テレビCMの逆襲

運用型CMで売上50億を2年で実現したテレシーCEOの実践広告論
未読
テレビCMの逆襲
テレビCMの逆襲
運用型CMで売上50億を2年で実現したテレシーCEOの実践広告論
著者
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テレビCMの逆襲
著者
出版社
出版日
2023年01月17日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

本書はテレビCM、とりわけ「運用型テレビCM」と呼ばれるジャンルに光を当てている。運用型テレビCMは、従来型CMの「効果が見えにくい」という弱点を克服し、ネット広告同様の即時性のある効果測定を行い、最適化する出稿方法だ。

YouTubeが一般社会に浸透して久しい現代、テレビと聞くと時代遅れのメディアになりつつあるとのイメージがあるかもしれない。たしかに映像コンテンツの多くはインターネットを通じて配信され、それにまつわるネット広告も目覚ましい発展を遂げてきた。本書もそれは否定していないし、テレビメディアをまるで未開の鉱脈のように宣伝してもいない。

だが、一方でテレビ業界にはいまだに多くの広告費が投入され、ネットメディアで覇権をできる握るGAFAのような企業がないのも事実である。それでいて、本書の主要なテーマである「運用型テレビCM」はウェブ広告のように効果を可視化することができる。テレビCMはいまだに発展の余地が残されていて、スタートアップ企業の参入余地も大きいという。

本書はそうした内容について、著者がCEOを務めるテレシーという会社の取り組みを通じて詳説している。ただ自社の取り組みを賞賛するのではなく、広告業界について客観的に分析しているのが本書の最大の魅力だろう。

「運用型テレビCM」は万能ではないと自覚しながら、その魅力を余すところなく伝える本書。テレビCMを出稿しようとする企業にはうってつけの一冊となるはずだ。

著者

土井健(どい けん)
同志社大学卒業後、サイバードへ入社。モバイル広告代理店事業立ち上げに従事。2011年にECナビ(現CARTA HOLDINGS)に入社。グループ会社であるfluctに出向し、スマートフォンSSP「fluct」の立ち上げに参画。年間売上高20億から114億の日本最大級のSSPに育て上げ、東証一部(当時)上場に貢献。2016年fluct代表取締役を経て、2020年VOYAGE GROUP(現CARTA HOLDINGS)取締役に就任しテレシーの立ち上げに参画。2021年、テレシー代表取締役CEO(現職)。運用型テレビCM事業の成長を主導するとともに、タクシー広告、アドトラック、世界初のヘリコプター広告などのメディアにも注力する。

本書の要点

  • 要点
    1
    ウェブ広告はデバイスの進化とともに発展してきた。「運用型広告」は効果の可視化と緻密な戦略によってその存在感を増した。一方、テレビメディアは効果の可視化ができないことが弱点とされてきた。
  • 要点
    2
    テレビメディアにはまだまだ魅力がある。ネット広告と違い、GAFAのような巨大プラットフォーマーが存在せず、さらに「運用型テレビCM」の登場によって弱点が克服された。
  • 要点
    3
    運用型テレビCMは万能ではない。しっかりと下準備をし、戦略を練ることが肝要だ。

要約

ネット広告は何が優れていたか

ネット広告の隆盛
anyaberkut/gettyimages

最初に、ネット広告とアドテクノロジー(アドテク)の進化について整理しておこう。

ネット広告の発展は表示デバイスの進歩と深く関わり合っている。PC、フィーチャーフォン、スマホへとデバイスが進歩するにつれ、テクノロジーが高度化、複雑化してきた。

2000年代からはリスティング(検索連動型)広告やコンテンツマッチ(コンテンツ連動型)広告、ターゲティング広告、ソーシャル広告が主流となり、「枠から人へ」の流れが鮮明となった。2010年頃になるとメディアやアドネットワークの持つ広告枠を入札で買う「アドエクスチェンジ」という手法が広がってくる。

そして、リアルタイムの入札でターゲットや予算を変更し、クリックやインプレッションに応じて課金する「運用型広告」も誕生した。運用型広告はターゲットに対してピンポイントで広告を配信できるためムダが少なく、効果が大きいというメリットがある。さらに広告の効果を可視化できるのも強みの一つだ。可視化した結果に応じてクリエイティブを細かくチューニングすることも可能になるのだ。

そのように変遷してきたネット広告市場は現在、大手プラットフォーマーの寡占状態にあると言える。検索連動型広告のシェアの7~8割を占めているのは、Googleである。GAFAによるプラットフォームは広告市場そのものであり、代理店だけでなくクライアントですらGAFA側のルールに従わざるを得ないような現状だ。

欧米ではこの状況が独占禁止法に抵触するとしてGoogleなどを提訴する動きがあった。日本国内でも巨大プラットフォーム事業者が規制対象となっている。

テレビの「弱点」

近年のネット広告で無視できないのが「コンバージョン(CV)」である。ウェブマーケティング界隈ではユーザーが狙い通りのアクションを起こせるかどうかの「成果」に当たる。

例えば、ユーザーが商品購入や会員申込などのアクションを行うとその形跡が残る。それら具体的な成果(コンバージョン)が、表示回数やクリック数といった従来の指標よりも重視されるように変わってきた。

そのような成果を可視化できるのがネット広告最大の強みである。逆に言えば、テレビや雑誌などのレガシーメディアでは、成果を可視化しにくいことが弱点として認識されるようになった。

【必読ポイント!】運用型テレビCMの強みとは?

テレビはオワコンか?

テレビの視聴者数や視聴時間は、インターネットの利用と反比例するかのように減少してきた。広告業界でもそれらの影響は顕著だ。電通が毎年発表している「日本の広告費」によると、2019年は「ネット広告」が「テレビメディア」を抜いたのが話題になった。

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要約公開日 2023.06.11
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