エレガントな毒の吐き方

脳科学と京都人に学ぶ「言いにくいことを賢く伝える」技術
未読
エレガントな毒の吐き方
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脳科学と京都人に学ぶ「言いにくいことを賢く伝える」技術
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エレガントな毒の吐き方
出版社
出版日
2023年05月08日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

誰かからイヤなことをされたとき、あなたならどうするだろう? ハッキリと「迷惑です」「やめてください」と言えるシチュエーションもあるだろう。だが、上司や取引先など、関係を切れない人が相手だったら? おそらく多くの人はぐっと我慢するはずだ。

相手との関係を断ち切るわけでも、黙って我慢するわけでもない。ふんわりと言い返して、相手が真意に気づいて行動を改めてくれたらOK、そうでなければ「なんて鈍い人!」とこっそり嘲笑して留飲を下げる――これが本書の提案する知的戦略「エレガントな毒の吐き方」だ。

著者の中野信子氏によると、この戦略のお手本は京都人の「イケズ」である。有名なのは「元気なお子さんやねえ(=うるさいよ、静かにさせなさい)」だろう。分かる人は「嫌みを言われている」と気づくが、そうでない人にとってはただの褒め言葉であることがポイントだ。

著者によると、こうした“言いにくいことを賢く伝える”コミュニケーションは脳科学的に見ても合理的だそうだ。人間の脳は本来、ヒエラルキーで上位に立つために、相手を言い負かすことを好む傾向にある。だが現代においては、大きな集団の中に小さな集団が複数あり、それぞれの行き来が頻繁に発生する。今日の敵は明日の味方かもしれないから、相手を言い負かしてサヨウナラ、とはいかないのだ。

本書では、京都人への聞き取りをもとに、エレガントな毒の吐き方のルールが示される。本書で京都風の伝え方を習得すれば、コミュニケーションのモヤモヤが晴れること請け合いだ。

著者

中野信子(なかの のぶこ)
東京都生まれ。脳科学者、医学博士。東日本国際大学教授、京都芸術大学客員教授、森美術館理事。2008年東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。脳や心理学をテーマに研究や執筆の活動を精力的に行う。著書に『世界の「頭のいい人」がやっていることを1冊にまとめてみた』(アスコム)、『サイコパス』(文春新書)、『毒親』(ポプラ新書)、『フェイク』(小学館新書)など。

本書の要点

  • 要点
    1
    分かる人にだけ分かるように嫌みを言い、相手に真意を察してもらうのが京都風のコミュニケーションだ。
  • 要点
    2
    無理な依頼をされたとき、京都風にやんわり断るフレーズは「いえ、うれしいですけどちょっと。もっと合っている方を探しましょうか」だ。
  • 要点
    3
    相手を褒めているように見せかけると、角の立たない伝え方になる。たとえば、ピアノの音がうるさいと伝えたいときには「お嬢さん、ピアノが上手どすなぁ」という表現がぴったりだ。

要約

京都人の「エレガントな毒の吐き方」が合理的な理由

「関係を断ち切る」より「あいまいにしておく」

上司がハラスメントぎりぎりのことばかり言ってくる。配偶者がいつも上から目線。取引先の人がマウントをとりたがる……。どれも我慢し続けるのはつらいシチュエーションだ。だが、関係上、きっぱりとした態度をとるのも難しい。自分さえ我慢すれば……と思ってしまいがちだ。

こんなときに参考になるのは、著者がかつて耳にした、京都出身の方の次のような言葉である。

京都人が相手に分からないように嫌みを言うのは、防衛手段なのだ。嫌みだと分かる相手には自省を促し、分からない相手は嘲笑の対象にすることで、自分の心を守れる。いざというときには「嫌みなんて言っていませんよ」と言い逃れができるよう、二重の意味にとれるような言い方をする――。

分かる相手にしか分からないように、エレガントに毒を吐く。これが京都風のやり方だ。そうして「関係を断ち切る」よりも「あいまいな形で塩漬けにしておく」ことを選べば、必要に応じて、何事もなかったように人間関係を復活させられる。

エレガントな言い方で相手を懐柔する
John Wildgoose/gettyimages

人間の脳には、相手と良好な関係を長続きさせるよりも、論破したり、打ち負かしたりすることに喜びを感じる性質がある。ヒエラルキー上位をキープしていると、遺伝子を多く残せる確率が高くなるからだ。

この欲求の強さには、男性ホルモンが影響しているといわれている。男性ホルモンの濃度の高い個体のほうが、上昇志向的な欲求が強いという傾向があるようだ。女性は女性同士の協力の重要度がより高いために、上昇志向があまり高すぎないほうがより生存適応的であるからだろうと考えられる。

現代においては、相手を負かして上に立つという戦略は必ずしも得にならない。集団内部に生じる小集団のぶつかり合いや他集団との行き来を考慮しなければならなくなったからだ。

そうなると、「相手に打ち勝つ能力」よりも「互恵関係を築ける能力」のほうがより大切になってくる。互恵関係を築ける能力とはつまり、むやみに論破するのではなく、言葉をうまく使って相手を懐柔できる能力だ。そこで役立つのが、エレガントに毒を吐く技術である。

[シチュエーション別]京都人に聞く、エレガントな毒の吐き方

無理な依頼をお断りしたいとき

ここからは、言いにくいことをエレガントに伝える具体的な方法として、京都市在住の方に聞いた「適切な言い回し」を紹介する。

たとえば、関係がそれほど深くない人から無理な依頼をされて断りたいというシチュエーション。おすすめの返し方は「いえ、うれしいですけどちょっと。もっと合っている方を探しましょうか」だ。

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要約公開日 2023.06.07
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