低温「ふしぎ現象」小事典
0℃~絶対零度で何が起こるか?

未 読
低温「ふしぎ現象」小事典
ジャンル
著者
低温工学・超電導学会
出版社
定価
972円
出版日
2011年12月20日
評点(5点満点)
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
3.5
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レビュー

低温の世界で起こる、「ふしぎ」を知ることができる一冊。食品技術や自然現象など、様々な分野での「ふしぎ現象」について、その原理やどのように利用できるかを、専門家が非常に読みやすく分かりやすいように執筆している。執筆者陣は、それぞれの専門を持つ10名の研究者・技術者である。

本書の構成は、常温から0℃以下という身近な低温から、極地の低温、極低温、絶対零度付近の世界まで、章を追うごとにより低い温度の世界へといざなってくれる作りになっている。どこから読み始めてもわかりやすいので、気になるところから手をつけてもよいだろう。さらに本書には写真やイラストも多く、活字だけでは伝わりにくい「ふしぎ現象」の理解を助けてくれる。

取り上げているトピックも、普段なにげなく疑問に思っているような現象や、昔からの知恵、日常生活の話題、ハッと驚くような現象など実に様々で、単調さを全く感じることなく読み進めることができる。低温を実現する技術、低温環境を活かしての最新の研究や技術、さらにその応用などは、まるで映画や空想の世界のできごとが現実になったようにも感じられ、ロマンをかきたてられる。

もし低温世界と聞いてピンとこなくても、家庭で冷凍保存しておいた肉があまり美味しくない理由を知ってみたいなどと思うところが少しでもあるなら、本書を手に取ってみてほしい。きっとふしぎ現象の数々の魅力に引き込まれていくだろう。

著者

低温工学・超電導学会
1961年に設立された「低温工学懇話会」を前身として、66年の社団法人化(低温工学協会)を経て、2011年3月に公益社団法人低温工学・超電導学会として発足。低温工学と超電導工学を応用する科学技術に関する学術講演会、研究会、講習会などを開催し、調査研究を行っている。低温工学・超電導工学分野は、超電導をはじめとする物理・化学・電気・機械・材料・通信・生物・医学など多岐にわたり、各領域の研究者・技術者に、共通の探究の場を提供するための活動を行っている。

本書の要点

  • 要点
    1
    飲食物を冷やすための低温を生み出す技術は、3000年も前のエジプトで既に用いられていた。
  • 要点
    2
    食品を冷凍する技術は、冷却速度とそれにともなった細胞内外の氷のでき方に、おいしさを決める秘密があった。
  • 要点
    3
    極寒の南極では、その低温ゆえに真横にたなびく煙や蜃気楼などの現象を見ることができる。
  • 要点
    4
    極低温技術を活かした赤外線による天体観測では、宇宙誕生初期の銀河形成と進化過程を追究することができる。

要約

天然のウォータークーラー

3000年も前に実用化されていた技術
DBPITT/iStock/Thinkstock

本書の1章の最初のトピックは、「レトロ技術でどこまで冷える?」という副題がついた「天然のウォータークーラー」についてである。温度帯は、常温から14℃と、ものすごく低いといえるほど低い温度ではないが、飲食物を冷やす技術が3000年以上も前のエジプトで用いられていたというのだから驚きである。

その方法では、驚くほどシンプルに、何らエネルギーの入力を必要とせず、常温よりも温度を下げることができる。エジプトなどの路上で見かける素焼きの壺「ジィール」をご存じだろうか。これに水を入れると、器の表面を通して内部の水が絶えず外側にしみ出していく。しみ出した水は蒸発し、その時に熱を奪い内部の水を冷やすというしくみである。 

0~50℃の水では約570~600kcal/kgの蒸発潜熱(水が気化するときに必要なエネルギー)がある。つまり、水が蒸発して気体になるときに気化熱を奪う。どの程度冷えるかというと、器の壁を通して外部との熱のやり取りがないという条件下では、50℃の水1kgから100gの水が蒸発した時点で0℃の氷ができるという計算になる。実際には、外部からの熱侵入があって下がった温度を維持できなかったり、蒸発により周辺の湿度が高くなり、それがさらなる蒸発の抵抗となったりと、速やかな冷却はなかなか実現できない。

が、エジプトの寺院に残る3000年以上も前に描かれた壁画には、貯蔵壺を奴隷が大きなうちわで扇ぐ姿があり、蒸発を強く促すことで、より低い温度にしようとしていた様子がうかがえる。人々が気化熱の原理まで理解していたとは思い難いが、3000年も前に、この現象を利用していたというのは興味深い。

最近では、二重の素焼きの壺の間にぬれた土を入れて、内側の壺には食料を入れて冷やす「ポット・イン・ポット」が考案されており、暑い中でも14℃まで冷えたという報告があるという。

【必読ポイント】味を一瞬で封じ込める

冷凍、解凍の科学
Photosiber/iStock/Thinkstock

季節によって旬がある生鮮食品であっても、冷凍保存しておくことでいつでも食べることができる時代になった。いつでも食べられるという手軽さはあるが、冷凍・解凍を経た食品は、一般的には品質や食感が落ちるといわれている。

このトピックでは、冷凍前と解凍後の食品の状態は、特に冷凍・解凍の速度の違いによって差が出ることを解説している。どのように冷凍・解凍することが品質を保つうえで重要なのか、その原理を知ることで、よりおいしく食品を食べられるようになるはずだ。

野菜や肉、魚などの食品はそのほとんどが細胞の集合体であり、冷凍するということは、これら細胞の一つひとつが凍結することを意味する。それについて考えるには、まず、食品を構成する細胞スケールの微視的な凍結について注目し、変化を見る必要がある。

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低温「ふしぎ現象」小事典
ジャンル
サイエンス
著者
低温工学・超電導学会
出版社
定価
972円
出版日
2011年12月20日
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