成長の技法

成長を止める七つの壁、壁を越える七つの技法
未読
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成長を止める七つの壁、壁を越える七つの技法
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成長の技法
出版社
出版日
2022年08月15日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

ビジネスシーンにおいて、「あの人、いい大学を出たのにね……」と、「頭のいい人」が揶揄の対象にされてしまうことがある。この場合、「いい大学を出たのに」に続く言葉は「仕事ができない」「顧客からの評判がイマイチ」「一緒に仕事しづらい」などといったネガティブな評価である。

本書の著者は、人材育成のプロフェッショナルとして数多のリーダーを導いてきた田坂広志氏である。田坂氏がこれまで社員、マネジャー、経営者などといった立場で目にしてきたのは、優秀だった人がなぜか成長を止めてしまうという悲しい現実だった。

なぜ優秀な人ほど成長できなくなってしまうのか。その原因は7つの「成長の壁」にある。冒頭のケースは、7つの壁のうち、「学歴の壁」に突き当たっている人の例だ。「学歴的優秀さ」から「職業的優秀さ」への切り替えができず、伸び悩んでいる。

7つの壁はいずれも「自分はできる」という慢心や内省を欠いた姿勢などから生まれ、成長を阻んでいる。もちろん「優秀な人」に限らず、誰もが壁に突き当たる可能性があることは言うまでもない。

本書は、成長を止めてしまう7つの壁と、それらを乗り越えるための7つの技法をセットで紹介している。「成長の壁」を乗り越えてその先に進みたいと願うすべてのビジネスパーソンに今すぐお読みいただきたい。

ライター画像
矢羽野晶子

著者

田坂広志(たさか ひろし)
1951年生まれ。1974年、東京大学工学部卒業。1981年、東京大学大学院修了。工学博士(原子力工学)。同年、民間企業入社。1987年、米国シンクタンク、バテル記念研究所客員研究員。同年、米国パシフィック・ノースウェスト国立研究所客員研究員。1990年、日本総合研究所の設立に参画。10年間に、延べ702社とともに、20の異業種コンソーシアムを設立。ベンチャー企業育成と新事業開発を通じて民間主導による新産業創造に取り組む。取締役・創発戦略センター所長等を歴任。現在、同研究所フェロー。2000年、多摩大学大学院教授に就任。社会起業家論を開講。現名誉教授。同年、21世紀の知のパラダイム転換をめざすシンクタンク・ソフィアバンクを設立。代表に就任。2005年、米国ジャパン・ソサエティより、日米イノベーターに選ばれる。2008年、ダボス会議を主催する世界経済フォーラムのGlobal Agenda Councilのメンバーに就任。2009年より、TEDメンバーとして、毎年、TED会議に出席。2010年、ダライ・ラマ法王14世、デズモンド・ツツ元大主教、ムハマド・ユヌス博士、ミハイル・ゴルバチョフ元大統領ら、4人のノーベル平和賞受賞者が名誉会員を務める世界賢人会議・ブダペストクラブの日本代表に就任。2011年、東日本大震災と福島原発事故に伴い、内閣官房参与に就任。2013年、思想、ビジョン、志、戦略、戦術、技術、人間力という「7つの知性」を垂直統合した「21世紀の変革リーダー」への成長をめざす場、「田坂塾」を開塾。現在、国内外から7300名を超える経営者やリーダーが集まっている。2021年、田坂広志の過去の著作や著書、講演や講話をアーカイブした「田坂塾大学」を開学。広く一般に公開している。著書は、国内外で100冊余。海外でも旺盛な出版・講演活動を行っている。

本書の要点

  • 要点
    1
    「学歴的優秀さ」から「職業的優秀さ」に転換できない「学歴の壁」を乗り越えるには、「職業的な智恵」を身につける「棚卸しの技法」が有効だ。
  • 要点
    2
    浅い仕事で成長が止まってしまう「経験の壁」を乗り越えるカギは「反省の技法」にある。反省の技法には「直後の反省対話」と「深夜の反省日記」の2つがある。
  • 要点
    3
    嫉妬や競争心などといった「エゴの壁」を乗り越えるには、「自己観察の技法」が効果的だ。自分を見つめるもう一人の自分が生まれ、成熟した人間になれる。

