過去160年の間、世界の人口は約8倍となった。わずか数世代のうちにこれほどの人口増加はかつて経験したことがない。そして、これから先もないだろう。
いま、世界人口の増加ペースはスローダウンしている。スローダウンしているのは人口増加だけでない。ごく少数の例外を除き、生活のほとんどすべての側面がスローダウンし、このところ進んできた「大加速化」は終わろうとしている。
現在までのものの見方や考え方は、将来も技術革新が急速に進み、経済成長は永遠に続くという大前提に基づいている。ここ数世紀はスローダウンが起きた例がほとんどないだけに、スローダウンしていると聞けば戸惑いも大きいだろう。
しかし、スローダウンは現実に始まっている。それを事実として理解するには、いままでと違うやり方で近年の流れをとらえなおさねばならない。
変化を示せる数ある方法のうち、その変化がどのようなものか、そしてその変化の中で何が変わっているのかを知るには、時系列で見ていくのが最適だ。一方、本書で用いる手法はそうした一般的なものではない。しかしその方法によれば、変化の全体がどれだけ大きいかを示しながら、それがどれだけ変化しているかも明らかにできる。変化の速さの変化もわかるということだ。
スローダウンはとてもよいことである。いまのまま世界が加速し続ければ、破滅に向かって突き進むことになるからだ。人口爆発による世界規模の飢饉が生じるといった悪夢のシナリオの心配をせずにすむようになる。
スローダウンが行き着く先は、ユートピアではないが、歴史の終わりでも救いの到来でもない。スローダウンによって、私たちは安定に向かう。住まいも教育も改善し、過酷な仕事も減り、ほとんどの人の生活はよくなる。
本書では、完璧で象徴的なスローダウンを認識する上で役に立つ、美しいらせん構造、「驚異のらせん」をグラフで例示している。ある架空の国「ノーサッチランド」の1950~2650年の人口動態についてまとめたもので、縦軸に総人口、横軸に人口の増減の絶対的変化量をとる。
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