本書が定義するフィードバックとは「相手が自分ではよく理解していない弱点や改善点、あるいは強みや長所に気づきを与え、成長に繋げてもらうコミュニケーション」だ。上司から部下に限らず、部下から上司、同僚から同僚など、役職や立場に関係なく組織全体で行われるべきものだ。
変化が激しく、先行き不透明な現代においては、ビジネスパーソンは自分の知識やスキルをアップグレードし続ける必要がある。そこで役立つのが、他者からのフィードバックだ。他者から長所も短所もフィードバックしてもらうことで、自分を常にアップグレードできる。
著者が社長を務める株式会社コンカーでは「コンカー流フィードバック」が実践されている。ここでは、コンカー流フィードバックの5つの基本概念を紹介する。
1つ目の基本概念は、フィードバックの「マインド」だ。フィードバックを行うときは、「後ろ向き・責める気持ち」ではなく、「建設的に・成長を願って」行う。「この機にやっつけてやろう」「きつく叱ってすっきりしたい」といったネガティブなマインドでフィードバックしても、相手の心には届かない。
2つ目の基本概念は、フィードバックの「種類」だ。フィードバックには2種類ある。相手の課題や改善すべき点を指摘する「ギャップフィードバック」と、相手の強みや長所を伝える「ポジティブフィードバック」だ。いずれのフィードバックにも大いに価値がある。
3つ目の基本概念は、フィードバックの「方向」である。上司から部下に対してだけでなく、部下から上司、同僚同士、あるいは他部門の上司・同僚・後輩など、全方向に向けて積極的にフィードバックを行うべきだ。管理職や経営層の立場にある人は、部下から遠慮なくフィードバックしてもらえるような関係性を築くようにしたい。
4つ目の基本概念は、フィードバックの「受け止め力」だ。フィードバックを躊躇するとき、その原因の一つに「相手に拒否されるのではないか」という恐れがある。伝え手が伝え方を工夫するのはもちろん、受け手にもフィードバックを受け止めるスキルが必要だ。このスキルを「コーチャビリティ(coachability)」と呼ぶ。
5つ目の基本概念は「組織的な取り組み」だ。フィードバックを活性化させたいなら、社員の自主性のみに頼るのではなく、経営層やリーダーによるトップダウンの取り組みも必要である。
ポジティブフィードバックとは、相手の長所や強みを伝えたり、成果や努力を認めたりするコミュニケーションだ。ポジティブフィードバックには、「受け手のため」と「お互いのため」の2つの効果がある。それぞれ解説しよう。
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