これからの時代を生き抜くための文化人類学入門

未読
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これからの時代を生き抜くための文化人類学入門
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これからの時代を生き抜くための文化人類学入門
出版社
定価
1,760円(税込)
出版日
2022年06月25日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

あなたは旅が好きだろうか。実際に旅に行かずとも、「ここではないどこか遠くへ行って、会ったこともない人たちと話してみたい」という感覚自体は誰しも持ったことがあるだろう。

本書は、そんな未知の地へと出かける文化人類学が探究してきた人類の多様なあり方を紹介する本である。そこには、世界中の驚くほど多彩な人間が描かれている。本書を読むことは、そうした「旅」の追体験と言えよう。

文化人類学の知識がない人は、その「旅」を愉しむだけでも有意義だ。文化人類学の理論や体系について多少の知識がある読者であっても、本書で繰り広げられている実例はいずれも刺激的で興味深く感じられるはずである。そこでは、自分自身や自分の目の前の世界の「あたりまえ」が覆される感覚を得られるだろう。もちろん、そうした考え方がどこから導かれたかの理論的な部分についても、わかりやすく教えてくれる一冊でもある。

文化人類学が問いかけることを、どこか遠い世界の面白い話で終わらせてはいけない。いまを生きる人類ひいては地球上のすべての存在の多様性がなぜ生まれたのかに思いを馳せることは、地球に生きる私たちすべてに関係することだ。それは、自分たちの人生の課題や関心事にもつながっている。

本書を通じて、悩みを吹き飛ばすような「衝撃的」な人間のあり方に出会ううちに、自分が信じる「あたりまえ」の儚さに気づかされ、自然と、より柔軟な思考になれるはずだ。

著者

奥野克巳(おくの かつみ)
立教大学異文化コミュニケーション学部教授。1962年生まれ。82年メキシコ先住民の村に滞在、83年バングラデシュで上座部仏教僧、84年トルコを旅し、88~89年インドネシアを一年間放浪。94~95年ボルネオ島焼畑民カリス、06年以降同島狩猟民プナンのフィールドワーク。単著に『絡まり合う生命』『ありがとうもごめんなさいもいらない森の民と暮らして人類学者が考えたこと』(どちらも亜紀書房)など。共著・共編著に『マンガ人類学講義』(日本実業出版社)、『今日のアニミズム』『モア・ザン・ヒューマン』(どちらも以文社)など。共訳書にエドゥアルド・コーン著『森は考える』、ティム・インゴルド著『人類学とは何か』(どちらも亜紀書房)など。

本書の要点

  • 要点
    1
    文化人類学とは、未知の世界に出かけていき、そこで展開されているなじみの薄いやり方や考え方を自ら体験することで、「あたりまえ」を見つめ直す学問である。
  • 要点
    2
    文化人類学では、地球規模の時間軸、人間の存在しない世界をも念頭に置きつつ、多種多様な文化を持つ人間の姿かたちを記録し、考える。
  • 要点
    3
    人間が多様な文化を生み出してきたという「多文化主義」的な価値観を超えて、人間以外も含めた複数種がこの世界を作り上げてきたことへと目を向けるあり方は、「人新世」の困難を乗り越えるために必須である。

要約

【必読ポイント!】 文化人類学とは何か

「あたりまえ」を見つめ直す

文化人類学とは、「(異)文化や人類のことを扱う学問」を指す。そこに生きている人たちのことをただ書き留めて考察するだけでなく、相手側の視点から私たちの世界を見つめ返すことで、既成のやり方や考えを疑ってみる姿勢を持つ。それは、「これからの時代を生き抜く」ことができるという思い込みを問い直すことにもつながる。

20世紀の偉大な人類学者クロード・レヴィ=ストロースは『悲しき熱帯』の中で、「世界は人間なしに始まったし、人間なしに終わるだろう」と述べている。文化人類学では、地球規模の時間軸、人間の存在しない世界をも念頭に置きつつ、多種多様な文化を持つ人間の姿かたちを記録し、考えるのだ。

未知の土地に出向き、そこで展開されているなじみの薄いやり方や考え方を自ら体験することで、「あたりまえ」を見つめ直す。それは、「自分や人間、文化、世界を考えるための拠りどころ」になる。

異文化に参加し、考えること
SL_Photography/gettyimages

異文化を研究対象とする調査方法は徐々に整備され、画期的な発見につながっていった。

未知の世界に出ていく「フィールドワーク」の確立には、ブラニスラウ・マリノフスキが決定的な役割を果たしている。オーストラリアでの調査中に第一次世界大戦が勃発して長期滞在することになったことを契機として、現地の言葉を覚えながらその生活に浸ることで、その社会の全貌を「内側」から解明しようとしたのだ。この調査経験は、ある文化・社会の全体像がわかるように体系的に記述された「民族誌(エスノグラフィー)」として発表された。

このように、「調査者が現地の人びとの日常の出来事に参加しつつ、他方でその観察データを記録するというかたち」を「参与観察」と呼ぶ。

文化人類学は、19世紀には植民地主義と深く結びつき、西洋が最も進歩した文明と捉えていた「文化進化論」に基づいていた。マリノフスキ以降のフィールドワークと民族誌という手法は、異文化を同じ地平に置き、その内部へ分け入っていくような視点を与えた。「いずれの文化もそれぞれ固有の価値を有している」ことを認める「文化相対主義」に移行したのである。

性とは何か

生物繁栄のかたちの多様性

人類学は、生物としてのヒト、文化的な存在としての人間の両者をカバーして、「人間というものを全体的に考える学問」として始まっている。性とは、まさにそうしたテーマの問題である。

生物の性は多様だ。たとえばヒドラは、池が干上がるなど環境が悪くなると、種として生き延びる確率を高めるために無性生殖を有性生殖に切り替える。カタツムリやフジツボは雌雄同体の性を持つ。

配偶者の獲得をめぐる同性同士の競争も様々だ。ゾウアザラシやアカシカのように体格と体力で優れるものが勝つ「正直な闘争」もあれば、繁殖行動が始まる前にカップルの後ろから自分の精子を撒き散らして受精させるイモリの仲間のような「スニーカー戦略」もある。

文化的な性の多様性
marchmeena29/gettyimages

人間は、生物進化的な側面から大きく逸脱して、多様な性の文化を開花させてきたと言えそうだ。

たとえばベネズエラのバリ社会では、父親、父性は「分割」されるものとされる。ある父親は自分の子どもだけでなく他の子どもに対しても父として振る舞い、子どもには複数の父親がいることになる。

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