給料の上げ方の表紙

給料の上げ方

日本人みんなで豊かになる


本書の要点

  • 日本人の給料が上がらない原因は、個人の能力不足ではない。理由の1つには、一般的に低賃金とされる層の労働参加率が高まったことなどがある。

  • 個人が給料を上げるためにカギとなる選択肢は「海外」「給料交渉」「転職」「起業」の4つがある。

  • 企業が給料アップのために取り組むべきは、未開拓市場の発見とイノベーションの創出である。

  • 給料アップが見込めそうな企業の条件とは「生産性が高い業界に属していること」「規模が大きいこと」「ダイナミズムを有していること」「労働分配率が高いこと」の4つである。

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日本人の給料が低い根本理由

給料が上がらない原因

OECD(経済協力開発機構)が発表した2021年の平均賃金で、日本は加盟国38カ国中で24位にとどまっている。アメリカに1.82倍、ドイツに1.38倍の差をつけられるだけでなく、韓国にも追い抜かれたことは大きな話題になった。1990年代からほとんど給料が上がっていない理由を、「日本人の能力不足」と考える言説はよく見かけるが、著者は別の理由を挙げる。1つは、就業者数が大きく伸びたことだ。2011年から2018年にかけ、就業者は431万人も増加している。その増加分のうち、高齢者や若年層など、一般的に低賃金とされる層が多かったことで、全体の平均賃金が押し下げられたと著者は指摘する。加えて、女性の労働参加率が高まるにつれ、男性との賃金格差を背景に、全体の平均が押し下げられた。

低賃金の大きな要因は「労働生産性」

Piotrekswat/gettyimages

給料は2つの要因で決まる。その2つとは、「付加価値」と「労働分配率」だ。付加価値とは材料を仕入れ、何かを製造し、販売した際に生じる差額を指す。そして、付加価値のうち給料として支払った割合が労働分配率である。また、労働者1人が創出する付加価値を「労働生産性」と呼ぶ。世界銀行が発表した2021年における日本の労働生産性は、OECD平均の8割弱で、36位に甘んじている。一方の労働分配率は、国際労働機関のデータによると他の国と大きく差がついているわけではない。このことから、日本の低賃金の理由は労働生産性にあるといえる。

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要約公開日 2023.09.27
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