのもの、そしてもうひとつは、ロシア軍のあまりの弱さだった。ウクライナの首都キーウの陥落は叶わず、東部ドンバス地域でもウクライナ軍の激しい抵抗にあい、作戦の立て直しを迫られている。

その根本原因は、プーチン大統領も軍の指導部も短期間での決着を想定していたことに尽きるだろう。その前提が崩れれば、ドミノ倒しのように作戦計画も部隊運用も狂ってくる。つまりは戦略的ミスの部分が大きいのだ。

もっとも、最初はひどい戦い方をしながら、しだいに修正して盛り返すのはロシア軍の伝統だとする見方もある。

核使用という終末シナリオ
Leestat/gettyimages

ウクライナ軍に武器供与などで協力するNATOを威嚇するため、ウクライナ侵攻以来、プーチン大統領は何度も核兵器の使用をちらつかせてきた。

政治的にも国際法的にも正当化できず、国内経済や自国軍が犠牲となるのにもかかわらず、プーチン大統領はウクライナの全面侵攻に踏み切った。苦戦と膠着を強いられる現在、核の使用に関してのみ合理的な判断をする保証はない。その点で、NATOの行動抑止に成功している。「気がふれている」と思わせる「マッドマンセオリー」だ。またロシアは、相手の勢いを削ぐために戦術核兵器を使用する「エスカレーション抑止戦略」をとり、核使用のハードルを下げてもいる。

最強の軍事同盟であるNATOが、同じ規模の打撃を与える「比例報復」を核で行えば、全面核戦争への扉を大きく開くことになるだろう。

ウクライナ戦争はなぜ起きたのか

ロシアはなぜウクライナを侵略し、ロシア人はなぜそれを支持したのか。あるいは、ウクライナのNATO加盟をどうしてそこまで嫌がるのか。

ロシアの行動の根底には、あまりに大きな「恐怖心」と「トラウマ」がある。ロシアは「おびえる国家」「被害者意識に囚われた国家」なのだ。

近代以降、侵略的なのは常に西欧諸国であり、ロシアはその犠牲者であり続けたというのが、ロシア人の歴史観である。

19世紀初頭には、ナポレオンに率いられたフランス軍がロシア帝国に侵略する。また、第一次世界大戦後に労働者階級による革命を実現しようとしたレーニン派(赤軍)に対し、それに抵抗する反革命勢力(白軍)を西欧諸国が支援するとともに、イギリス、フランス、ドイツが旧ソ連の各地を支配した。このとき日本もウラジオストクに上陸している。

こうした経験がロシアのトラウマとなり、欧米への不信感を募らせていった。

ロシアとそれに対峙する国の論理

なぜロシアはウクライナを侵略したか

この不信感、トラウマを決定的にしたのが第二次世界大戦の独ソ戦だ。人類史上、最悪の激戦ともいわれるこの戦争では首都モスクワも陥落寸前となる。

結局、第二次世界大戦終結までに、ソ連国民の死者は2700万人にもおよんだ。国民の7人に1人が犠牲になった計算だ。

独ソ戦の悲惨な記憶が、今日のロシア人の原点になっている。この戦いは容赦のない「皆殺しの戦い」であった。敵はウクライナやベラルーシを経由してロシア本土に侵入し、生命・財産を破壊しつくされた。だからこそロシア人は、外部からの侵略に対して恐怖心やトラウマを抱き、国境を接する東欧諸国がNATOに加盟することに抵抗し続けた。一方で、ヨーロッパの救世主であるという自負を持つに至った。

ベルリンの壁崩壊後の1991年にはソ連がワルシャワ条約機構(WTO)の解体を宣言する。しかし、NATOの不拡大を約束した外交合意は存在しない。バルト三国や東欧諸国は次々と自主的な判断でロシアを離れてNATOに加盟し、ウクライナでは親ヨーロッパ政権が樹立した。この流れは西側に対して友好的な姿勢を見せつつあったロシアを大いに刺激し、再びアメリカの強大な「敵国」としてしまった。

ウクライナ軍の急成長とNATO
Iryna Imago/gettyimages

2014年、ウクライナにあるクリミア半島がロシアに併合される。その直後、東部のドネツク州とルハンシク州は「人民共和国」として一方的に独立を宣言、実質的にロシアのテリトリーとなった。

この経験を経て、ウクライナはロシア人を兄弟と考える意識を変えた。所得の1.5%を「軍事税」として徴収し、古い装備は置き換えられた。ロシアの侵攻にウクライナが善戦しているのは、こうした努力の結果だという。

その奮闘の裏側にはNATOの支援もある。武器だけでなく、早期警戒管制機によって収集された情報などをウクライナに提供していると見られる。

そのNATOには、新たにフィンランドとスウェーデンが加盟する見込みだ。第二次世界大戦でソ連に侵攻されながら独立を保ったフィンランドと、200年間中立を保ってきたスウェーデン。両国が加盟の意向を示したのはやはり、「話のできるロシア」でなくなっているという警戒意識からだろう。

対ロシアでまとまれない国々の論理

ロシアのウクライナ侵攻を受けて、国連では40年ぶりに緊急特別会合が開催された。このとき、ロシア軍のウクライナからの即時撤退を求める決議案が採決されたが、その結果は複雑だった。アフリカ諸国の半数以上の26カ国が反対・棄権・欠席などでロシア非難に回らなかった。ロシアの理事国資格停止を求める決議に対しても、44カ国が賛成しなかった。

旧ソ連は西側の植民地だったアフリカ諸国の独立闘争や、南アフリカのアパルトヘイト打倒を支援した。それに、奴隷貿易の時代も含め、アフリカの人権を蹂躙してきたのは西欧諸国であった。だからアフリカ諸国は、ロシア除名の西側諸国の資格を問うたのである。

また、ロシアから軍事装備品や原油を輸入し、中国に対抗する観点からもロシアとの関係を維持したいインドも棄権に回った。西側民主主義陣営の力に一層のかげりが出ていることを印象づけている。

【必読ポイント!】 ウクライナ戦争は対岸の火事ではない

プーチン大統領暗殺は起こるか?

ウクライナへの軍事侵攻を決断したのはプーチン大統領であり、今後の戦争の継続に関しても、間違いなく最大の決定権を握っている。プーチンが暗殺されてしまえば、世界に平和が戻るのではないか。ウクライナの人々がそれを望んだとしても無理はない。

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