AGELESS

「老いない」科学の最前線
未読
AGELESS
出版社
NewsPicksパブリッシング

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出版日
2022年11月30日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

年をとると体のあちこちが不調を訴えてくる。病気になると、体を労わらなければならないと切に思うが、不調自体はある程度仕方のないものだと受け入れてきた。だから、そもそもあらゆる病の根本原因である「老化」の対策をしようなどとは考えたこともなかった。

著者は、老いは「自然の摂理」ではなく「治療できるようになる」という。本書の第2部は、老化を治療するための最先端の研究成果が数多く紹介され、最も多くの紙面が割かれている。要約で紹介した「古きを捨てる」と「新しきを得る」に加え、「修復にいそしむ」「老化をリプログラミングする」まで読むと、老化治療にはいくつもの可能性があり、けっして荒唐無稽な夢物語ではないことが実感できることだろう。

書籍『LIFE SHIFT』が提示した「人生100年時代」という考え方は、教育・仕事・引退という人生の3段階を見直す必要性を訴えかけた。けれど一体どれだけの人が「自分は100歳まで生きる」ことを現実のものとしてとらえているだろう。まして「老いない時代が来る」なんて、考えたことはなかったはずだ。死ぬまで健康でいられるかもしれない。そう考えると随分見える世界が変わるのではないだろうか。ともに健康習慣を実践して、人類未踏の時代を生きよう。

ライター画像
Keisuke Yasuda

著者

アンドリュー・スティール(Andrew Steele)
計算生物学者。サイエンスコミュニケーター。1985年生まれ。オックスフォード大学で物理学の博士号を取得したのち、「老化」こそが現代最重要の科学的課題と考え、計算生物学者に転身。フランシス・クリック研究所で機械学習を用いてDNAを解析し、患者の診療記録から心臓発作を予測する研究に従事。「生物老年学」の最先端をはじめて一般読者向けに詳しく紹介したデビュー作である本書『AGELESS』は、医学界およびエコノミスト誌、ガーディアン紙等のトップメディアで極めて高い評価を獲得。英米でベストセラーを記録し、世界14カ国語で刊行が決定している。

本書の要点

  • 要点
    1
    1930年ラットの食餌管理の実験が、老化は生物学的必然でないことを発見した。
  • 要点
    2
    老化とは加齢とともに死亡リスクが増えることである。生物の進化は生殖への最適化を重視した結果、老化は“進化の手抜き”として淘汰されずに取り残されたと考えられている。
  • 要点
    3
    老化の治療法開発では、老化細胞の除去や、よりよい細胞と取り換える幹細胞治療などの研究が進んでいる。
  • 要点
    4
    老化プロセスに対抗できる治療法の開発サイクルが早まれば、結果的に事実上の老化治療が実現するかもしれない。

要約

【必読ポイント!】 人類最大の苦しみ

老化は生物学的必然ではない
PeopleImages/gettyimages

いま地球では毎日約15万人が死んでいる。そのうち10万人以上の死因は老化によるものだ。何千万もの人が数年から数十年にわたる健康の衰えで苦しんでいる。これほど大規模な影響があるにもかかわらず、老化はあまりに普遍的であるがゆえに、真剣に対策がされていない。具体的な病気には恐怖を覚えるが、社会全体として老化そのものには向き合っていないのだ。

ほとんどの国が寿命という点では先進国に近づき、世界の平均寿命は2019年に72.6歳になり、いまも伸びている。老化はもはや世界最大の死と苦痛の原因である。世界の開発と人口の高齢化が進むに連れてふくれ上がる危機に対して、私たちに何ができるのか。その答えは生物学にある。

1930年代、科学の歴史を変える画期的な発見があった。研究者が実験用ラットを3つのグループに分け、ひとつには好きなだけ餌を食べさせ、残りふたつには餌の量を減らして必要な栄養はすべて得られるように管理した。すると、好きなだけ食べるラットは歳をとり1匹ずつ死んでいったが、食餌を管理したラットは生きつづけた。健康で、白い毛も増えず、がんにもかからず、少食が老化プロセスそのものを遅らせたかのようだった。

その後おこなわれた他の生物での実験でも、結果は一貫していた。多くの生物が、大幅に食餌を減らすことで長く生きた。食べ物を減らしすぎると飢餓になるのは明らかだが、うまく調整すれば、ふつうに食べるよりも寿命が有意に長くなり、健康状態も良好だったのだ。こうした発見で、老化は生物学的必然ではないということがわかった。

老化とは「進化の手抜き」

ダーウィンは自然淘汰による進化論を『種の起源』で発表した。進化に照らして意味をなす理論上、実験上のエビデンスは無数にある。問題は老化と進化をどう調和させるかだ。もし進化が適者生存でなりたっているのなら、衰退が進行するプロセスの何が最適だというのだろうか。なぜヒトの進化は、自己修復の効率性を高めて、無限に完全な状態が続くようにしなかったのだろうか。

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要約公開日 2023.03.31
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