ビジネスパーソンが目指すべきは、メンバー同士がお互いのことを認め合いつつ、建設的に意見を戦わせて成果につなげていくことだ。そのためには、心理的安全性の確保が欠かせない。
心理的安全性のある環境をつくるためには、マネジャー職が「人にやさしく、結果に厳しく」というアプローチを採ることだ。キモとなるのは「人」と「タスク」の区別である。
たとえば、メンバーが商品紹介文を作成したとする。マネジャーであるあなたが読んでみると、誤解を招く表現が散見された。この場合、人とタスクを区別しないと、次のようなフィードバックになるだろう。
「こんな誤解を招く表現では、とてもじゃないけど掲載できないよ。なんであなたはまともな文章が書けないの?」
一方、人とタスクを区別すると、次のような伝え方になる。
「昨日は遅くまで残ってこの文章を考えてくれたんだね。お疲れ様。ただね、この表現はお客様の誤解を招くから、このままでは掲載できないな。この部分の表現を再検討してくれるかな」
人とタスクを区別したフィードバックを受けた相手は、委縮したり反発を覚えたりせず、前向きに指摘と向き合えるだろう。一方、人とタスクを区別せず「お前はダメだ」と否定されると、「自分の居場所がない」と感じてしまい、心理的安全性が損なわれる。
チームの心理的安全性を高めるには、互いの価値観を認め合うことが欠かせない。
そのための第一歩は、マネジャーが自分のことをよく知り、理解し、それを周囲に伝える「自己認識」と「言語化(自己開示)」である。自分のことを理解し、それを相手に伝えられてこそ、お互いの共通点や相違点が明らかになり、対話による歩み寄りへと進んでいける。
心理的安全性を高めるためには「人にやさしく」だけではいけない。結果が出ないメンバーを放置していると、他のメンバーがストレスを抱えたり、「結果を出さなければいけないのか、出さなくてもいいのか」と戸惑ったりすることになるからだ。
マネジャーの役割は、メンバーを信頼し尊重し、支援しつつも、仕事の結果やプロセスについては、たとえ厳しい話でも「早く」「ストレートに」伝えることである。問題を指摘せずに放置しておくと、同じ問題が繰り返され、いつまでたってもチームの生産性は上がらない。また、伝えるべきことを伝えないままでいては、メンバーの育成を放棄していることになる。
厳しい指摘こそ、早いタイミングで伝えよう。そうすれば、状況を悪化させずに、建設的な関係性をつくっていくことができる。
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