文にあたる

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文にあたる
出版社
定価
1,760円(税込)
出版日
2022年08月30日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.0
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おすすめポイント

仕事は本を読むこと。『文にあたる』は、人気校正者として10年以上本と向き合い続けてきた、牟田都子さんによるエッセー集だ。校正者は、本が出版される前の「ゲラ」と呼ばれる試し刷りを読み、内容の誤りや不足がないかをたしかめる。一定の速度で文字をひとつひとつ押さえながら、丹念に資料と見比べ、じっくりと読む。そうして誤植があると判断すると「鉛筆を入れる」。

出版前に行われた著者と校正者とのやりとりは、読者の目には入らない。著者の「生の言葉」を読めるのは、校正者の特権なのかもしれない。だからこそ、校正でどこまで「直す」かという悩みがつきまとうのだろう。一見して「おかしい」文章でも書き手の意図が隠れているかもしれない、新人作家の粗削りな文章ははたして「直す」べきなのか——。普段意識されることのない校正の仕事の裏側をのぞくと、本がこれまでとは違って見えてくる。

考えてみれば、これまで本を読んでいて校正者を意識するのは、誤植を見つけたときくらいだった。本には間違いがなくてあたりまえ、校正は誤植を「拾って」あたりまえだという意識があるのだ。そんな本の信頼を積み上げてきたのは、校正の仕事によるところも大きいはずだ。本は人より長く生き、誰かにとってかけがえのない一冊になるかもしれない。だからこそすべての本が同じように手をかけてつくられてほしいと願う著者のまなざしは、本への愛にあふれている。これからの読書体験をまるごと豊かにしてくれる、本を愛するすべての人におすすめしたい一冊だ。

ライター画像
池田友美

著者

牟田都子(むた さとこ)
1977年、東京都生まれ。図書館員を経て出版社の校閲部に勤務。2018年より個人で書籍・雑誌の校正を行う。これまで関わった本に『へろへろ 雑誌『ヨレヨレ』と「宅老所よりあい」の人々』(鹿子裕文、ナナロク社/ちくま文庫)、『何度でもオールライトと歌え』(後藤正文、ミシマ社)、『ブスの自信の持ち方』(山崎ナオコーラ、誠文堂新光社)、『家族』(村井理子、亜紀書房)、『はじめての利他学』(若松英輔、NHK出版)ほか多数。共著に『あんぱん ジャムパン クリームパン 女三人モヤモヤ日記』(亜紀書房)、『本を贈る』(三輪舎)。

本書の要点

  • 要点
    1
    本書の著者の仕事は「本を読むこと」。本が出版される前のゲラと呼ばれる試し刷りを読む「校正」の仕事を10年以上続けてきた。
  • 要点
    2
    校正の仕事をしていると物知りに思われることが多いが、すべての物事に精通することはできない。だからそのつどあらゆる手段を使って調べるのである。
  • 要点
    3
    校正における失敗は誤植を出してしまうことだとすれば、校正とは常に失敗している仕事だ。
  • 要点
    4
    校正がいなくても本はつくれる。それでも校正を入れるのは、これまで数多の本が培ってきた、本の信頼を守るためではないだろうか。

要約

文にあたる

仕事は、本を読むこと

本書の著者の仕事は本を読むことである。本が出版される前のゲラと呼ばれる試し刷りを読み「内容の誤りを正し、不足な点を補ったりする」(『大辞林』)。そんな「校正」の仕事を10年以上続けているが、飽きるということはまったくない。

自分では選ばないような本を、理解できるまでとことん調べながら読む。普通の読書とは違い、一文字ずつ、同じ速度で、指さし確認をするように読んでいく。誤字脱字を「拾う」だけでなく、事実関係の正誤をたしかめる「ファクトチェック」も行う。そうして何度もゲラを読んでいると、あっという間に校正期間の2週間が過ぎている。

編集者から新たなゲラを預かって最初の1ページをめくるときは、期日までに終えられるだろうかという不安と、どんな世界が待っているのだろうという期待が入り混じる。そんな校正の魅力をひとことで表せればよいのだが、うまい言い方が思いつかない。そうしてできたのが本書だ。

読書は自由な行為だ。どこから読み始めても、どんなふうに読んでもいい。お好きなところから、ページをめくってみてもらいたい。

【必読ポイント!】赤鉛筆ではなく、鉛筆で

そんなことはない
Kudryavtsev Pavel /gettyimages

『三谷幸喜のありふれた生活』の連載が朝日新聞で20年以上も続いているのは、人気脚本家の生活が本当に「ありふれた」ものだったとしても、特別なもののように読ませる文章であるからだろう。それでも三谷さんは謙虚に、この連載が人目に触れるレベルの文章の体裁を保てるのは、校閲のおかげだと語っている。細かい言葉遣いから内容の事実関係まで、「僕のミスを指摘してくれる」のだという。

校正者が「物知り」な例として、三谷さんは『ペーパー・ムーン』という映画について書いたときの経験を挙げている。「主人公の詐欺師親子」と書いたら、校正者から「映画の中では、親子とは言ってないのではないか」という指摘が入ったのだ。「往年の映画のディテールに、ここまで精通しているとは思わなかった」と三谷さんは感嘆するが、著者は同じ校正の仕事をする人として「それは誤解です」といいたくなった。

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