ヒトの言葉 機械の言葉

「人工知能と話す」以前の言語学
未読
ヒトの言葉 機械の言葉
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「人工知能と話す」以前の言語学
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ヒトの言葉 機械の言葉
著者
出版社
定価
990円(税込)
出版日
2020年11月10日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

読めば読むほどわからなくなっていく。

本書がわかりにくいということではない。当たり前に「わかっている」と思っていたことが、突き詰めて考えるとちっとも「わかっていない」ことがわかっていくのだ。

人間と会話ができるAIが現れ始めている。そうしたAIを見ていると、SF映画のように、人間と変わらないコミュニケーションがとれるAIの出現もそう遠くはないのではないかと思ってしまう。しかし、実際はそう簡単にはいかないというのが著者の主張だ。本書はAIの話す「機械の言葉」を考えるにあたり、そもそも人間はどのように言葉を理解しているのかを、言語学的な見地から解説している。

私たちは言葉を当たり前に「理解」している。本書の例を出すと、「猫は動物である」と言われれば「猫という生き物全般の話をしているのだ」と思うし、「あ、猫にえさやらなくちゃ」と言われれば「自宅の飼い猫にえさをやるのだろう」と思う。このとき、私たちはほとんど無意識に同じ「猫」という言葉を「猫という生き物全般」と「目の前にいる人物の飼い猫」と2通りに解釈している。人間は実に複雑な処理を繰り返しながら、他者とコミュニケーションをとっているのだと著者は説く。

日頃こんなにも簡単に行っている言葉の理解が、突き詰めるごとにどんどん複雑で奥深いものになっていくのがおもしろい。AIに興味のある人はもちろん、自分の話す言葉について考えたこともないという人にも、刺激的な読書体験となるだろう。

ライター画像
千葉佳奈美

著者

川添愛(かわぞえ あい)
九州大学文学部、同大学院ほかにて言語学を専攻し、博士号を取得。津田塾大学女性研究者支援センター特任准教授、国立情報学研究所社会共有知研究センター特任准教授などを経て、言語学や情報科学をテーマに著作活動を行っている。
著書に『聖者のかけら』『数の女王』『働きたくないイタチと言葉がわかるロボット』『白と黒のとびら』などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    AIはコンピュータ上で働くシステムの一つである。コンピュータとはすべてを数字として扱うものであり、AIも同様だ。会話ができるAIであっても、人間と同じように言葉を理解しているわけではない。
  • 要点
    2
    人間は文法や意味などの言葉の知識だけによって言葉を理解しているわけではなく、会話の文脈、常識、倫理観、共感といった膨大な知識を駆使して情報を処理している。その再現はAIにはまだ遠い。
  • 要点
    3
    AIとの比較により、人間の言語理解のしかたへの理解が進むことが期待される。

要約

私たちはどのように言葉を理解しているのか?

言葉ではなく数字を扱うAI

もともとは「計算機」と呼ばれていたコンピュータは、「数」を扱う機械だ。それが文字や言葉を扱うことができるのは、コンピュータの内部では文字をすべて「数」として扱っているからだ。「コンピュターの内部で扱うために文字などを数で表すこと」を「符号化」という。文字だけでなく、音や画像も、コンピュータ内部では数字の並びとして表される。

コンピュータのスピーカーから「こんにちは」という音声が流れたとしても、コンピュータの内部では「数の処理」が行われているにすぎず、コンピュータが「人間のあいさつ」を理解しているわけではない。現在開発されているAIは、「人間と同じやり方で言葉を理解している」わけではないのだ。

言葉を使うAIが私たちの仕事や生活の助けになるならば、「人間と同じように言葉を理解すること」は必ずしも重要ではない。これからの機械の言葉にどう向き合っていくかを考える前に、まずはヒトの言葉の謎について考えていこう。

「意味とは何か」が分かっていない
loops7/gettyimages

私たちは当たり前のように言葉を使っているが、そもそも「言葉とは何か」という基本的な問いにすら、明確な答えは出ていない。

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要約公開日 2023.07.09
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