日本でいちばん大切にしたい会社8

未読
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日本でいちばん大切にしたい会社8
出版社
出版日
2022年10月26日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

本書は、べストセラー『日本でいちばん大切にしたい会社』シリーズの第8作だ。本シリーズは、社員や家族、取引先など関係者の「幸せ」を大切にする経営を実践し続けている全国各地の企業に着目する。そのベースには、利益・効率優先ではなく、命や人に重きをおく「幸せ優先」の経営こそが、最も重要であるという著者の信念がある。本シリーズが多くの人に愛読されるということは、自身の会社が、利益・効率優先で、何かしらの犠牲を払っている社員が多くいることの裏返しともみてとれる。その点、紹介されている企業に共通するのは、社員に対する優しさであり、「五方良し」の犠牲のない経営である。参考になる点が多く、学びの機会を与えてくれる。

2年ぶりの本作は、コロナ禍とウクライナ侵攻に直面した不安定・不確実な状況で執筆され、「だからこそ」という著者の強い思いが込められている。その意味で、今までのシリーズとは一線を画す。

人間味あふれるユニークな入社試験を実施する松川電氣株式会社や、利益を度外視してでも弱い立場の人を送迎する株式会社フタバタクシーなど、選りすぐりの5社が紹介される。

これまでの著作同様に、中小企業の経営者の方、若いビジネスパーソンだけでなく、コロナ禍で苦労している経営者の方にも、ぜひ読んでいただきたい一作である。本作を読めば、社員を大切にするからこそ、継続的な利益を生み出せるという経営の方程式に気づくであろう。

著者

坂本光司(さかもと こうじ)
経営学者。現在「人を大切にする経営学会」会長。1947年、静岡県生まれ。静岡文化芸術大学文化政策学部・同大学院教授などを経て、法政大学大学院政策創造研究科教授、同研究科長、法政大学大学院中小企業研究所所長などを歴任。専門は中小企業経営論、地域経済論、障がい者雇用論。徹底した現場派で、これまで8000社を超える企業の実地調査・アドバイス・研究を続けてきた。主要著書に『日本でいちばん大切にしたい会社』シリーズ〈1~7〉(あさ出版)、『「新たな資本主義」のマネジメント入門』(ビジネス社)、『経営者の手帳』(あさ出版)など、100冊以上がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    本シリーズは、利益・効率優先ではなく、社員や家族、関係先までも幸せにする「利他経営」を実践している企業を紹介する。
  • 要点
    2
    松川電氣は「身体」「心」「経済」の「3つの健康づくり経営」で社員の人間性を育み、55年連続の黒字経営を実現している。
  • 要点
    3
    フタバタクシーは、福祉・介護タクシーなど特殊車両を強みに、高齢者や障がい者など弱い立場の人を送迎する事業で地元からの信頼を得ている。
  • 要点
    4
    おおこうち内科クリニックは、患者のニーズに応える、ホスピタリティー精神で「わざわざ客」の獲得に成功、患者を感動させている。

要約

【必読ポイント!】 松川電氣株式会社

驚異の55年連続黒字

電気設備工事業を専門とする松川電氣株式会社は、独立独歩の経営で、創業以来55年連続リストラなしの黒字経営を続けている。社員の「人間力」の育成と、「3つの健康づくり経営」を貫き、地域を代表する電気設備工事の総合サービス企業にまで成長した。

創業は1967年。松川智氏が、卓越した技術力を武器に静岡県浜松市に会社を起ち上げた。後任に指名された現社長の小澤邦比呂氏が、「大家族的経営」や地域への貢献施策などで事業を拡大。社員数50名足らずにもかかわらず、現在では、学校、病院、オフィスビルなど大規模施設から直接受注されるまでになった。小澤氏の人生には、小さい頃に仕事で留守がちだった父に代わり、経営の話を子どもにもわかりやすく教えてくれた祖父、誰にでも分け隔てなく親切に接していた母親の存在が大きな影響を与えてくれる。二人からの教えを守り、社員だけでなく、社員の向こう側にいる家族や子供の幸せまで願う経営を実践していることが、長年の黒字経営につながっている。

「お母さんの足を洗う」入社試験
hisa nishiya/gettyimages

「人のための経営」は、入社にあたっての最終試験に顕著に表れている。新卒の人にも中途の人にも、「お母さんの足を洗って」と題した作文を、原稿用紙に手書きで2枚程度書いてもらう。

小澤氏がこの試験を思いついたのは、先祖供養のために訪れた春季彼岸会の席でのことだった。住職さんが「母親の苦労を知り、心から親を敬い感謝できるような社員を育ててください」と説いた「親孝行」の法話に感銘を受け、以来20年以上、この試験を続けている。

本書に作文が掲載されているある新入社員は、ヒビの入った痛々しい母の足と対峙し、改めて母親の苦労に気づいた。そして、今までで一番素直な気持ちで、「ありがとう」と言えたと綴っている。今後は自分が働き親孝行する決意を固めた。

母親がいない人や、遠方に住んでいる人は、「私のお母さん」というテーマで同じように作文を書く。ミャンマー人の新入社員は、故郷で苦労した母に対する感謝と恩返しを誓う作文を提出した。こうした作文からは、同社が何を大切にし、どんな社員を求めているかを感じ取ることができる。

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要約公開日 2023.02.05
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