Slowdown 減速する素晴らしき世界

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出版社
東洋経済新報社

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出版日
2022年07月15日
評点
総合
4.0
明瞭性
3.5
革新性
4.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

世界の情報量は増加を続けて今後も加速の一途をたどる、経済においても中国の次はインドやアフリカ諸国の拡大が予想される――。

普段耳にするこうした見解ははたしてその通りだろうか。本書はこれまで大加速化に晒され、その環境に慣れきった私たちの意識に変革を促す。著者はオックスフォード大学で地理学の教鞭を執り、デジタル世界地図サイト「WORLD MAPPER」の共同開発者でもある、ダニー・ドーリング氏である。さまざまな国や時代の、さまざまな統計データを用いて500ページ超にわたり、「減速」に向かう世界のありようを詳らかにする。「あらゆることがスローダウンしている。そして、スローダウンはとてもよいことである」と主張する。

本書は債務、データ、気候、気温、人口動態、出生数、経済の7つをテーマに、スローダウンする世界を読み解いていく。テーマごとに用意された、時代の流れにおける変化の度合いを示した図表「位相ポートレート」は、数百年、ときに数千年の人類の歩みを俯瞰でき、大変有用だ。この「位相ポートレート」がスローダウン現象の理解をサポートし、本書を読み解く重要なキーとなる。

何かと「成長・飛躍・進歩」の必要性が叫ばれる今こそ、お読みいただきたい一冊だ。ややもすると焦燥感に駆られていた心が落ち着き、大局的なものの見方ができるようになるだろう。

著者

ダニー・ドーリング(Danny Dorling)
オックスフォード大学ハルフォード・マッキンダー地理学教授。著書にInequality and the 1%、The Equality Effectがある。デジタル世界地図サイト「ワールドマッパー」(worldmapper.org)共同開設者。

本書の要点

  • 要点
    1
    世界ではあらゆることがスローダウンし、これまで進んできた「大加速化」は終わろうとしている。
  • 要点
    2
    スローダウンはとてもよいことだ。仮にこのまま世界が加速し続ければ、破滅に向かって突き進むことになる。
  • 要点
    3
    スローダウンをうまく把握するには、時間、変化、そして変化の速さを同時に示すことのできる位相ポートレートが有効である。
  • 要点
    4
    過去5世代の間に起きた急速な変化は、歴史的に見て極めて稀な現象だ。あらゆることが安定に向かう現代では、変化のペースは遅くなる。

要約

【必読ポイント!】すべてがスローダウンする

この先に待ち受ける未来
DNY59/gettyimages

過去160年の間、世界の人口は約8倍となった。わずか数世代のうちにこれほどの人口増加はかつて経験したことがない。そして、これから先もないだろう。

いま、世界人口の増加ペースはスローダウンしている。スローダウンしているのは人口増加だけでない。ごく少数の例外を除き、生活のほとんどすべての側面がスローダウンし、このところ進んできた「大加速化」は終わろうとしている。

現在までのものの見方や考え方は、将来も技術革新が急速に進み、経済成長は永遠に続くという大前提に基づいている。ここ数世紀はスローダウンが起きた例がほとんどないだけに、スローダウンしていると聞けば戸惑いも大きいだろう。

しかし、スローダウンは現実に始まっている。それを事実として理解するには、いままでと違うやり方で近年の流れをとらえなおさねばならない。

変化を示せる数ある方法のうち、その変化がどのようなものか、そしてその変化の中で何が変わっているのかを知るには、時系列で見ていくのが最適だ。一方、本書で用いる手法はそうした一般的なものではない。しかしその方法によれば、変化の全体がどれだけ大きいかを示しながら、それがどれだけ変化しているかも明らかにできる。変化の速さの変化もわかるということだ。

スローダウンはとてもよいことである。いまのまま世界が加速し続ければ、破滅に向かって突き進むことになるからだ。人口爆発による世界規模の飢饉が生じるといった悪夢のシナリオの心配をせずにすむようになる。

スローダウンが行き着く先は、ユートピアではないが、歴史の終わりでも救いの到来でもない。スローダウンによって、私たちは安定に向かう。住まいも教育も改善し、過酷な仕事も減り、ほとんどの人の生活はよくなる。

スローダウンを表す「驚異のらせん」

本書では、完璧で象徴的なスローダウンを認識する上で役に立つ、美しいらせん構造、「驚異のらせん」をグラフで例示している。ある架空の国「ノーサッチランド」の1950~2650年の人口動態についてまとめたもので、縦軸に総人口、横軸に人口の増減の絶対的変化量をとる。

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要約公開日 2022.12.31
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