大いなる探求
経済学を創造した天才たち/人類は経済を制御できるか

未 読
大いなる探求
ジャンル
著者
シルヴィア・ナサー 徳川家広(訳)
出版社
定価
2,376円
出版日
2013年06月30日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
3.5
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経済学を創造した天才たち/人類は経済を制御できるか
著者
シルヴィア・ナサー 徳川家広(訳)
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出版社
定価
2,376円
出版日
2013年06月30日
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3.7
明瞭性
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革新性
4.0
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レビュー

マルクス、エンゲルス、マーシャル、フィッシャー、ケインズ……

経済学を専攻したことがなくとも、おそらく多くの方が一度はこれらの経済学における巨人の名前を耳にしたことがあるはずだ。しかしながら、彼らは一体何を成し遂げたのか? と問われたとき、答えられる人は案外少ないのではないだろうか。

本書は、経済学の基礎を作り上げてきた彼らの生身の姿を、当時の社会状況と共に活写し、経済学が歩んできた道のりを立体的に浮かび上がらせようとする、意欲的な一冊である。

「経済学史」という響きにはどうしても拭えない難解な印象があるものの、本書に関してはその心配はない。著者は、「ニューヨーク・タイムズ」で経済記者として活躍し、映画化された『ビューティフル・マインド』の著者としても知られるジャーナリスト。個々の学説の詳細よりも、人物造形やドラマに重点が置かれており、小説を読むように楽しみながらページをめくることができる。

産業革命以前、人類の95%は、絶望的な貧困と飢餓の中に閉じ込められていた。それからわずか1世紀、産業の発展により人びとの生活水準は底上げされ、人類は自分の力で「運命」を動かすことができる操縦桿を握ることができた。こうした大きなうねりの中で、「世界経済」という巨大な船の操縦法を編み出そうと格闘する経済学者たちの、手に汗握るノンフィクションドラマをぜひ楽しんでもらいたい。

髙橋 三保子

著者

シルヴィア・ナサー
1947年、ドイツ生まれ。「ニューヨーク・タイムズ」の経済記者として活躍。1998年、ノーベル経済学賞を受賞した天才数学者ジョン・F・ナッシュの半生を描いた『ビューティフル・マインド』で全米批評家協会賞(伝記部門)受賞。現在はコロンビア大学大学院ジャーナリズム学科で教鞭を執る。

徳川 家広
1965年、東京都生まれ。翻訳家。作家。徳川宗家19代目にあたる。慶應義塾大学経済学部卒。ミシガン大学大学院で経済学修士号、コロンビア大学大学院で政治学修士号を取得。

本書の要点

  • 要点
    1
    産業革命による富の膨張をきっかけに、人間は自身の運命を変えることができるようになった。この時代の新しさを認識していたのはマルクスとエンゲルスぐらいのもので、彼らは富を分配する仕組みに致命的な欠陥が存在することで、経済体制の崩壊がもたらされるであろうことを確信していた。
  • 要点
    2
    1860年代の経済危機と政治的動乱によって政治経済学の地位は貶められたが、マーシャルはそれまでの理論を改良し、この学問を科学たらしめることによって政治経済学を復活させた。
  • 要点
    3
    マーシャルに師事したケインズは不況をやわらげたり回避することは可能であると主張し、大恐慌のメカニズムを解き明かし、有効需要に基づくマクロ経済学を確立した。

要約

【必読ポイント!】 経済学を創造した天才たち

人類は、自身の運命を変えることができる

18世紀までのイギリスでは階級による生活水準の格差が激しく、最下層に位置づけられる人々は古代ローマの奴隷よりわずかにましな程度の暮らしをしていた。しかし、イギリスは貿易と産業革命によって空前の繁栄を迎え、19世紀末になると下層民の生活が大幅に改善された。そして、人間は意図、意志力、知識によって、自身の運命を変えることができるという考え方が生まれてきた。

この新しい考え方から派生したのが「新しい経済学」である。ジョン・メイナード・ケインズは経済学を「経済学的効率性、社会正義、そして個人の自由の同時的な実現」を達成する「道具」として位置づけた。

本書はこの考え方の担い手となった男女を登場人物として、「新しい経済学」が、第一次世界大戦前の資本主義の黄金時代に生まれ、2つの戦争と全体主義政権の台頭、大不況によって一時は瀕死の状態に置かれたが、第二次大戦後に復活を遂げた物語を記したものである。

エンゲルスとマルクス
Marco Richter/iStock/Thinkstock

1844年、23歳の若き革命家フリードリヒ・エンゲルスは、過激派の哲学雑誌の編集長をつとめる26歳のカール・マルクスと再会した。性格は対照的な2人だったが意気投合し、その後生涯にわたって盟友として活動することになる。

エンゲルスは速筆で、文章は流麗だった。著作『1844年のイギリスにおける労働者階級の状態』の草稿を、わずか12週間で書き上げ、その中で彼は、イギリスの労働者が常に飢餓と隣り合わせの生活を強いられており、工場主たちに対する暴動も飢えの産物であるという議論を展開した。同書の中で預言した経済危機、政治危機はほぼそのタイミングで現実のものとなり、売れ行きも好調だったという。

一方のマルクスは大変な遅筆で、「現代社会の運動法則」を解明すると約束した『資本論』が発表されたのは、エンゲルスに遅れること20年が経過してからのことであった。マルクスは、万国博覧会の開催にロンドンが沸き立っていた1851年の時点で、すでにイギリスが民衆反乱によって崩壊するという可能性を疑っていた。執筆中の『資本論』の中で、彼は私有財産制と自由競争の仕組みが機能せず、「革命が不可避である」ことを数学的な確かさをもって証明しようとした。

確かに彼は、労働者の生活水準が悲惨なほどに低いことを明らかにすることには成功した。だが、労働者の賃金が今後必然的に低下するという自説の根拠は、ついに提示することができなかったのである。マルクスは大英博物館の建物の外に出て、ロンドンの貧民街を実際に見たり、同時代の知識人たちと交流したりすることがなく、世界がマルクスとエンゲルスが予言した通りには動いていないことに気づかなかった。

時代の「新しさ」を誰よりも知っていた2人
agustavop/iStock/Thinkstock

有史以来、人間の物質的環境は基本的に変化のないままの状態が続いていた。ところが産業革命によって、2世代か3世代という短い期間に、ある国の富が何倍にも膨張するという事態が生じた。ついに人類は歴史の操縦桿を制するに至ったのである。

当時のヨーロッパには、自分たちの生きる時代の新しさを明確に認識していた者は、マルクスとエンゲルス以外にはほとんどいなかった。

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グローバル 政治・経済
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シルヴィア・ナサー 徳川家広(訳)
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2013年06月30日
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