人生のリアルオプションの表紙

人生のリアルオプション

仕事と投資と人生の「意思決定論」入門


本書の要点

  • 不確実性が大きい時にリスクを処理できるオプションが多いほど、リスクはチャンスとなる。不確実な社会において、未来を拓く意思決定の鍵は行動の柔軟性である。

  • 人々の価値観の多様化により、社会はますます不確実になる。リアルオプションは、不確実な状況での「今すぐ行わない戦略」を意思決定に組み入れたものだ。

  • リアルオプション価値は不確実性が大きければ大きいほど増大する。その示唆は、好機が訪れたときに柔軟な対応を取ることによる損失の回避を目指したものである。

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明日できることを今日やるな

行動の柔軟性を持つ

童話「三匹の子ぶた」を現代風に書き換えるとこうなる。

三匹の子ぶたはお母さんに会いたい。噂では、最近オオカミは体調を崩したようだ。長男は噂を信じて出かけたが、噂は事実ではなくオオカミに食べられた。次男は噂を信じなかったが長男の末路を確かめることなく出かけ、やはりオオカミに食べられた。末っ子も噂を信じなかったが、兄二人の動向を確かめた。そして、出かけるのをやめた。

「生きた情報は、意思決定の鍵」だ。これを活用すれば、行動の幅やタイミングを柔軟に変えることができる。このことを「行動の柔軟性」という。

不確実な世の中では、自分の思うようにものごとは進んでいかない。そこで成功や失敗を何度も繰り返すことで、段階的に成長していける。柔よく剛を制す。「大きな枠組みの中で状況に応じて柔軟に行動する」人を目指そう。「明日できることを今日やるな」とは、そういう意味だ。

選ぶことは、捨てること

takasuu/gettyimages

「選ぶことは捨てること」だ。たいていの人は、選ぶことで失われるものに気づかない。だから後になって「失ったものは大きい」と悔やむ。「捨てた損失は選んだものと一心同体だ」。その損失が大きいほど、「選んだものの価値は相対的に小さくなる」。

捨てるべきは「初志貫徹」「完璧」「無限」だ。複雑化する社会では初志を貫くことが簡単ではなくなった。初志にこだわっても成果が出ないのであれば、ときには休みつつ、ゆっくりと軌道修正を試みよう。また、完璧には際限がない。世の中にはグレーもあるし、やろうと思えばどこまでもできてしまうことはたくさんある。意思決定で大切なのは、合格の最低基準を決めて最善を目指すことだ。人の能力や可能性は無限ではない。できないことは手放す。「やればできる」というのは傲慢だ。「自分の能力を自分自身が一番よく知ること」が肝要だ。

捨ててはいけないものは「感性」「勇気」「行動」「好機」「時間」だ。押し付けは感性を傷つける。知もたしかに大事だが、知は「自信や勇気を裏付ける要素」であるからこそ価値がある。何かを決めたのならば「机上の空論」にせず、行動しよう。行動しないことは、自分の意思や、褒められて成長する機会を捨てることになる。意思決定で一番むずかしいのは、何度も訪れない好機を掴み取ることだ。そして、負けを選ばないよう諦めずに時間を使い切ろう。

認識の転換

「不確実性の中には、チャンスもあればリスクもある」。このチャンスとリスクは「トレードオフ」の関係にある。「ハイリスク・ハイリターン」のほうが大きな潜在的チャンスの可能性があるので、不確実性の振れ幅は大きいほうがいい。

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要約公開日 2023.03.19
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