最後はなぜかうまくいくイタリア人

未読
最後はなぜかうまくいくイタリア人
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最後はなぜかうまくいくイタリア人
著者
出版社
日本経済新聞出版

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出版日
2018年01月05日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

あなたは「イタリア人」というと、どんな人びとを思い浮かべるだろうか? おちゃめで、食べるのが大好きで、情熱的に愛をささやき、時間にルーズだがなんだか憎めない……きっと多くの人が思い浮かべる「イタリア人」は、このような姿であるはずだ。本書を読むと、そのイメージが決して間違っていないことがわかる。

本書の著者、宮嶋勲氏は、83年から89年までローマの新聞社に勤務した人物だ。現在はイタリアと日本でワインと食について執筆活動を行っており、年間15回ほどイタリアを訪れているという。そんな著者の長年の経験をもとに、イタリア人の幸せな生き方や働き方に注目したのが本書である。

もちろん、イタリア人と一口に言っても、いろいろな人がいる。堅物な人や時間に正確な人もいるだろう。そう頭でわかっていても、そして、イタリア人と接した経験がほとんどなくても、不思議と「あるある」「もう、イタリア人ったら!」と言いながら楽しく読めて、心がほんわかと和むのだ。

典型的な「イタリア人」像と典型的な「日本人」像は、見事に正反対だ。どちらの生き方や働き方が正解というものでもない。だが、本書でイタリア人のあり方を知ると、少し肩の力が抜けて、楽しい気持ちになってくる。また、著者の姿勢から、自分とは異なる価値観を持った人と接する際のヒントを得ることもできるだろう。ちょっと疲れたときにぜひ手に取ってほしい、楽しい一冊である。

著者

宮嶋勲(みやじま いさお)
1959年京都生まれ。東京大学経済学部卒業。83年から89年までローマの新聞社に勤務。現在イタリアと日本でワインと食について執筆活動を行う。イタリアではエスプレッソ・イタリアワイン・ガイドの試飲スタッフ、ガンベロ・ロッソ・レストランガイド執筆スタッフを務める。日本ではワイン専門誌を中心に執筆するとともに、ワインセミナーの講師、講演を行う。BSフジ「イタリア極上ワイン紀行」の企画、監修、出演も務める。著書に『10皿でわかるイタリア料理』(日本経済新聞出版社)、『イタリアワインマニュアル』(ワイン王国)、訳書に『ガンベロ・ロッソ イタリアワインガイド』(講談社)など。2013年、グランディ・クリュ・デイタリア最優秀外国人ジャーナリスト賞受賞。2014年、イタリア文化への貢献により“イタリアの星勲章”コンメンダトーレ章(Commendatore dell’Ordine della Stella d’Italia)をイタリア大統領より受章。

本書の要点

  • 要点
    1
    著者は初めてイタリア人と仕事をしたときに、3つのことを学んだ。1つ目は、イタリアでは不測の事態がしょっちゅう起こるため、慌てる必要はないこと。2つ目は、不測の事態が起こったときは、イライラするより、解決策を見出すために全力を尽くすほうがよほど有意義だということ。そして3つ目は、どんな事態が起こっても、イタリア人は最後に必ずなんとかしてくれるということだ。
  • 要点
    2
    イタリアでは、「仕事の時間」と「私の時間」が幸せに溶け合っている。
  • 要点
    3
    イタリア人は、一つのことに集中するより、寄り道をしがちな傾向にある。イタリア人の発想が素晴らしいのは、この特性によるものかもしれない。

要約

イタリアの洗礼

楽しいロケになりそうだったが……
FotografieLink/gettyimages

ローマに住み始めて1年ほど経ったころ、著者は日本のCM撮影の通訳のアルバイトのためにリミニという街にいた。イタリア人と仕事をするのはほぼ初めてのことだ。

ローマで集合した日伊混合の撮影隊はミニバスに乗り込んでリミニに向かう。寛いだ雰囲気で、楽しいロケになりそうな予感でいっぱいだった。少なくとも現地に到着するまでは。

まず、現地に到着するのが予定時刻より1時間遅れた。さらに悪いことに、到着してから、依頼していた機材がそろっていないことがわかった。しかも、CMに出演するタレントのスケジュール上、なんとしても今日中に撮影を終えなければならない状況だった。

イタリア人の現場責任者は、機材の手配のためにあちこちへ電話をかけている。進捗を訪ねると、「手配はできたが、あと2時間かかる」という返事だ。

それをそのまま通訳すると、日本側は当然怒ってしまった。「何を言っているんだ。早くするように言ってくれ」と言うので、それをイタリア側に伝えると、「ないものはないんだから、何を言っても仕方ないよ。そんなにカリカリせずに待ちなさい」という返事だ。それを聞いた日本側はさらに怒りを募らせる。雰囲気は険悪になる一方だった。

右往左往する著者を見かねて、イタリア側のプロデューサーがこう話してくれた。「私たちのミスについて、いまここでいくら論じても何も生まない。この撮影は必ずやり終える。カリカリすればするほど雰囲気が悪くなって、撮影はうまくいかなくなるぞ。日本側にリラックスするよう伝えてくれ」

洗礼から学んだ3つのこと

日本とは何もかも違うこの経験から、著者は3つのことを学んだ。

第一に、イタリアでは不測の事態が起こるのが普通であり、慌てる必要はまったくないということだ。

第二に、不測の事態に慌てるのではなく、解決策を見出すために全力を尽くすほうがよほど有意義であるということだ。イライラしても何も生まないばかりか、事態はむしろ悪化する。どっしり構えて、よい仕事をするために準備したほうがずっと建設的だ。

そして第三に、どんな不測の事態が起こっても、イタリア人は最後になんとかするということだ。子どものころから不測の事態に慣れきっているため、柔軟に対応する力が身についている。

イタリア人と「仕事」

時間通りに動く必要はない

イタリア人についてよく聞く苦情は、時間にルーズだというものだ。ただ実は、このルーズさにはイタリア人なりのロジックがある。

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要約公開日 2023.09.21
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