気候変動の真実

科学は何を語り、何を語っていないか?
未読
気候変動の真実
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科学は何を語り、何を語っていないか?
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気候変動の真実
出版社
出版日
2022年03月23日
評点
総合
3.3
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
3.0
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おすすめポイント

人為的な温室効果ガスの排出量は増加し続けている――。

そう指摘するのは、「国連の気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)による最新の報告書だ。気候変動について世界中の科学的知見を結集させたIPCCは、定期的に報告書を更新、公表し、何十億人もの人々が水害や干ばつといった気候変動の悪影響を受けると警鐘を鳴らし続けている。2007年にはノーベル平和賞を受賞するなど、地球と人類に対する貢献度は計り知れない。

一方で本書は、米国の著名な科学者が異端視される覚悟で、現行の気候変動説に異を唱える一冊である。人間による温室効果ガスの増加と気温上昇について、その影響度はマスコミが騒ぎ立てるほどではないと論じる。気候変動説が熱烈に支持される背景には、政治家やマスコミによる気候変動の曲解があると問題視する。

気候変動という極めて複雑で難解な問題の性質上、さまざまな見解があるのは必定だろう。地球温暖化に伴う海面上昇など、今そこにある危機として報じられる気候変動の問題。その危機の本質は一体何なのか。本書を通じ、地球の未来に本当に必要な対策を考えるきっかけとしていただきたい。

ライター画像
香川大輔

著者

スティーブン・E・クーニン
米国の科学政策におけるリーダーのひとり。オバマ大統領の下で米国エネルギー省の科学担当次官を務め、同省の戦略計画と初の「4年ごとの技術レビュー(2011年)の主執筆者となった。物理学、天体物理学、科学計算、エネルギー技術・政策、気候科学などの分野で200以上の査読付き論文を発表している。カリフォルニア工科大学の理論物理学の教授を務め、約10年間にわたりカリフォルニア工科大学の筆頭副学長(プロボスト)を務めた。現在は、ニューヨーク大学の大学教授として、スターンビジネススクール、タンドンスクールオブエンジニアリング、物理学科に籍を置く。米国科学アカデミー、米国芸術科学アカデミー、米国政府のために技術的な問題を解決する科学者のグループであるJASONなどに所属。2014年からは国防分析研究所の理事を、2014年から2019年まで全米アカデミーズの工学・物理科学委員会の委員長を務めた。現在、ローレンス・リバモア国立研究所の独立理事を務めるほか、ロスアラモス、サンディア、ブルックヘブン、アルゴンヌの各国立研究所でも同様の役割を担う。

本書の要点

  • 要点
    1
    人間が気候に影響を与えていることは間違いない。一方、気候はさまざまな要因の影響を受けており、人間の影響度を評価することは容易でない。
  • 要点
    2
    異常気象や海面上昇について、マスコミが過剰に騒ぎ立てている節がある。マスコミや政治家、科学者はそれぞれの立場を重視するあまり、気候変動説が熱烈に支持されるようになった側面は見過ごせない。

要約

【必読ポイント!】 人為的影響

気候に対する人間の影響度

科学は、人間の影響で地球は破滅すると警鐘を鳴らす。

しかし、地球全体の気温の変化を把握し、人間の影響度を評価することは簡単なことではない。長期的な変化を捉える必要がある。それにもかかわらず、短期的で特徴的な温度変化だけを切り取ってデータを選り好みする――。そんなことがマスコミでは日常茶飯事だ。

地球の気候システムにとって最も重要で、厄介でもある要素が世界の海洋だ。海は気候の熱の90%を包摂するが、数十年から数百年の単位で変化し、気候変動に影響を与える。

最近の調査では、海洋がこの何十年かの間に暖まっているのは明らかだ。それでは、人間はこの温暖化にどの程度関与しているのか。

一つの手がかりは、人間の影響がごくわずかだった頃の気候を調べることだ。木の年輪や南極の氷床から、過去5億年にわたる気候の変化を捉えることができる。これによると、さまざまな自然要因で気候は大きく変動し、直近の1万年は比較的暖かく安定した気温が続いていることが分かる。

1880年以降の平均地上気温偏差の約1℃の上昇が、人間によるものではないと否定はできない。ただ同時に、地球の地上気温や海洋の熱容量の過去の変化は、気候に強い影響を与える自然要因の存在を示してもいる。人間の影響に対する気候の反応を科学的に特定することは極めて難しいのだ。

地球の温度を決めるもの
oonal/gettyimages

それでは、人間はどのように気候に影響を及ぼしているのだろうか。

地球の温度は、太陽光による加熱と宇宙への放射熱による冷却のバランスで決まる。地球は真っ黒ではないため、届いた太陽光の30%は反射するが、このときの反射率を「アルベド」という。天体の外部から入射する光に対する反射光の比だ。

地球のアルベドに基づき、地球がエネルギーバランスを保った状態の「平衡温度」を算出すると、平均地上気温はマイナス18℃になる。しかし、実際の地球の平均気温は15℃である。大気中の温室効果ガスが、赤外線熱をつかまえ、地球表面から宇宙への熱流を妨げ、地球を暖めているのだ。

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要約公開日 2022.10.29
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