スキー場は夏に儲けろ!

誰も気づいていない「逆転ヒット」の法則
未読
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スキー場は夏に儲けろ!
著者
出版社
東洋経済新報社

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出版日
2022年11月24日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

「冬よりも夏に稼ぐスキー場がある」と聞いて驚かない人はいないだろう。本書はそんな、奇跡のスキー場の秘密に迫る一冊だ。

著者は白馬マウンテンリゾートの代表を務める和田寛氏だ。和田氏は東京に生まれ、東京大学法学部を経て農林水産省と戦略コンサルティング・ファームに勤務したのち、2014年に白馬で働き始めた。

白馬では2016年~17年、記録的な少雪により、スキー場の来場者数が激減した。標高が低く、ウィンターシーズンが短いことも課題だった。さらに国内では、スキー人口が減少の一途をたどっている。和田氏は「このまま冬の数カ月の売り上げに頼っていてはならない」と危機感を抱き、改革に乗り出したそうだ。その結果、オフシーズンの来場者が、コロナ禍であるにもかかわらず、2014年の8倍にもなったという。その活躍が話題となり、「ガイアの夜明け」や「ワールドビジネスサテライト」でも紹介された。

夏のスキー場にお客さんを呼ぶために、あなたなら何をするだろうか。著者らが出した答えは「隠れた資産」の活用だ。白馬の持つ強みを徹底的に探し、あらゆる角度から見つめて、アピールすべきポイントと適切なアピール方法を決めた。それを形にしたのが、山頂につくった展望施設であり、写真映え抜群の大型ブランコであり、表参道や嵐山でも大人気のCHAVATYが出店した展望エリアである。

著者らはどのようにして素晴らしいアイデアを出したのか。人気店とタッグを組むに至った経緯とは。その過程でどのような失敗を経験したのか……。経営やマーケティング、企画職以外の方にとっても学びの多い一冊である。

著者

和田寛(わだ ゆたか)
白馬岩岳マウンテンリゾート代表
1976年東京都生まれ。2000年に東京大学法学部を卒業後、農林水産省、ベイン・アンド・カンパニーを経て、2014年に白馬で働き始める。
2016~17年の記録的な少雪でスキー場の来場者が激減したことを受け、白馬岩岳マウンテンリゾートの経営者として冬期のスキー客だけに頼らない「オールシーズン・マウンテンリゾート」を目指した改革に取り組む。革新的なアイデアを次々投入した結果、2019年にはグリーンシーズンの来場者数がウィンターシーズンを超え、収益も改善。コロナ禍の影響はあったものの、2021年グリーンシーズンの来場者は過去最高となる13.4万人(2014年比609%)を記録している。2022年には18万人(同818%)を超える見込み。
その活躍が大きな話題となり、わずか4年で「ガイアの夜明け」「ワールドビジネスサテライト」「Live Newsα」「news23」や在京情報番組など100を数えるテレビ番組に紹介される(2022年9月現在)。

本書の要点

  • 要点
    1
    来場者数が激減していた白馬のスキー場は、「隠れた資産を見つけ出し、磨き上げること」によって、オフシーズンにも集客できるようになった。
  • 要点
    2
    「隠れた資産」とは、「磨けばその会社や地域にとって宝物になるのに、何らかの理由で埋もれたままになっているもの」のことだ。隠れた資産をうまく活用できれば、コストも時間も節約できる。
  • 要点
    3
    隠れた資産を見つけ、磨き上げるには、「内部の目」と「外部の目」の両方が必要だ。

要約

夏の白馬に行列ができた日

「冬よりも夏に稼ぐスキー場」の舞台裏
Grafissimo/gettyimages

2022年5月4日、夏のスキー場に長蛇の列ができていた。イベントがあるわけでもない、もちろん雪もない日である。著者が白馬に移住し、白馬岩岳マウンテンリゾートを運営する会社の経営に携わるようになって3年目のことだった。

その前の冬は2年連続の少雪で、2010年以降は12万人程度だった来場者数が7万人台まで激減していた。今後も少雪のシーズンがやってくるかもしれないし、海外からのスキーヤーがずっと来てくれるとも限らない。国内のスキー人口も激減している。「冬の数カ月で稼ぐだけだと、今後やっていくことはできない」という危機感を背景に、絶景の山頂につくった展望施設や、北アルプスの大絶景に飛び出す大型ブランコ、表参道や京都嵐山で大人気のCHAVATYが出店した展望エリアなど、さまざまな取り組みを仕掛けてきた。

結果として、2016年には2万5000人程度だった「グリーンシーズン(4~11月)」のお客さんの数が、2021年には見事13万4000人を突破した。これはシーズン中の来場者数を大きく超える数である。

これらの取り組みに通底する考え方は「隠れた資産を見つけ出し、磨き上げること」だ。

【必読ポイント!】 「隠れた資産」とは

自社のビジネスを定義する

戦略を考えるうえでの大前提は、「そもそも自社のビジネスは何なのか」「自社の活動を通じて顧客にどんな価値を提供するのか」を定義することだ。白馬岩岳の場合、メンバーと話し合って出した結論は「私たちはスキー場ビジネスをやっているわけではない」だった。

著者らがいる土俵は「レジャー産業」である。もう少し具体的に言うと、「半日程度以上の時間を国内外のお客さんに使ってもらい、目に見える製品や商品をお渡しすることなく、満足感や爽快感を覚えてリフレッシュした状態で、もとの生活に戻ってもらうビジネス」だ。そう考えれば、競合は県内のスキー場だけではない。ニセコや蔵王、北海道や東北、北アメリカやヨーロッパのスキー場はもちろん、遊園地やキャンプ場、ゴルフ場、映画館、動物園や水族館といった施設も競合だ。ゲームやスマホ、インターネットですら、お客さんの時間と財布を取り合う競合に含まれる。

埋もれている資産を見つけ出す

レジャー産業として、白馬岩岳マウンテンリゾートにできることは何か。それを考えるうえでのキーワードが、「離れた資産を見つけ出し、徹底的に活用すること」だ。

「隠れた資産」とは、「磨けばその会社や地域にとって宝物になるのに、何らかの理由で埋もれたままになっているもの」のこと。ゼロから何かを生み出すよりコストも時間も節約できるため、「隠れた資産」をうまく使えば、成功確率は格段に高まる。

「隠れた資産」には大きく3つのカテゴリがある。

1つ目は「モノ」だ。土地や建物、機械、その土地固有の景色などのうち、その価値をフルにお客さんに提供できていない、工夫次第で輝きを増すものだ。たとえば長野県阿智村は、「星がもっとも輝いて見える場所」に認定されていながら星空を売りにしていなかったが、あるときから星空ツアーを開催し、大人気を博している。

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要約公開日 2023.02.04
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