頂への挑戦

負け続けた末につかんだ「勝者」の思考法
未読
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負け続けた末につかんだ「勝者」の思考法
未読
頂への挑戦
出版社
出版日
2023年03月02日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

競馬は壮大なビジネスだ。「ラン・ザ・ビジネス」といえば事業を営むという意味だが、文字通り「馬を走らせている騎手」は、この世界でどんな立ち位置にあるかご存じだろうか。

まず、投資家にあたるのが馬主である。自分の馬をどの厩舎に預けるかを決め、預託料を支払う。社長にあたるのが厩舎の責任者である調教師だ。預かった馬の育成計画を立て、調教助手や厩務員といったスタッフをリードする。馬の運命もスタッフの生活も、調教師にかかっている。

そしてジョッキーは事業責任者だ。馬の可能性を最大限に発揮し、レースで勝たせる責任を負う。彼らはなによりも結果が求められ、馬券を買う競馬ファンからの期待も一身に背負う。勝てば馬のおかげと言われる一方で、負ければジョッキーのせいにされ、心無い言葉を浴びせられることも珍しくない。

こんな厳しい世界で2022年に最多勝、最高勝率、最多獲得賞金の三冠を達成し、史上4人目の「騎手大賞」を受賞して競馬史に名を刻んだのが、本書の著者・川田将雅氏だ。「勝者」までの道のりは平坦ではなく、むしろいつも“負けからのスタート”だった。そんな著者から紡ぎ出される言葉には、プロとしての覚悟を感じるものばかりだ。

本書は、川田氏がトップに至るまでの選択と思考の変遷を綴った一冊である。著者の仕事への向き合い方は、ビジネスの現場で闘う人たちにも大いに参考になるはずだ。たとえ競馬に興味がなくとも、ぜひ本書を手に取ってほしい。ページを開けばきっと、心に刺さるひと言が目に飛び込んでくるだろう。

ライター画像
ヨコヤマノボル

著者

川田将雅(かわだ ゆうが)
1985年生まれ、2004年にデビュー。08年に皐月賞をキャプテントゥーレで勝利してGⅠジョッキーの仲間入り。12年にはジェンティルドンナでオークスを制し、名実ともにトップジョッキーに。13、14、19、20、21年に最高勝率騎手、16年に特別模範騎手賞を受賞。同年にマカヒキで日本ダービーを制覇。22年は最多勝利・最高勝率・最多賞金獲得の三冠を実現し、史上4人目となる「騎手大賞」を獲得。9年ぶりの「JRA生え抜きリーディングジョッキー」となった。

・オフィシャルサイト
https://yuga-kawada.netkeiba.com/
・instagram @yuga.kawada_official

本書の要点

  • 要点
    1
    著者の人生は「負け」からのスタートであった。子供の頃は体が小さく、ケンカでも負けてばかりだったが、両親は決して「負けっ放し」を許してはくれなかった。
  • 要点
    2
    困難を打破するためには、自分が何を求められているかを察して、考えることが重要だ。
  • 要点
    3
    ジョッキーは依頼されなければレースに出ることができない。「必要とされる」ことは何より大切なことで、そのためには、求められる技術と結果を提供し続けなければならない。

要約

「負け」からスタートした人生

「負けっ放し」は絶対に許されない

著者が5歳のときのこと。保育園でいじめられ、メソメソと泣き帰ってきた著者に、母はこう言った。「男のくせにメソメソしやがって。情けない!」そして、やられたらやり返すことを要求し、その予行練習として母を殴るように言った。大好きな“ママ”を殴ることは嫌だが、ここで言う通りにしないと余計に怒られる。著者は泣きながら母の頬をベチッと叩いた。

いじめられて負けっ放しで帰ってくるのは絶対に許さない。悔しければやり返せ――。5歳の頃のエピソードはその一例であり、母の方針は一事が万事そうだった。

著者は今でこそリーディングジョッキー(最多勝利騎手)をはじめ、あらゆるタイトルを手にしたトップ騎手である。しかし小さいころは体がとても小さく、ケンカや相撲などでは負けてばかりだった。著者の人生は“負けからのスタート”であり、そこからいかに挽回していくかを考えることの繰り返しであった。

厳しい両親が作った“ジョッキー川田将雅”の原点
Juanmonino/gettyimages

そんな母より怖かったのが、父である。著者の父は、ジョッキーを経て調教師になった川田孝好氏だ。父は大井競馬の騎手としてデビューし、その後、佐賀競馬に移籍。著者が小学2年生のときに、調教師に転身した。子供の頃の父は怖くて話しかけられない存在であり、父の機嫌を損ねないように過ごすのが暗黙の了解であった。

著者は一度、父の逆鱗に触れてボコボコにされたことがあった。それは競馬学校の1次試験に合格したあと、ビリヤード場で遊んでいたときのことだ。まだ2次試験が控えているのに、遊んでいたことが許せなかった父は、著者の意識が朦朧とするまで殴り続けた。父はジョッキーとしては大成したとは言えず、この世界がどれだけ厳しいかを身をもって知っていたのだ。

著者はこのような激しい両親に育てられたが、親から愛されていないと思ったことは一度もない。母には優しい面があったし、父のことは競馬人として尊敬していた。大人になった今は、父とよく話をするようにもなった。

両親と過ごした時間こそが、今の“ジョッキー川田将雅”のベースを作っている。今でも両親より怖い存在に会ったことはなく、だからこそどんな立場の人とも渡り合うことができている。両親の存在そのものが、著者の強みの1つなのである。

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要約公開日 2023.04.09
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