知識製造業の新時代

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出版社
リバネス出版

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定価
2,420円(税込)
出版日
2023年06月13日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

SDGs・ミレニアル世代・Z世代――。世の中には新しい風が吹いている。自然保護や地球貢献は、若い世代にとっては「自分ごと」であり、その切実さは上の世代以上である。本書によると、2025年にはミレニアル世代以降の人口が日本の労働人口の過半数に達し、多くの人が時代の変化を実感するだろうと予測している。

新しい時代にはどのようなビジネスが必要なのか。本書では、知識と知識の組み合わせによって新たな知識をつくり出し、その新たな知識によって未解決の課題を解決する「知識製造業」を唱えている。20世紀の日本を牽引してきた製造業は、いまやすっかり低迷してしまった。しかし、町工場や地域の中小企業を中心に、かつて世界一を誇った技術や知識はいまも脈々と息づいている。日本経済を復活させるためには、この知識を活用した「知識製造業」へのシフトを訴えている。

著者の丸幸弘氏は、株式会社リバネスというユニークな事業を行っている会社の代表である。全社員が博士号もしくは修士号を持つ研究者集団で、「科学技術の発展と地球貢献を実現する」というビジョンのもとベンチャーの創業支援を行っている。有名なところでは、バイオテクノロジー企業のユーグレナがある。本書からは、「日本の輝きをもう一度取り戻そう」という、著者の熱い想いが感じられる。

「知識製造業」という考え方は非常に興味深く、著者の行っている取り組みや提唱するアイデアは、未来への大きなヒントになる。これからの日本経済を担うビジネスパーソン必読の一冊である。

ライター画像
鈴木えり

著者

丸幸弘(まる ゆきひろ)
株式会社リバネス代表取締役グループCEO。東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命工学専攻博士課程修了、博士(農学)。2002年大学院在学中に理工系大学生・大学院生のみで株式会社リバネスを設立。日本初「最先端科学の出前実験教室」をビジネス化。大学・地域に眠る経営資源や技術を組み合わせて新たな知識を生み出す「知識製造業」を営み、「知識プラットフォーム」を通じて200以上のプロジェクトを進行させる。町工場や大手企業等と連携したアジア最大級のベンチャーエコシステムの仕掛け人として、世界各地のディープテックを発掘し、地球規模の社会課題の解決に取り組む。株式会社ユーグレナをはじめとする多数のベンチャー企業の立ち上げにも携わる。主な著書に『世界を変えるビジネスは、たった1人の「熱」から生まれる。』(日本実業出版社)、『ミライを変えるモノづくりベンチャーのはじめ方』(実務教育出版)、『ディープテック 世界の未来を切り拓く「眠れる技術」』(日経BP)など。

本書の要点

  • 要点
    1
    これからは人間と自然の「共生」が必須だ。人間のあらゆる生産活動は「地球貢献型」になり、ビジネスもその例外ではない。
  • 要点
    2
    ビジネスを地球貢献型にするには、ビジネスの目的を「売上のための課題解決」から「課題解決のための売上」に転換する必要がある。
  • 要点
    3
    関わるプレイヤーたちがもつ知識を「組み合わせる」ことで課題を解決する。このプロセス全体を「知識製造業」という。長年の知識と技術を蓄えた日本の製造業は、知識製造業の実現にふさわしい。
  • 要点
    4
    日本の製造業の強みは「すり合わせ」にある。

要約

【必読ポイント!】競争から共生へ

地球貢献型のビジネスへ
リバネス出版提供

地球は「ピースの数が決まっているレゴのようなもの」である。ピースの組み合わせによって形を無限につくることができる一方、ピースの数は有限だ。有限かつ無限、それがレゴの特徴だ。

地球上の物質環境も同じである。あらゆる自然資源が「有限である」ことを忘れて使い続ければ、この先地球はもたないだろう。今の人類に求められているのは、人間の利益か自然の保護かという二者択一ではなく、人間と自然の「共生」を実現させることである。この考えを基本とすることで、人間のあらゆる生産活動が「地球貢献」と呼べるものになっていくと予想される。

地球貢献がこれからの時代の潮流になれば、ビジネスにおいてもこれまでの常識がひっくり返る。「地球貢献型」へのシフトは避けられないが、この変化への対応にはいくつかのハードルがある。

1つめは「持続可能性」である。ビジネスを持続可能にするには、長期的視点で考える必要がある。そのため、「つくりっぱなし」ではなく、「再利用する」プロセスのある循環型にしなければならない。

2つめは、「地球貢献」だ。従来は顧客のニーズに応えることでビジネスが成立していたが、これからは自らのビジネスが地球にもたらす影響を考慮する、サイエンスの視点が必要になる。

3つめは、人々の価値観の変化だ。2000年前後に生まれた「Z世代」にとって、自分たちの未来に直接関わる持続可能性や地球貢献の概念は、完全に「自分ごと」である。そのようなZ世代の価値観が、そのまま社会や経済の価値観に反映されていくのは当然の流れである。

「課題解決のための売上」という逆流

従来のビジネスの目的はあくまで「利益を追求すること」であった。課題解決の結果として利益が生まれる。しかし、これからの時代は、必ずしも利益に結びつかないが、解決しなければならない課題が増えていくだろう。

そのひとつが、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」である。たとえカーボンニュートラルを達成しても、地球はお金を払ってくれない。資本主義のルールが通用しないのだ。

これを解決するには、ビジネスの原理を逆流させるしかない。つまり、「売上のための課題解決」から「課題解決のための売上」に転換するのである。地球貢献の実現には、逆流の発想が欠かせない。

また、これからの厳しい生存環境を生き抜くヒントに「共生」という考え方がある。共生は、異種の存在が「一緒に生き残る」ためのシステムだ。同一の役割を分担するのではなく、それぞれが異なる役割を果たす。

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