ささるアイディア。

なぜ彼らは「新しい答え」を思いつけるのか
未読
ささるアイディア。
ささるアイディア。
なぜ彼らは「新しい答え」を思いつけるのか
未読
ささるアイディア。
出版社
誠文堂新光社

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出版日
2021年12月13日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

ボタンを押せばじゃらじゃらとアイディアが湧いてくるなら、誰も苦労はしないだろう。だが、もちろんそううまくはいかない。多くのビジネスパーソンは、新規事業のアイディアや新商品のキャッチーなネーミング、コンペで勝てる企画を求めて、常に頭を悩ませている。そんな人に勧めたいのが、松永光弘氏がさまざまな業界のクリエイター15名に「ささるアイディアの生み出し方」をインタビューしてまとめた本書である。

アイディアの本だが、インタビュー対象はクリエイティブディレクターだけではない。sioのオーナーシェフである鳥羽周作氏や動画プロデューサーの明石ガクト氏、ホテルプロデューサーの龍崎翔子氏などにもインタビューをし、その類まれなるアイディア力の源泉に迫っている。

著者の松永光弘氏は、編集家として、20年近くにわたりクリエイターたちと本をつくってきた。そんな松永氏によると、クリエイターたちは例外なく、自分なりの「発想の作法」を持っていたという。そうした経験をもとに、インタビューでは「自分にとって重要なアイディアがどこにあるのか?」「アイディアを考える手順は?」「アイディアの見きわめかたは?」の3つの問いを投げかけている。その答えは多種多様であるいっぽう、まったく別の業界の人が似たような回答をしているケースも見られ、非常に興味深い。読者がどのような業界に所属しているとしても、きっとアイディア発想のヒントが見つかるはずだ。

著者

松永光弘(まつなが みつひろ)
編集家
1971年、大阪生まれ。「編集を世の中に生かす」をテーマに、出版だけでなく、企業のブランディングやコミュニケーション、サービス開発、教育事業、地域創生など、さまざまなシーンで「人、モノ、コトの編集」に取り組む編集家。ロボットベンチャーをはじめとした企業のアドバイザーもつとめており、顧問編集者の先駆的存在として知られる。20年近くにわたってクリエイターたちの書籍を手がけ、企画編集した書籍は『「売る」から、「売れる」へ。水野学のブランディングデザイン講義』(水野学)、『広告コピーってこう書くんだ!読本』(谷山雅計)、『ひとつ上のプレゼン。』シリーズ(眞木準ほか)、『しかけ人たちの企画術』(小山薫堂ほか)、『新しい買い物』(無印良品コミュニティデザインチーム、勝部健太郎)、『新訳「ドラえもん」』(藤子F不二雄、佐々木宏)など多数。「地域の新しい伝えかた学校」編集アドバイザー。自著に『「アタマのやわらかさ」の原理。クリエイティブな人たちは実は編集している』(インプレス刊)がある。
Twitter:@mitsuzosan
note:https://note.com/mitsuzo

本書の要点

  • 要点
    1
    アイディアを生み出すセンスは、徹底的なインプットによって後天的に鍛えることができる。
  • 要点
    2
    時間をかけて説明しなければわからないものは、そのよさが伝わらないし、SNSでシェアされにくい。余計なものは削ぎ落とし、「ラフスケッチひとつと説明1行」で伝わる、シンプルなアイディアへと磨きあげるのが鉄則だ。
  • 要点
    3
    なにかに対して「気持ちいい」「好ましい」と思ったら、その理由を自分なりに分析し、頭のなかにどんどんストックしていくとよい。それがアイディアのタネになる。

要約

水野学氏(クリエイティブディレクター)

アイディアは「知識」から生まれる

クリエイティブディレクターとしてさまざまな企業のブランディングデザインに関わってきた水野学氏は、アイディアは2種類のセンスによって導き出されると考えている。身体能力をともなう「運動的センス」と、記憶や学びによる「芸術的センス」だ。たとえばミュージシャンには、意図したとおりに指が動くという運動的センスに加えて、いい曲や表現のしかたを知っているという芸術的センスが必要だ。

アイディアを生み出す力は「芸術的センス」によるものである。このセンスは後天的なもので、知識が増えれば増えるほど磨かれていく。いま取り組んでいる仕事やプロジェクトを徹底的に分析して研究すれば、知識が蓄積され、アイディアのタネが生まれやすくなるはずだ。

まずは「調査」と「研究」
kyoshino/gettyimages

水野氏がアイディアを出す際は、かならず「調査」および「研究」からはじめる。考える対象のことを良く知らないと、アウトプットの精度が低くなってしまうからだ。

具体的には、これから考える対象について、現地に足を運んだり、いろんな本を読んだりしながら、自分たちで徹底的に調べる。水野氏が「HOTEL THE MITSUI KYOTO」のブランドコンセプトを立案したときでいえば、ホテルの構想や施設などについて詳しく知ることからはじめて、ホテルを運営している三井不動産グループや、創業家である三井家の歴史についても調べた。ほかにも京都という街や土地柄、歴史や文化、そこにかかわってきた人たちのことなどを学んだり、ホテル周辺の古地図を集めたりもした。

3か月ほど知識をたくわえたあと、プロジェクト仲間と話しているなかで浮かび上がったのが、日本人の「分かちあいの心」というキーワードだった。これをひとつのヒントとして思考を深め、最終的にブランドコンセプトを提案した。

川村真司氏(クリエイティブディレクター)

「ラフスケッチと1行」で伝える

クリエイティブディレクターとして幅広い領域で活躍する川村真司氏が意識しているのは、「ラフスケッチひとつと説明1行」で伝わる、シンプルなアイディアに仕上げることだ。時間をかけて説明しなければならないものは、そのよさが伝わらないし、SNSでシェアされにくいため、広がっていかない。

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要約公開日 2023.04.05
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