魂の経営

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出版社
東洋経済新報社

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出版日
2013年11月14日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

「富士フイルム」という会社について、あなたはどんな印象をお持ちだろうか。2000年代まで、同社は旧社名「富士写真フイルム」の名の通り、写真フィルムを製造・販売する会社だった。お馴染みの緑色の箱と円筒形のケースを思い浮かべて「懐かしい」と感じる人も多いはずだ。

世界の写真フィルムの需要は、2000年にピークを迎えた後、デジタルカメラの急激な普及によって10年間で10分の1以下になった。富士フイルムにとって、デジタル化の到来はまさに「本業消失の危機」だった。本書は、同社の元CEOである古森重隆氏が、この危機を乗り越えるために実行した大改革の記録である。現在、医療機器、化粧品、印刷機器や光学デバイスなど、様々な事業を持つ富士フイルム。「写真フィルムの会社」が、グローバルに活躍する多角経営企業へと生まれ変わるまでに、何があったのか。大改革を率いたリーダーは、何を考えていたのか。

同社はデジタル化という大きな波を乗り越え、リーマンショックや震災といった新たな危機にも柔軟に対応しながら成長を続けてきた。その歴史は、AIの急速な発展という新たな転換期を生き抜くためのヒントを与えてくれるだろう。また、「魂の経営」のタイトルにふさわしい、著者の鋭く力強い言葉も魅力的だ。やるべきことは断固としてやる。そんな使命感にあふれたリーダーの姿に心を打たれるのではないだろうか。組織やチームを率いる方、自分なりのリーダーシップを模索する方にぜひおすすめしたい一冊である。

ライター画像
藤井亜子

著者

古森重隆(こもり しげたか)
富士フイルムホールディングス代表取締役会長兼CEO。1939年旧満州生まれ。63年東京大学経済学部卒業後、富士写真フイルム(現富士フイルムホールディングス)に入社。主に印刷材料や記録メディアなどの部門を歩む。96年~2000年富士フイルムヨーロッパ社長。2000年代表取締役社長、03年代表取締役社長兼CEOに就任。デジタル化の進展に対し、経営改革を断行し事業構造を大転換。液晶ディスプレイ材料や医療機器などの成長分野に注力し、業績をV字回復させた。12年6月から代表取締役会長兼CEO。公益財団法人日独協会会長。日蘭協会会長。07年~08年NHK経営委員会委員長。(※発刊当時の内容)

本書の要点

  • 要点
    1
    富士フイルムは、デジタル化による写真フィルム市場の急激な縮小という危機に際し、技術力を活かした多角化経営への事業転換を図り、成功させた。
  • 要点
    2
    経営者は現実を直視し、時にはリストラなどの厳しい決断をしなければならない。一方で、会社の将来を支える研究開発や新規事業進出には十分な投資をすべきだ。
  • 要点
    3
    経営者の役割は、時流を読んでやるべきことを決め、実行することだ。組織を動かすのは、使命感を持ってメンバーを率先垂範する強いリーダーシップである。

要約

本業消失の危機

寡占市場だった写真フィルム業界

富士フイルム(旧:富士写真フイルム)は1934年、写真フィルムの国産化を使命として創立された。同社は、創業当時から自社で技術開発を進めてきた「技術志向」の会社である。

写真フィルムの製造には精密な物質制御が必要である。戦後、写真フィルムがモノクロからカラーへと進化するなかで、多くの同業他社が技術の壁にぶつかり、撤退した。以後、写真フィルム業界は米国のイーストマン・コダック(以下コダック)、日本の富士フイルムを含む4社の寡占状態となる。

富士フイルムは、コダックとの国際競争に備えた写真フィルム商品の開発と生産合理化、コスト引き下げに力を注ぐ一方で、新規事業分野への進出にも積極的だった。同社では、著者が入社した1963年頃から、写真フィルムの技術を印刷原版、ビデオテープに横展開するなど、技術の応用による事業多角化が活発になる。社内で写真関連分野の売上が圧倒的に大きかった頃からこうした新規事業開発を進めていたことは、後の同社の飛躍に大きく貢献した。

デジタル時代到来に備えた多角化の模索
gleolite/gettyimages

1980年代に入ると、富士フイルムは高感度カラーフィルムなど、その技術力によって生み出した製品を武器に世界市場に進出した。一方、その頃写真分野ではデジタルカメラの開発が始まり、印刷分野では製版工程がデジタル化されるなど、様々な分野でデジタル化の時代が到来しつつあった。

デジタル化が進むと、技術による差別化が難しくなり、価格競争に陥る。そんなデジタル化への危機感から、当時の経営陣は3つの戦略をたてた。

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要約公開日 2023.07.20
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