戦後とは何か 上、下
政治学と歴史学の対話

未 読
戦後とは何か 上、下
ジャンル
著者
渡邉昭夫 村松岐夫 大嶽秀夫 牧原出 成田龍一 福永文夫(編) 河野康子(編)
出版社
丸善出版
定価
2,000円 (税抜)
出版日
2014年06月30日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
4.0
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戦後とは何か 上、下
政治学と歴史学の対話
著者
渡邉昭夫 村松岐夫 大嶽秀夫 牧原出 成田龍一 福永文夫(編) 河野康子(編)
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出版社
丸善出版
定価
2,000円 (税抜)
出版日
2014年06月30日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.5
革新性
4.0
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レビュー

敗戦から70年、現代我々の生きる日本という国・社会の形が、どのようにできあがったのか考える時、敗戦を境にして形成されてきた戦後体制というものの大きさは計り知れない。

本書はタイトル通り、日本の戦後とは何だったのか、どのような時代で、歴史的にどのように変化を遂げてきたのかについて、政治学、歴史学、国政関係論の第一線にたつ研究者たちが、多様な角度から検討、議論した研究会報告とその質疑応答をまとめたものである。学術書ではあるが、分野の異なる研究者による口述発表を文書化したという性格上、平易な言葉で簡潔に説明がされており、これまで関連分野の議論を聞いたことがない人にも読み進めやすい。また、高名な研究者たちが 自分の手の内を包み隠さず、勢いよく意見をぶつけあって、議論を積み重ね、発展させていくのをつぶさに追体験できることも、口述の文書の特長といえる。

「過去を知らない者は、現在を理解せず、現在を理解しないものは、未来を形作ることができない」という格言がドイツにあるが、日本のこれからの行方について考えてゆく際にも、これまでの歩みを振り返ることが、 未来への重要な手がかりになることは間違いない。戦後の現代の日本の歩みを振り返るためのキーワードや概念を総括して提示している本書は、読者自身が、思索をはじめるきっかけを作ってくれるに違いない。(穂鷹)

著者

福永文夫 独協大学法学部教授、河野康子 法政大学法学部教授、渡邉昭夫 東京大学名誉教授 青山学院大学名誉教授、村松岐夫 京都大学名誉教授、大嶽秀夫 京都大学名誉教授 東北大学名誉教授、牧原出 東京大学先端科学技術研究センター教授、成田龍一 日本女子大学人間社会学部教授、加藤陽子 東京大学大学院人文社会系研究科教授、雨宮昭一 茨城大学名誉教授 獨協大学名誉教授、鹿毛利枝子 東京大学大学院総合文化研究所准教授、天川晃 横浜国立大学名誉教授、猪木武徳 青山学院大学特任教授 大阪大学名誉教授 国際日本文化研究センター名誉教授、五百旗頭 真 熊本県立大学理事長 公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構理事長 神戸大学名誉教授

本書の要点

  • 要点
    1
    タイトルだけみると類書は多いが、本書は政治学と歴史学の研究者が多角的な議論を重ね、戦後とは何か、戦後体制について解明しようとした野心的な試みである。
  • 要点
    2
    実証研究からのモデル抽出や理論を志向する現代政治学と、可視化されない権力やその周辺まで視野に入れようとする現代歴史学が、共通言語や実証方法の存在を見いだせるのか。本書は、その可能性を具体的に探っていく。
  • 要点
    3
    戦後の日本が、いかに戦時中、戦争直後と様々な面で連続しており、また、戦後体制という枠組みのなかで、どのように再編成され、今日にまで至っているのかを概観する。

要約

歴史として戦後をどうみるか

Devonyu/iStock/Thinkstock
歴史をするのか、歴史を書くのか、歴史を考えるのか

渡邊昭夫は、 Doing history? というテーマで、ナジタ・テツオ、キャロル・グラック、升味準之輔の著書を手掛かりに、近代化という大きな枠組みの中で日本の戦後とは何か、またそれを考える作業である歴史研究について論じた。

日本の戦後史については、進歩的知識人による批判的な見方と、肯定的な見方があるが、60年安保騒動は分水嶺で、その後民衆のエネルギーからの知的なインパクトとして色川大吉に代表される民衆史が生まれた。70年代以降は、「近代のプロジェクト」の議論を経て、「近代後」という不安、問題意識を、先進資本主義国が共通に抱える時代に入ったとする。ナジタは、歴史を「する」とは、「過去のテクストを訳し、ある言葉を別の言葉に置き換える」、グラックは、「過去を使って未来のために考える」とし、両者とも歴史を材料に自己の考え方を展開させていく。升味は、「歴史を書く以外に歴史を考える方法があるのか」と問題提起する。

戦後体制下の政治と政党

行政学から戦後政治学へのアプローチ

村松岐夫は、研究をはじめた頃からの関心領域や思索経緯をたどりながら、これまでの実証主義的研究成果やそこから出た主張をまとめた。

政策アクター調査(官僚調査)を10年ごとに3回行い、政官関係をみていったことで、これまでの官中心のパラダイムと異なる国会・政治中心のパラダイム、政党優位論を主張するに至った。これは同時に、戦前と戦後は断絶しており、地方自治論においても従来の中央・地方の垂直的行政統制モデルとは異なるモデルの必要性を意味する。政官の協力的関係がなくなり、政党優位が露骨に現れる98年ごろ、政官スクラムは崩壊していったと考える。

戦後日本のシステムを多元主義、新自由主義、ポピュリズムの観点から読み解く
sayu_k/iStock/Thinkstock

大嶽秀夫は、日本政治と他国の政治を比較するため、日本政治分析に多元主義の視点を導入した。多元主義とは、政策決定者の多元性を示し、流動的な政治体制の中で利害がぶつかり合い政策形成されるという意味、それぞれの分野の政策決定の場(アリーナ)が相互に独立して存在し、それぞれのアリーナの中にもイニシアチブをとるグループが存在するという意味、あるいは政治、経済、社会分野で、相対独立したエリートがいるというエリートの多元性という意味で理解される。しかし、実際のケーススタディでは、多元主義の理論化は、政策決定もモデル自体も流動性が高いため難しく、単なる叙述に陥る危険がある。

一方自身の実証研究から、政治主導で経済成長を計る立場と、経済の自立性を尊ぶ自由主義の立場が、縦断的に日本に根強く存在することを示し、自由主義と社会民主主義の対立やポピュリズムの問題も指摘する。

自民党政権に連れ添われた日本の戦後

牧原出は、戦後、自民党政治は可変的な一方、占領下の時代、経済成長時代、停滞とデフレの時期に重要な質的変容があり、これらは戦後の理解に非常に重要だとする。同時に、戦後像自体も時代と共に変化してきているのではと指摘する。

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