ビジネスと空想

空想からとんでもないアイデアを生みだす思考法
未読
ビジネスと空想
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空想からとんでもないアイデアを生みだす思考法
未読
ビジネスと空想
出版社
クロスメディア・パブリッシング

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出版日
2023年03月11日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

ビジネスと空想、一見相反する2つには重要な結びつきと革新のヒントが隠されている。スティーブ・ジョブズ氏によるiPhone、イーロン・マスク氏によるスペースⅩの事業などは、それぞれの人物の空想から生まれたものと言える。

本書は、「荒唐無稽な物語の中にこそ、未来を切り拓くヒントがある」という仮説のもと、空想や妄想をビジネスシーンで活用して新しいイノベーションを生み出す契機とすべきだと提案している。

著者は、ショートショートという短くて不思議な物語に特化した小説家「ショートショート作家」だ。国語の教科書にも作品が掲載され、執筆作品がテレビドラマ化されたり、映画化されてカンヌ国際映画祭で上映されたりと、人気を博している。また、ショートショートの書き方講座を企業向けにアレンジしたワークショップ「ショートショート発想法」も、メーカーやコンサルティング会社など、さまざまな企業で開催されている。

本書では、ワークショップの内容がワークシートとともに詳細に紹介されており、自分でも試しに書いてみることができる。あまり馴染みのない人も多いであろうショートショートの世界を覗き、常識やルール、思い込みを打ち破る練習をしてみてはいかがだろうか。

空想は何も特別な人だけのものではない。自分の中からでも、ビジネス現場で役立つ新しい商品やサービスのアイデアが生まれるかもしれない。

ライター画像
鈴木えり

著者

田丸雅智(たまる まさとも)
1987年、愛媛県生まれ。東京大学工学部卒、同大学院工学系研究科修了。
2011年、『物語のルミナリエ』に「桜」が掲載され作家デビュー。12年、樹立社ショートショートコンテストで「海酒」が最優秀賞受賞。「海酒」は、ピース・又吉直樹氏主演により短編映画化され、カンヌ国際映画祭などで上映された。坊っちゃん文学賞などにおいて審査員長を務め、また、全国各地でショートショートの書き方講座を開催するなど、現代ショートショートの旗手として幅広く活動している。
書き方講座の内容は、2020年度から小学4年生の国語教科書(教育出版)に採用。
同内容を企業向けに発展させたワークショップ「ショートショート発想法」も多数開催。このワークショップは、メーカー、IT企業、コンサルティング企業など、大手を中心にさまざまな業種の企業で開催され、好評を博している。参加者も広報部門から企画部門、研究開発部門まで多様で、年齢も若手から管理職、ベテラン、経営層と多岐にわたる。
2021年度からは中学1年生の国語教科書(教育出版)に小説作品が掲載。著書に『海色の壜』『おとぎカンパニー』など多数。メディア出演に「情熱大陸」(TBS系)「SWITCHインタビュー達人達」(NHK)など多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    個人の空想や妄想は、常識を打ち破るアイデアを生み出し、ビジネスシーンにおいて今までにない新しい商品やサービスにつなげ、イノベーションを起こし得る。空想自体は、誰でもできるものである。
  • 要点
    2
    空想や妄想を言語化することで現実世界でも通用するアイデアに落とし込むことができる。その際に有用なのがビジネスシーンにおいて短編の形式で物語をつくる「ショートショート発想法」である。
  • 要点
    3
    全員に反対されるようなアイデアからイノベーションは生まれる。自信を持って空想や妄想をすることが大事だ。

要約

誰にでも空想する力がある

空想が世界を変える
Nuthawut Somsuk/gettyimages

今はない新しい商品やサービスを考える際によく参照されるのは、シンクタンクなどが発行している未来予測レポートである。これは現在からの積み上げであるため、短期的にはその通りの未来が訪れる可能性が高く、手堅くアイデアを考えるためには有効だ。

しかし、イノベーションには常識を打ち破るようなアイデアが求められ、そこでは個人の空想が重要な鍵を握る。空想が身近になることで、ありふれていたはずのもの、見慣れていたはずのものが全く別のものに見え始め、物事を別の視点で見る力や、相手の事情、背景などを想像できる力を養うことができるためである。

日本のビジネスシーンでは、空想は意味のないこと、無駄なことなどとネガティブに捉えられがちだ。しかし、スティーブ・ジョブズ氏によるiPhoneやジェフ・ベゾス氏によるAmazonなどの例に見られるように、世界を変える新しい商品やサービスのアイデアは個人の空想の中に眠っている。

一見すると荒唐無稽に思えるような空想も、日常的に繰り返し、周囲の人たちと互いに刺激を与え合うことにより、精度を上げられるのだ。空想は、ジョブズ氏のような特別な人だけに許されたものではなく、誰が行ってもいい。むしろ日本人は、マンガやアニメ、ゲームなど、空想が身近にある環境で育つ、いわば「空想ネイティブ」なのである。

また、空想やアイデア発想、創作において効いてくる要素は、経験や知識や教養だ。そのため、それらを持っている大人が常識やルールの固定観念から解放されれば、おもしろいものを生み出せる可能性は大人の方が高い。今や自らの作品が受賞したり、映画化されたりしているような著者自身も、以前は読書も作文も国語も苦手だったという。

空想やアイデアを物語にする

頭の中に漠然と湧き起こる空想は、言語化することで、考えを人に伝えやすくなる。また、それによって空想を客観的に眺められるようになる。

さらに、空想やそこから生まれたアイデアを、物語にすることが大切だ。なぜなら、空想の水準にはばらつきがあって荒削りであることも多く、いざ実現しようとしても不発に終わってしまうリスクがあるからである。

空想を物語にすることで、空想を真剣に掘り下げ、考えを深めることができる。物語の行間にはさらなる空想の余地も生まれ、それを読んだ人の想像から派生の空想が生まれやすくなる。

加えて、空想をヒントに考えたアイデアを物語にすることで、アイデアを現実世界に落とし込み、強度を高めることができる。アイデアを客観的に眺められるようになるので、コストをかけずにアイデアの持つ可能性をシミュレーションでき、実現に向けて踏み込んだ議論ができる。

そして、空想やアイデアを物語にするには、ショートショートという形式がオススメだ。ショートショートとは、「アイデアとそれを活かした印象的な結末のある物語」であり、1話5〜10分程度で読めるボリュームのものである。作品に何らかのアイデアが含まれているかどうか、さらにはそのアイデアをうまく活用した印象に残る結末になっているかどうかがショートショートの特性である。

ショートショートはワンアイデアを重視する形式で、執筆に要する時間も短い。すぐに読めるため、他者と物語を共有しやすい。また、読み手の想像を喚起しやすい省略の文学のため、ビジネスにおける空想に有用な形式であるといえる。

大切なのは、まずは考えていることを物語にしてみるということで、そのためにショートショートの自由さは追い風になる。ビジネスシーンでは、そこからいかに現実世界に活かせそうなヒントを見出すかが重要である。

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要約公開日 2023.07.15
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