マーケティングを学んだけれど、どう使えばいいかわからない人へ

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マーケティングを学んだけれど、どう使えばいいかわからない人へ
出版社
日本実業出版社

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出版日
2023年02月20日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

マーケティングを学んだ多くの人が、「マーケティングの樹海」に迷い込んでいると著者は言う。

実際に、マーケティングの方法論や手法としてツールがごまんと存在する。しかし、企業でマーケティングに携わっている人の中には、各種のツールを使っても何だかしっくりこない、物足りない、うちの会社には使えないと感じる人も多いのではないだろうか。

そんな現状を、著者の西口一希氏は「マーケティングの樹海」とたとえ、マーケティングをめぐるワードは格好だけよくて実態のないバズワードばかりと嘆く。西口氏は、P&Gやロート製薬など数々の大手企業でマーケティング責任者として第一線で活躍した。その卓越した経験と知識をもとに、マーケティング初心者との対話と250名以上との質疑応答を通じ、「マーケティングの樹海」を抜け出すコンパスとして、本書をまとめ上げた。

本書で繰り返し説かれているのは、「誰に、何を売るのか」を考えることと、そこにはどんな「便益と独自性」があるのか、の2つである。「どんなお客さま(WHO)に、どんなプロダクト(WHAT)を届けて“価値”をつくるのか」というマーケティングの要諦を、豊富な事例を交えて詳説している。

マーケティングの基本に立ち返り、「スタート地点はお客さまである」ということを気付かせてくれる良書だ。

ライター画像
衛藤実穂

著者

西口一希(にしぐち かずき)

Strategy Partners代表取締役。1990年大阪大学経済学部卒業後、P&Gに入社。ブランドマネージャー、マーケティングディレクターとして、「パンパース」「パンテーン」「プリングルズ」「ヴィダルサスーン」などのブランド担当。
2006年ロート製薬に入社、執行役員マーケティング本部長として「肌ラボ」「Obagi」「デオウ」「ロート目薬」などの60以上のブランドを担当。2015年ロクシタンジャポン代表取締役。2016年にロクシタングループ過去最高利益達成に貢献し、アジア人初のグローバルエグゼクティブコミッティメンバーに選出、その後ロクシタン社外取締役戦略顧問。
2017年にスマートニュースへ日本および米国のマーケティング担当執行役員として参画。累計ダウンロード数5000万、月間使用者数2000万人、企業評価金額が10億ドル(当時のレートで約1000億円)を超えるユニコーン企業となるまでの成長に貢献。2019年株式会社Strategy Partnersの代表取締役として事業戦略・マーケティング戦略のコンサルタント業務および投資活動に従事。戦略調査を軸とするM-Force株式会社を共同創業。
著書に『たった一人の分析から事業は成長する 実践顧客起点マーケティング』(翔泳社)、『マンガでわかる 新しいマーケティング』(池田書店)、『企業の「成長の壁」を突破する改革 顧客起点の経営』(日経BP)、共著書に『アフターコロナのマーケティング戦略』(ダイヤモンド社)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    マーケティングは、売れる仕組みづくりではない。顧客視点で、プロダクトをWHOとWHATでひも解くことからスタートする。
  • 要点
    2
    顧客が価値を見いだすか否かのポイントは、プロダクトの「便益」と「独自性」を自分ごと化して提案できるかにある。
  • 要点
    3
    ビジネスは、創出期の「0→1」段階、初期成長期の「1→10」段階、拡大期の「10→1000」段階の3つに分けられる。各段階を構造的に可視化すれば、マーケティングのヒントが見えてくる。
  • 要点
    4
    人に興味を持つことが、マーケティング力アップにつながっていく。

要約

誰もがはまる「マーケティングの樹海」から抜け出すには?

マーケティングの本質は価値創造
TOSHIHARU ARAKAWA/gettyimages

著者は、マーケティングを「お客さまのニーズを洞察し、お客さまが価値を見いだすプロダクトを生みだすこと。さらに、その価値を高め続けて継続的な収益を生みだし、その収益を再投資して新たな価値をつくり続けること」と定義している。この定義によれば、マーケティングは、売れる仕組みではなく、お客さまにとっての価値をつくることになる。

マーケティングのポイントは、「WHOとWHATの組み合わせ」を明確にすることだと著者は言う。「どんなお客さま(WHO)」に、「どんなプロダクト(WHAT)」を提案して「価値」をつくるのかを明確にできれば、「やること(HOW)」、つまり道筋が明確となり、「マーケティングの樹海」にはまって悩むこともないのだ。

たとえば、一定期間に牛乳が爆売れしたとしても、一般消費者だけが購入したとは限らず、研究用としてメーカーがたまたま大量購入した結果かもしれない。購入したのが一般消費者でないことが分かれば、製菓業界向けにビジネス提案することでWHOとWHATが変化し、新たな価値が創出できる。

つまり、WHOとWHATが明確になって初めて、誰に何を販売促進すればよいのかというHOWを実行できる。

牛乳がプロダクトの場合、牛乳を買いたい人は誰か、その人たちが買いやすいのはコンビニなのか配達かという販売チャネルとしてのHOWを考えればいい。巷に溢れる「ショート動画でバズらせよう」などは、手段や方法としてのHOWに過ぎないと肝に銘じよう。

マーケティングの本質は、「お客さまは誰なのか」というWHOと、「お客さまがプロダクトにどんな価値を見いだしてくれているのか」というWHATを明確にすることにあり、マーケティングのスタート地点となる。

「マーケティングの樹海」から抜け出す

「マーケティングの樹海」から抜け出す第1ステップは、そもそも「顧客が魅せられる価値とはなにか」を理解することである。

著者は、価値とは「便益」と「独自性」の両方をあわせ持つものと定義する。「便益」とは、具体的な利益をもたらすプラス要因で、「独自性」とは、他にはない唯一無二の魅力である。

たとえば、山歩き中に喉が渇いて、山奥で200円のミネラルウォーターを売っていたら「高い」と思いながらも購入するはずだ。この場合、「水でのどを潤せる」ことが便益で、「ここでしか買えない」ことが独自性となり、その2つに価値を見いだして、「高いけど買おう」という思考と行動をとる。

つまり、価値とは、金額や時間、それを手に入れる労力を総合的に判断したうえで交換される便益と独自性なのである。

翻せば、WHAT(プロダクト)は、何らかの選ぶ理由である「便益」とほかを選ばない理由である「独自性」を提供し、WHO(お客さま)を獲得することによって収益化する。これは、ビジネスの原則であり、便益と独自性が「自分ごと化」できたときにお客さまは価値を見いだすのである。

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要約公開日 2023.09.22
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