人材投資のジレンマ

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人材投資のジレンマ
ジャンル
出版社
日本経済新聞出版

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定価
3,300円(税込)
出版日
2023年02月17日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

今、私たちは人材投資の転換点にいる。労働人口の減少、働く人々の価値観の変化、そして人的資本経営の要請。こうした潮流の中で、人材マネジメントは様々なジレンマを抱えている。

人材投資を可視化し、より効果的なものにするために、どんなアクションを起こすべきなのか。著者たちは、東京と米国カリフォルニア州で計13社の人事責任者へのインタビュー調査と、約2300人を対象にした3度のアンケート調査を実施した。そして、その結果をもとに、日本企業に向けた4つの提言を練り上げた。

調査では、意外なことに、従業員が感じている「教育訓練の充実度」と「主観的生産性」の両者に有意な関係は確認されなかったという。では、従業員の生産性を直接高める要因とは何なのか? その答えをまずは要約を通じて確かめてほしい。

本書の帯にあるように、「形骸化した人材立国を立て直す」という著者たちの意志が込められた意欲作だ。働く人々の幸せと、組織のビジョンの両方を実現させる人材マネジメントには何が必要なのか? 緻密な調査に基づいた提言から、自社を現実的に変えていくための手がかりが数多く見つかるだろう。

経営者、人材育成に関わる方、管理職層にぜひおすすめしたい一冊だ。人的資本経営への道筋を描く際に、本書に立ち戻ることで、自分たちの北極星を見据えられるのではないだろうか。

ライター画像
松尾美里

著者

守島基博(もりしま もとひろ)
学習院大学経済学部経営学科教授、一橋大学名誉教授
1986年米国イリノイ大学産業労使関係研究所 博士課程修了。人的資源管理論でPh.D.を取得後、カナダ国サイモン・フレーザー大学経営学部Assistant Professor。慶應大学総合政策学部助教授、同大大学院経営管理研究科助教授・教授、一橋大学大学院商学研究科教授を経て、2017年より現職。厚生労働省労働政策審議会委員、中央労働委員会公益委員などを兼任。2020年より一橋大学名誉教授。主な著書に『人材マネジメント入門』『人材の複雑方程式』『全員戦力化 戦略人材不足と組織力開発』(以上、日本経済新聞出版)、『人事と法の対話』(共著、有斐閣)などがある。

初見康行(はつみ やすゆき)
多摩大学経営情報学部准教授
同志社大学文学部卒業。株式会社リクルートHRマーケティングにて法人営業、人事業務に従事。一橋大学大学院商学研究科博士後期課程単位取得退学。2017年一橋大学博士(商学)。いわき明星大学(現:医療創生大学)准教授を経て、18年より現職。専門は人的資源管理。主な著書に『若年者の早期離職』(中央経済社)などがある。

山尾佐智子(やまお さちこ)
慶應義塾大学大学院経営管理研究科准教授
津田塾大学国際関係学科卒。神戸大学大学院国際協力研究科(経済学)、英国マンチェスター大学ビジネススクール(国際経営論)の修士課程を経て、豪州モナッシュ大学にて経営学Ph.D.を取得。2009年豪州メルボルン大学レクチャラー、16年同大学シニアレクチャラー。17年より現職。専門は国際人的資源管理論。主な論文に「グローバル人材とそのマネジメント――国際人的資源管理研究から得られる知見」『一橋ビジネスレビュー』2021年夏号(東洋経済新報社)などがある。

木内康裕(きうち やすひろ)
公益財団法人日本生産性本部 生産性総合研究センター上席研究員
立教大学大学院経済学研究科修了。政府系金融機関勤務を経て、日本生産性本部入職。生産性に関する統計作成・経済分析が専門。労働生産性の国際比較分析などのほか、アジア・アフリカ諸国の政府機関などに対する技術支援も行っている。
主な著書に『新時代の高生産性経営』(分担執筆、清文社)、『PX:Productivity Transformation[生産性トランスフォーメーション]』(分担執筆、生産性出版)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    従業員の「マインド面」の状態が、自身の主体的な行動や思考を喚起し、そうした行動や思考によって仕事の生産性が向上する。マインド面の向上には、教育訓練、自己啓発支援、組織開発への投資が有効である。
  • 要点
    2
    著者たちは、(1)外部労働市場との戦略的連携、(2)人材育成のパラダイムシフト、(3)働く人のマインド面への投資、(4)組織開発の進展、という4つの提言をしている。

要約

今、私たちは人材投資の転換点にいる

外部調達と内部育成のジレンマ

労働人口の減少、経営戦略の変化、人々の価値観の変化。現在は、経営を取り巻く環境が大きく変化しており、企業は人材マネジメントを再考するよう迫られている。それにより、いくつかの変化とジレンマが起こりつつある。

1つめの変化は、外部労働市場に開かれた人材マネジメントの積極的活用だ。近年、人材獲得の方法として、外部労働市場からの採用が重視されるようになってきた。外部からある程度育成された人材を確保した方が、時間的に大きな節約となる。一方で、それはリスクも伴う。採用した人材が期待通りのパフォーマンスを出してくれるか、長期的にその企業に残ってくれるかといったことだ。今後は、人事部門が外部と内部の効果的なポートフォリオを組む必要がある。

また、日本企業は、賃金や処遇の内部公平性と外部公平性の問題にも直面している。内部公平性とは、賃金などが企業内部の他の従業員と比較して公平なものになっているかの判断である。これに対し、外部公平性とは、外部企業の同様の従業員と比較しての公平性を意味する。労働市場における相場との比較といってもよい。

これまで日本の人事では、内部公平性を保つことで、従業員の納得性とエンゲージメントを保ってきた。だが、他社の賃金や待遇などの情報は、ネットなどを通じて容易に手に入るようになっている。そこで、外部労働市場の相場と比べて公平感を持てるような賃金設定が、人材のリテンションにおいて重要となっているのだ。

企業内での人材多様性の増加
Ada daSilva/gettyimages

2つ目の変化は、企業内での人材多様性の増加である。外部労働市場からの採用が増えると、能力や知識、経験値などの多様性、つまりタスク型の人材多様性が増していく。結果的に、そうした人材の能力開発ニーズに応じて、人材育成はより多様化、個別化していくだろう。

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要約公開日 2023.06.10
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