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成人発達理論から考える成長疲労社会への処方箋の表紙

成人発達理論から考える成長疲労社会への処方箋


本書の要点

  • ビョンチョル・ハンは、新自由主義的資本主義が進行する社会を「疲労社会(燃え尽き症社会)」と表現する。人々は、過度な成長・達成(=ハッスル)を求められており、疲弊している。

  • 私たちに求められるのは、社会に流布する価値観や仕組みを客体化し、自分なりの判断基準を持つポストコンベンショナルな思考だ。

  • 疲弊せず、より良く生きるためには、超越的なものに触れる時間を持ち、自らが置かれた状況に自覚的になる必要がある。

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私たちを疲弊させる「新自由主義」

新自由主義とは何か

ドイツの思想家であるビョンチョル・ハンは、新自由主義的資本主義が進行する社会を「疲労社会(燃え尽き症社会)」と表現している。ハンが前提にする新自由主義は、アメリカの「シカゴ学派」と呼ばれる経済学者たちによって広く展開されているテーマである。具体的には、「国家による介入をできるだけ小さくし、福祉や公共サービスを民営化していくことを良しとし、大幅な規制緩和を掲げながら、多くの事柄を市場の競争原理に委ねること」と解釈されている。

新自由主義的な政策として知られるのは、イギリスのサッチャー政権による「サッチャリズム」やアメリカ・レーガン政権による「レーガノミクス」などだ。日本では、中曽根政権や小泉政権の一部政策が該当する。ハンによると、新自由主義的な要素を取り入れた国々で疲弊社会の問題が生じている。

ハッスルカルチャーの弊害

疲労社会とは、文字通り「社会で生活する人々の心身が疲弊していること」を指す。ハンは新自由主義的社会の生活における特徴として「ハッスルカルチャー」を挙げる。ハッスルは「乱暴に押し込む」「無理にさせる」という意味を持つ。自分の時間やエネルギーを無理に押し込める形で過労状態にある人が増えているというのだ。

だが、著者はこの状態が社会に浸透することが、成長を促すのではなく、逆に成長を阻害していると述べる。私たちが真に成長するためには、適切な課題と支援のもとで、じっくりと実践に取り組む必要があるからだ。

燃え尽きて疲弊しないために

guoya/gettyimages

問題は、私たちがハッスル状態であることに無自覚であることだ。

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要約公開日 2023.07.22
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