三流シェフ

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三流シェフ
出版社
定価
1,650円(税込)
出版日
2022年12月14日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

ビジネス、スポーツ、芸術。どんな分野であっても、飛びぬけた成果をあげた人のストーリーは、わたしたちの背中を押してくれる。本書もそんな物語のひとつだ。

著者、三國清三氏は、北海道生まれのフレンチシェフだ。中学卒業後、札幌グランドホテルと帝国ホテルで修行したのち、帝国ホテルの総料理長から直々に推薦され、20歳にして駐スイス日本大使の料理人を務める。その後は本場の三つ星レストランを渡り歩き、帰国後は東京に「オテル・ドゥ・ミクニ」を開店して国内外から30万人を超えるお客様を迎えた。

この経歴だけを見ると、運と才能に恵まれたシェフの完璧な人生だと思うだろう。だが本書を読んでみると、その裏にはとんでもない努力があったことがわかる。

特に驚かされるのは、どこの厨房に行っても戦略的に“雑用”をこなし、トップに見出されてとんとん拍子に出世していくことだ。大使の料理人になったときは洗い場のパートタイムという立場で、本格的なフランス料理を食べたことも、作ったこともなかったという。それほど異例の抜擢だったのだ。

詳細は要約で確認してほしいが、三國氏の努力は、たいていの人が想像するような種類でも、量でもない。常に戦略を練り、一般的な人なら躊躇するようなことにもどんどんチャレンジする姿にワクワクさせられ、ページをめくる手が止まらなくなってしまった。

さて、本書のタイトルは『三流シェフ』だ。誰もが認める一流シェフであるはずなのに、なぜこのタイトルなのか。不思議に思ったなら、ぜひ本書を手に取って確かめてほしい。

著者

三國清三(みくにきよみ)
1954年北海道・増毛町生まれ。フレンチシェフ。
中学卒業後、札幌グランドホテル、帝国ホテルで修行し、駐スイス日本大使館ジュネーブ軍縮会議日本政府代表部料理長に就任。その後いくつかの三つ星レストランで修行を重ね帰国。1985年、東京・四谷に「オテル・ドゥ・ミクニ」を開店。世界各地でミクニ・フェスティバルを開催するなど、国際的に活躍。2013年、フランソワ・ラブレー大学より名誉博士号を授与される。2015年、日本人料理人で初めて仏レジオン・ドヌール勲章シュヴァリエを受章。2020年にYouTubeを始め、登録者数約40万人の人気チャンネルに。子どもの食育活動やスローフード推進などにも尽力している。

本書の要点

  • 要点
    1
    初めて食べたハンバーグの味に感動した著者は、札幌グランドホテルのコックになると決心する。研修で同ホテルを訪ねた日、厨房の陰に隠れておき、タイミングを見計らって「ここで働かせてください」と直談判した。
  • 要点
    2
    洗い場のパートタイムとして働いた帝国ホテルでは、その働きぶりが認められ、大使の料理人に抜擢された。
  • 要点
    3
    最後に海外で働いたのはリヨン郊外の三ツ星フレンチ「アラン・シャペル」だ。アラン・シャペル本人からかけられた一言がきっかけとなり、日本に帰ることにした。

要約

地元の漁師町と札幌グランドホテルで

「この家を貸してくれませんか?」

東京四谷にある住宅街に自分の店をオープンしたのは1985年のことだ。周辺には飲食店がまったくなく、夜は真っ暗になるような場所である。だがぼくはある屋敷をひとめで気に入ってしまい、迷わず玄関の呼び鈴を押して主人にこう言った。「この家を貸してくれませんか?」

当時のぼくは30歳前で、貯金も家もない、無名の若者だった。あるのは最高のレストランで積んだ8年間の経験と、自分の料理の腕に対する根拠のない自信だけ。その場で断られて当然の申し出だった。

ところがその家の主人は寛大だった。「わかった。今日はもう遅い。来週にでも詳しい話を聞こう」。イエスの返事をもらったのは1週間後のことだ。

そうしてオープンした「オテル・ドゥ・ミクニ」には、国内外から30万人を超えるお客様に来ていただいた。

それから37年。2022年の年末に「オテル・ドゥ・ミクニ」を閉めることにした。ずっと心の底で温めていた夢を実現するためだ。

「こんな旨めえもん、一度も食ったことない」
Hisae Ina/gettyimages

ぼくは北海道の日本海側にある、増毛(ましけ)という漁師町に生まれた。

小学2年生くらいから父と船に乗るようになり、高学年になると、魚市場に売りに行くのもぼくの役目になった。一斗缶にウニやアワビを詰めて背負い、朝6時半の汽車で市場に運ぶ。

ぼくを高校に行かせるお金なんて、うちにはない。中学を卒業すると、札幌の米屋で住み込み従業員として働きながら、短大併設の別科調理専修夜間部に通うことになった。

米屋での仕事を終えると、お嬢さんが作ってくれた夕食を食べて学校に行く。お嬢さんは栄養士の資格を持っており、食卓にはいつもハイカラな料理が並んだ。

いちばん衝撃を受けたのはデミグラスソースのかかったハンバーグだ。こんな肉は食べたことがない。この黒いソースは毒じゃないのか――。ドキドキしながら仲間たちを盗み見ると、あたりまえのように食べている。

空腹と好奇心に負けて、箸の先でひとかけらだけつまんで口に入れる――こんな旨めえもん、一度も食ったことない。べた褒めするぼくに、照れたお嬢さんは「これは家庭のハンバーグ。グランドホテルのハンバーグはこんなもんじゃない」と言った。

このとき、「グランドホテルのコックになって、日本一のハンバーグを作ること」がぼくの夢になった。お嬢さんは「グランドホテルは中卒じゃ雇ってくれないと思うよ」と言ったが、何か手があるはずだ。

「ここで働かせてください」

チャンスは突然訪れた。夜間学校の卒業記念行事として、札幌グランドホテルでテーブルマナー研修を受けることになったのだ。ぼくの心の中に、ある計画が浮かんだ。

研修の最後に、ホテルの人が厨房を案内してくれる。ぼくは話を聞くふりをしながら、すこしずつみんなから遅れて、列の最後尾につくようにした。そして洋食の厨房まで来ると、隙を見て調理台の陰にしゃがみこんだ。他のみんなは気づかず厨房を出ていく。

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要約公開日 2023.03.16
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