要約

なぜ、優秀な人ほど成長が止まってしまうのか

成長を止める「7つの壁」
francescoch/gettyimages

1981年の春、著者は大学院での研究生活を終え、30歳で実社会に出た。職場では上司や先輩、同年代の同僚たちが皆、優れた能力を発揮して活躍している。遅いスタートを切った著者は途方に暮れつつ、愚直に仕事を研究し、成長していった。

こうして何年も過ごすうちに、不思議なことが起こり始めた。優秀な先輩や同僚たちが、なぜか成長を止めてしまうのだ。著者は後にマネジャーや経営者になってからも、優秀なのに成長が止まってしまう人材を数多く見ることになった。

そこで気がついたのは「優秀な人ほど、成長が壁に突き当たる」という逆説だ。具体的には、優秀な人ほど「学歴」「実績」「立場」という「3つの落し穴」に陥ってしまうのだ。

「学歴の落し穴」とは、「学歴的な優秀さ」と「職業的な優秀さ」の違いを理解できないこと。「実績の落し穴」は、「自分は、それなりに仕事はできる」と思うようになり、井の中の蛙になってしまうこと。そして「立場の落し穴」は、過去の役職や肩書などに縛られ、新たな立場に合わせて自分を変えられないことである。

落し穴に陥ることなく成長していくためには、成長を止めてしまう7つの壁、すなわち学歴の壁、経験の壁、感情の壁、我流の壁、人格の壁、エゴの壁、他責の壁に気づく必要がある。要約では「学歴の壁」「経験の壁」「エゴの壁」と、それらを乗り越える技法を紹介する。この技法を知っているかどうかで、プロフェッショナルとして、そして人間としての成長に、圧倒的な差がつく。

学歴の壁:「優秀さ」の切り替えができない

「職業的優秀さ」に切り替えられない人

「学歴の壁」は「頭の良い」新人が突き当たりがちな壁である。

有名大学を優秀な成績で卒業し、入社してきた佐藤さん。会議の内容や上司の発言を熱心にメモするなど、一生懸命仕事に取り組んでいる。勉強熱心で情報収集にも余念がない、真面目なタイプだ。

ところが、営業の仕事についての評価は芳しくない。うまくいかなかった商談について、プライドが邪魔をするのか上司や先輩に相談しないようだ。佐藤さんのことを陰で「あれで◯◯大学を出ているんだけどね……」と揶揄する先輩もいる。

あなたの職場にも、このような新人がいるのではないだろうか。学生時代にどれほど勉強ができても、「仕事ができる」人材になれるとは限らない。「優秀」と言われた人ほど「学歴的優秀さ」から「職業的優秀さ」への切り替えができないのである。

「学歴的優秀さ」とは、論理的思考力や知識の修得力が長けていること、つまり理路整然と物事を考えられたり、記憶力が良かったりするということだ。一方、「職業的優秀さ」は、直観的判断力と智恵の修得力が長けていることであり、勘が鋭かったり、経験から大切なことを学べたりする力である。

智恵は経験や人間を通じてしか掴めない。豊かな経験を通して深い職業的な智恵を掴むことで、優れたプロフェッショナルになれるのだ。

「学歴の壁」を乗り越える「棚卸しの技法」
lerbank/gettyimages

「学歴の壁」を乗り越えて職業的な智恵を身につけるには、「棚卸しの技法」が有効である。この技法は、自分が身につけてきた職業的な智恵を振り返るものだ。ここでの智恵とは、プレゼン力、会議力、企画力、営業力、説明力、交渉力などであり、会議を主宰することが多い立場なら「会議力」を振り返って、どの程度身についているかを棚卸しする。

「棚卸し」のポイントは2つある。1つ目は、一定期間の成長を振り返ることだ。「この半年の間に、自分の会議力はどの程度向上しただろうか」というように、期間を区切って自問する。成長が止まる人は、ある程度会議を運営できるようになると、「自分はできる」と思い込み、それ以上を求めない。成長を続けるために、自分の進歩に目を向けよう。

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要約公開日 2022.11.03
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